10/ 3rd, 2015 | Author: Ken |
The Lake みずうみ
波がぼくを、この世から、空飛ぶ鳥から、砂浜に遊ぶ子供たちから、岸辺に立つ僕の母から切り離した。・・・
・・・それは9月。夏の終わり。理由もなく悲しみが湧き上がってくる時期だった。
あの夏、湖で遊んだ初恋の少女タリィ、タリィの遺体は見つからなかった。「タリィ!戻っておいで、タリィ!」
ぼくは二人でしたように城をつくった。「タリィ、ぼくの声が聞こえたら、お城の半分を作るんだよ」。
それから10年が過ぎた。ぼくはハニムーンでこのみずうみに来た。その旅行も終わりに近づいた日、救命員が灰色の袋を抱いて
ボートからおりたった。「こんなおかしなことははじめてだ、死んでから十年にもなる」。
私は一人きりで渚を歩いていた。その水際に半分完成しただけの城が・・・。湖からちいさな足跡が・・・。
「残りはぼくが作ってあげるよ」。・・・私は砂浜にあがった。そこには・・・
レイ・ブラッドベリ「みずうみ」/ウィアードテールズ誌1944:5 ”Dark Carnival”
彼の作品のなかでもいちばんに好きな一遍だ。何回読んだだろうか。初めては’60年代のMens’ Club誌だったと思う。