7/ 30th, 2010 | Author: Ken |
パノラマ島?パラノイア?キッチュ?
嗚呼…..!夢、狂気、妄想、幻想、妖美、サディズム、エロティシズム、グロテスク….。江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」(1926)はパノラマと言うよりパラノイアだ。主人公人見広介を現代のディズニーランドやラスベガスに連れて来たら何と言うだろう…。
このお話を読んでいると何かボッシュの「悦楽の園」を彷彿させるね。まあ、公共という名の下に日本列島がパノラマ化しているが。かって神戸六甲にも「二楽荘」(写真右上)なる西本願寺22世法主・大谷光瑞が建てた白亜殿があった。インドのアクバル皇帝時代の建物やタジマハールを模し、英国室、支那室、アラビア室、インド室、エジプト室、などがあり、大谷探検隊の収集品も展示されていたそうだ。
明治41年から大正3年までの短い命でありその後売却され昭和7年(1932)焼失した。建築からわずか25年のことであった。ケーブルカーや冷気を六甲山から引くパイプなど、贅の限りを尽くしても1〜2年で建てたというから張りぼて臭いが…。
いま「歎異抄」がブームだそうだが親鸞が見たとしたら何と言っただろう。その顔を見たいものだ。….ボクも他力本願で行こ…狂王ルートヴィッヒ2世のノイシュバンシュタイン城、バブルに沸くドバイの建築群、規模は姑息だが我が国のバブル期にも全国にバブルの塔が現れた。人間は金力と権力さえあれば、古今東西この手のワンパターンの人になる。利己的な遺伝子が己の種を残すためというより、顕示欲と執拗な不安に苛まれるんだろう。己を顕現させる永遠の象徴が欲しいんだ。ヒットラーなんて陥落寸前のベルリンの壕のなかでゲルマニアの夢を見ていたし、ファシズムの独裁者は巨大な建築物を欲しがる。スターリンも、チャウセスクも北朝鮮も…。
キッチュというか俗悪というか一つ間違えば悪趣味のオンパレードだ。ギトギト、ゴテゴテ、これでもか!これでもか!….。
我が国の政治家もお役人さんも負けてはいないですよ。田舎に突如バッハホールだとか美術館とか、公共物と称する巨大建築物…。それがステロタイプのガラスと打ち放しのコンクリート。ポストモダンだってさ。H鋼に梅干し色や青リンゴ色塗っちゃって…。
悪口になてしまったが、この「シュヴァルの理想宮」は特別だ。1879年フランス南部は片田舎オートリーブにおいて郵便配達夫であるフェルディナン・シュバルは奇妙な形の石に躓いた。インスピレーションだ!それから石を拾い、庭先に積み上げ、1912年まで33年間宮殿を作り続けた。奇ッ怪でユーモラスで執拗。夢に取り憑かれた一人の男の人生。凄い迫力だ。(写真左下)
後にシュールレアリスムのアンドレ・ブルトンが絶賛。私が知ったのは栗田勇の「現代の空間」という本だった。その異様な写真に見とれたものだ。サンボリスムという言葉もガウディのサグラダファミリアもロスにあるサムの塔もね。…いつかその前に立ちたいものだ。