6/ 28th, 2018 | Author: Ken |
ブリキ箱
John H. Watson, M.D.
チャリング・クロスのコックス銀行の地下室を改装中にJohn H. Watson, M.D.と書かれたブリキの文書箱が見つかった。危うくゴミとして廃棄されそうになった時、一人の男が「これはもしかしたら、あのワトスン博士の持ち物ではないか?」と疑問を呈した。開てみると19世紀末から20世紀初頭の新聞やメモ、切り抜きなどガラクタで一杯である。どうも探偵や異様な事件に関する記録を集め、いつか執筆・出版しようとしていたようだ。あの時代を生きた男の証である。大量の論文の元原稿やワトスンの未発表原稿があった。
●1「各種煙草の灰の鑑別について」(四つの署名) ●2「生命の書」(緋色の研究) ●3「足跡の詮索、その保存に石膏を応用する問題」●4「職業が手の形におよぼす影響」(四つの署名) ●5「耳に関する短い論文2編」(ボール箱) ●6「刺青の構図に関して」(赤髪組合)●7「暗号に関する小論文・160種の暗号記法を分析」(踊る人形)●8「書類の年代の鑑定」(バスカヴィル家の犬) ●9「初期イギリスの勅許状に関する研究 (三人の学生)●10「中世の音楽の問題」(」ブルース・パティントン設計書) ●11「チベット探検記」(ジーゲルソン:空家の冒険)●12「実用養蜂便覧」 付・女王蜂の分封に関する諸観察(最後の挨拶)●13「探偵の仕事における犬の用途」(這う男)●14「仮病について」(瀕死の探偵) ●その他:「タールトン殺人事件」「ぶどう酒商ヴァムベリ事件」「ロシア老婦人の冒険」「アルミニューム松葉杖の怪事件」「えび足のリコレット事件とそのいやらしい細君の事件」(マスグレーブ家の儀式書)
シャーロックはワトスンの叙述について、「僕もちょっと見たがね、正直なところ、あれはあんまり褒められた出来じゃない。探偵するということは、一つの厳正科学なんだ、であるべきはずなんだ。したがって冷静に、無感情な態度でとり扱われなければならないところを、君はロマンチックな味つけをしているから、まるでユークリッド幾何学の第五定理に、恋愛物語か駆落ちの話を持ち込んだような結果になっている」。(四つの署名)「・・・君が筆にすべきことも犯罪そのものではなく、犯罪を分析し統合する推理のうえにこそならなければならないのだ。一連の講義であるべきものを、君は物語にまで低級化させている」(ぶな屋敷)「じゃ、自分で書いてみたまえ」と反論され「白面の兵士」「ライオンのたてがみ」(ホームズ自筆)の2編があるがワトスンには敵わないので止めたようだ。・・・もちろん「スマトラの大鼠」もあったのだ。