12/ 10th, 2009 | Author: Ken |
デザインはエンターテインメントだ。…… わが師。
わが師、繁治照男氏。はじめて会ったのは、ぼくがまだ学生服を着ていたころだ。彼の作品を見て驚いたね。どうすればこんな考えや発想が浮かぶのだろう…。とにかく新鮮だった。他とは全然違った。カッコいいのである。そのころ繁治氏は「NEW JAPAN」の宣伝に勤めていた。彼はサウナの概念を変えた男だ。それまで何となく如何わしいイメージがあったサウナを健康的で明るくしたのだ。「健康な人をより健康に」と。
マクルーハンが流行ったとき「マクルーハン理論を実践しよう!」これがなんとキャバレーの案内状だよ。他にも「割烹日本」「メンズジャパン」など数々の革新的なデザインをし、そして独立した。「日本ブレーン・センター」NBCだ。ぼくはメンズウェア会社で企画・デザインをしていたので、彼のサブとしてディレクションをする機会が多かった。徹夜で作品を仕上げて持っていったら、「あかんわ!やり直してこい」だ。また徹夜して見せたら「うーん、待っとり」、目の前で全部はがしてしまう。指先があっという間にレイアウトしてしまう。ああ、2日も苦労して徹夜したのに。いつしか全体が見えるようになり、そんな技も自然にできるようになった。ぼくたちの会議はいつもバーだった。
「こんどのカタログ、どんなテーマや?」「50年代のボールドルックで行こうかと」「そやな!表紙はイラストで行こ、おまえ描けや」それで終わり。ぼくの頭の中にはイメージができていたから直ぐに見せた。「ええやんか!」。
「次何やね?」「ハードボイルで行こうかと」「アイディアあるか?」酒を飲みながら会話が続く。「探偵事務所のドア越しに狙ったら?どうでしょう」「オモロいなそれ行こ」。早速業者にドアを発注、シルクスクリーンで I Don’t Sleepなんて…。
「おい、次は宝物の争奪戦のテーマで行こや、何がええ」「そうですねー、マルタの鷹みたいに」「OK! 鷹どうするねん」「作ります」早速、東急ハンズに紙粘土を買いにいった。夜中にふとん乾燥機を回し庭で金色のスプレーをした。翌日の撮影ではまだネバネバしていたネ。
彼には酒の飲み方も教わった。北、南、神戸、チェーンスモーカーで酒は底なし。とても追いていけない。二人で南からタクシーで帰ってくると芦屋の辺で夜が明けることが何度もあった。今はもう退職したが月に一度は、缶ビールを持ってぼくのオフィスに来てくれる。早速灰皿、二人で面白い話やデザインについて話す。しかし、頭は電光石火に冴えている。「最近見るべき広告なんてないな!」「ほんとですねー。新聞も雑誌もTVも劣化していますね」「ジョージ・ロイスが先生やったからなー。あれ忘れたらあかんで。
デザインはエンターテインメントなんや」。彼は昔からアカデミックなデザインが嫌いだ。「この人間という生臭い生き物、人間が対象や、ワシらの仕事は」「開高健ですね。人間らしくやりたいな、これですよ」「そーや、人間なんやからナ」…。