12/ 2nd, 2013 | Author: Ken |
ゥワーッ!大好きだ!Mr.ハリーハウゼン。
いま映画はCG全盛である。何だって造れるのだ。ここ数年でとうに亡くなった俳優が完璧なCGで蘇るのではないか …?でも、どうしてCG映画ってあんなに退屈なんだろう? 確かに見たこともない怪獣や変身やスペクタクルは満載なんだがほとんどが印象に残らないのだ。「ああ、またか」で終わってしまう。3D映画も 3DTVも「だからどうした」になってしまうのだ。名作「キングコング」(1933)だって何回も作られているが、やはり本家に止めを刺すのだ。動きや合成はチャチかもしれないが「センス・オブ・ワンダー」があるんだ。「真珠湾攻撃」も数々の映画が作られたが「ハワイマレー沖海戦」(1942)がオリジナルだ。「パール・ハーバー」(2001)なんて、CGは凄いのだが、くだらんを超えて退屈極まりない極低のものだった。特撮(この言葉、古いネ)は面白い。しかしそれを超えた「ドラマ」があってこそ特撮も生きる。しかしだ、特撮を見せる映画もある。
そこで、大好きな映画に「アルゴ探検隊の大冒険」原題: Jason and the Argonauts(1963)がある。楽しいの何のって!確かにB級映画かもしれないが、特撮監督のレイ・ハリ−ハウゼンの形を1コマずつ撮影するモデルアニメーション手法に嬉しくなってしまう。そして人形と俳優が一体となって動く「ダイナメーション」、俳優の演技に合わせてコマ送り人形を動かすのだ。つまりマニュアルなんだ。手作りなんだ。もう、必然性のない撃ち合いやカーチェイスは願い下げだし、CGで都市を破戒したり怪物がゾロゾロ出てきてもアクビしっか出ないもんね。「アルゴ探検隊の大冒険」は彼の最高作だろう。青銅の巨人タロス、もうワクワクするではないか!動きは稚拙だが驚きの映像だ。踵の蓋を開けると溶岩のような熱湯が吹き出し倒れるなんざ….。吠える岩もいいね。 狭い海峡を船が通ろうとすると岸壁が崩れてくる。突如ポセイドンが現れ崩れる崖を抑えて船を通すのだ。大きな魚の尻尾が現れたりするリアルさが何とも最高!そして龍の歯を撒くと大地を割って7人の骸骨剣士が現れる。そしてチャンバラだ。クリーチャーのあの動きったら!もう!
今年5月レイ・ハリ−ハウゼン(92歳)が亡くなった。昨年に逝ったレイ・ブラッドベリ(91歳)とは高校時代からの友人だそうでである。ブラッドベリもハードSFではない。ファンタジーというか、少年の眼だ。….ハリーハウゼンもそうなのだ。現代のCGは遥かにリアルでありスピードと驚きの動きがある。しかし昔のダイナメーション動きは稚拙なのになぜ強烈な印象を与えるのか?
そう言えば … 近松門左衛門が語ったと言われる「虚実皮膜論」というのがあった。
「虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、この間に慰が有るもの也」。微妙な「虚」と「実」の間に芸があり観客を魅了するのだ。
何と江戸期に「人形浄瑠璃」で喝破している。太夫、三味線、人形使いの「三業」による三位一体の演芸である。誰だって人形なのは知っている。人形を操る三人も丸見えだし、絵空事であることは分かり切っているのだ。なのに何故、涙を誘うのだ。知らぬ間に人形だけに集中し、あたかも人形に心あるように見えるのだ。それは観客の集中力と想像力というものに依拠しているのだ。人形に感情移入し状況に同化するのだ。…..小説しかり、音楽しかり。注意を向ければ、自分が見たい聴きたいものだけが、見え聞こえるのだ。人形の向こうにドラマを見るのだ。ハリーハウゼンもその辺をよく知っていたのだろう。