4/ 1st, 2014 | Author: Ken |
このLPジャケットが好きだ!
音楽がアナログであった頃、LPのジャケットを手にするのは快感だった。31.3cm角の大きさがいい。そのズッシリとした重量感、指紋をつけないように細心の注意でデスクを引き出し、静かに針を下ろす。微かなノイズを伴いながら音が湧きだして来るのだ。何故この溝に音が埋まっているのだ? 空気の振動、いやオーケストラの数十の楽器の音が何故、こんな細い溝に? そしてジャケットのデザインだ。カッコイイのである。大胆である。自由闊達である。斬新なデザインが、音を期待する気持ちをより刺激するのである。60年代当時、輸入盤は恐ろしく高価だった。何しろ初任給が2万円位の時に1枚二千円もしたのだ。高校生の僕にとっては高嶺の花である。
夏休みに日給4百円のアルバイトをして、英語のライナーノーツも読めない癖に必死に読み解き悩んだ末に選んで買ったものだ。まるで宝物である。特にBLUE NOTEのデザインが素晴らしかった。リード・マイルスだ。この1フィート角を自由にデザインするのはデザイナーにとって大きな喜びであっただろう。いつかCDになりダウンロードになり、あのジャケットを手にする愉びは消えてしまった。
アナログの楽しみとは人間サイズの喜びなのである。…..モダンジャズは懐メロとなり、もうレコードを買う意思もない。寂しい限りだ。
上記のジャケットは「黄金の腕」The Man with the Golden Arm (1955) 社会派オットー・プレミンジャー監督、フランク・シナトラがジャンキー(麻薬中毒者)を熱演。エルマ・バーンスタインのジャズがカッコイイのなんのって!まだ子どもだったから封切りは見ていないが、ラジオでよく流れていた。リバイバルで見たら、何と!ドラムのオーディションのシーンにはショーティ・ロジャースやドラマーのシェリー・マンが出演しているではないか!そしてソール・バスの映画タイトルが素晴らしい!僕は今でも彼とエスクァイアーのジョージ・ロイスがデザインの先生だと思い続けているのだ。…あれから半世紀がまた瞬くまに過ぎてしまった…..。
…….ほんの昨日のことだのに。
1)right now! /jackie McLean : Blue Note 1965 リード・マイルスのタイポグラフィーのダイナミックさ!
2) Blowin’ The Blues Away /Horace Silver : Blue Note 1959 ポーラ・ドナヒューのイラストレーションがファンキーでアーシーな
雰囲気を表現している。1962年に来日、16歳の少年には圧倒と陶酔だった。そしてヴォーカルはクリス・コナーだった。
3)COOKIN’ /Miles Davis : Prestige 1957 このジャケットを見ててっきりベン・シャーンだと思った。だがPhil Haysだった。そんな
時代だったんですね。また、何故クッキン?….マイルス曰く「俺たちがやったことは、スタジオにやって来て曲を料理しただけだか
らな」と…..。でも素晴らしい内容だ。
4)Blue Lights /Kenny Burrell Blue Note 1968 これもベン・シャーンかと思いきや、なんと!あのアンディー・ウォーホールなのだ。
5)The Jazz Odyssey of James Rushing, Esq./Jimmy Rushing:1956 この太ったオッサンが汗をかきかき急いでいるイラストに
喝采だ。この絵は Thomas B. Allenというイラストレーターだ。(長年エドワード・フォックスとばかり思っていた)
6)All Blues/Kenny Clark- Francy Boland Big Band 1969 : MPS 黒い林檎という絵に意表を突かれた。デザイナー魂ですね。
7)Jackie’s Bag /jackie McLean : Blue Note 1960 マニラの書類入れがジャケットだなんて!それだけで買ってしまった。
8)Groovy/Red Garland : Prestige 1957 この落書きがハーレムなんかをイメージさせて素晴らしい。わざわざREDのRを逆さまに書
いたりして憎い演出である。このスタイルをソール・バスが「ウエスト・サイド・ストーリー」で使っていた。ジャケットの左下に
DESIGN reid miLESとある。はは~ん、なるほどね。でも彼はブルーノート専属じゃなかったの?
最後にお恥ずかしい限りだがジャズに夢中になっていた高校生の頃、課題がLPジャケットだったのでデザインした。もちろんMACなん
てSFにも出て来なかったから手描きそのもの。かろうじてこの2枚だけが手元に残っている。1962年だってサ。