3/ 24th, 2012 | Author: Ken |
モ、もう一度、会いたい。
そう、あの頃、暗闇のなかで見た映画。何故か心の隅に沈積し、普段は忘れているのだが時折りかすかな香りとも光景ともつかぬものが漂い、もう一度見てみたいという衝動に駆られる。あのスクリーンに魅入れられ没入したものは….。いま見れば詰まらないのかも知れないが、その朧げな映像の断片が眼前を過るのだ。この情報の時代だ。探せばDVDで発売されているのもあるだろう。しかし、場末の映画館でぽつねんと一人見入っいた時、ENDマークまで通常世界の時間は完全に止まっていた。あの暗闇のなかで….。
● 「独立機関銃隊未だ射撃中」(1963)監督:谷口千吉 佐藤允出演とあったので題名からも独立愚連隊モノの新作かと思った。…敗戦間近のソ満国境、トーチカに立て籠る日本軍に嵐のようなソ連軍が迫る。閉塞したトーチカの中だけが舞台、秀作です。
● 「沖縄健児隊」(1953)鉄血勤王隊の少年たち。爆薬を背負い戦車に肉薄する少年兵、「戦艦大和が来るぞー!大和はまだかー!」絶望のなかでは嘘と分かっていても微かな望みを叫びたくなる。そんなシーンがあったように思える。なにしろ、ぼくはほんの子どもだった。暗闇のなかで堪らなくなり泣きました。「ひめゆりの塔」、「きけわだつみの声」も同じ頃でしょうか。
●「泳ぐ人」(1968)不思議なイントロである。逞しい肉体、スイムパンツだけの男が林のなかからプールサイドのパーティに…..、眩しげに空を見上げ、そうだ「泳いで帰ろう」。友人たちのプールを泳ぎ過ぎながら男の過去や本当の姿が浮かび上がってくる….。
●「ある戦慄」(1967)N.Y.の深夜の地下鉄、乗り合わせた様々な人々、そこに凶悪な二人のチンピラが乗り込んでくる。傍若無人の振る舞いに乗客たちは。ああ恐ろしい。暴力の前の人間、あの乗客の一人が僕だったら….見るのが堪らなくなる。
● 「秘密殺人計画書」(1963)この面白さ!大物俳優が意外な姿で。フィリップ・マクドナルド原作/ジョン・ヒューストン監督。ジョージ・C・スコット、トニー・カーティス、カーク・ダグラス、バート・ランカスター、ロバート・ミッチャム、フランク・シナトラ等が変装とトリックを駆使して…。最後に「皆さん分かりましたか?」
ああ、もう一度、ぜひ、是非とも、見てみたい。
●「銃殺」(1964)監督:小林恒夫、主演:鶴田浩二。霧の中から兵隊が行進、歌声が聞こえる。〜汨羅の渕に波騒ぎ 巫山の雲は乱れ飛ぶ 混濁の世に我れ立てば 義憤に燃えて血潮湧く….. 世界恐慌の波は日本にも吹き荒れ、世相は悲惨と混乱で疲弊していた。東北では娘たちの身売りが….祖国を憂える青年将校達は二・二六事件を…。ほとんどの2.26映画は見たし、文献、小説等も数多く読んでみたのだが、この映画が当時の世相と蹶起の心情を一番映しているように感じた。処刑シーンは史実を踏まえて圧倒的。
●「シェラデコブレの幽霊」(1964)あまりに恐ろしい映像描写で試写会で体調が悪くなる者が続出した…の伝説がある。(ダリのアンダルシアの犬も当時失神する女性が続出したと言う)確かポジネガ反転による幽霊映像の記憶がある。世界に2本しかフィルムが残っていないそうだ。その1本は日本にあると噂に聞く。昔、TVの洋画劇場で見た。DVD化されないものだろうか。
●「マスター・ガンファイター」(1974)五社英雄の「御用金」そのもの。舞台を西部に移して。連発銃と刀を持った流れ者が、権力の横暴と戦うのだが。監督はフランク・ローリン、「御用金」では竹馬の友でありながら戦う仲代達矢と丹波哲郎、かじかむ指に息を吐きかけながら….背景は海岸で漁民達の御陣乗太鼓が勇壮に鳴り響く…。アメリカ版ではインディオたちが仮面を被り太鼓を打ち鳴らし、…そこまでソックリにやるか!
● 「恐怖の振り子」(1961・AIP:B級映画専門?)E・A・ポー原作「振子と陥穽」異端審問にかけられた男に巨大な刃物の振子が刻一刻と迫る。シャー、シャー……。まあB級映画なんだが、何しろ脚本がリチャード・マシスンだ。ロジャー・コーマンが「アッシャー家の惨劇」(1960)に続いて発表した作品。続いて「赤死病の仮面(1964)。それにしてもポーの原作を彼の詩のように格調高く美意識と幻想を文学的、芸術的視点で描いた映画はないのか?「世にも怪奇な物語」のウィリアム・ウィルスン(アランドロン)はなかなかだったが。写真集では「黒夢城」サイモン・マースデンが素晴らしい。そこには崩壊した古城、苔むした墓地、 闇に浮かびあがる黒猫、幻想的いにしえの怪……。また、マシスン原作の「地獄の家」これは傑作。低くドロドロと鳴動する太鼓とベラスコの亡霊が….。それにしてもリチャード・マシスンは才人ですね。
●「眼には眼を」(1975)シリアの小都市、仏人医師 (クルト・ユルゲンス)、医師の怠惰さで現地人の妻が死ぬ。その夫である男の復讐譚。砂漠を彷徨し、炎天、渇き、医師は叫ぶ。「殺してくれ、死んだほうがましだ!」。男は言う「俺も女房が死んだ時そう思った。その思いをおまえに言わせたかった」。最後に男は街の方向を指し示す。男を信用しない医師は反対の方向に歩き始める。…カメラが引くと行手には茫漠と連なる荒れ果てた山々だ。….
●「悪魔の発明」(1958)チェコのアニメーションの巨人カレル・ゼマン:ジュール・ヴェルヌの同名原作を映画化したSF冒険活劇。背景はギュターブ・ドレか?ノスタルジックなエッチング。アニメと俳優の演技を合成。独創的な不思議世界を構築していた。
●「殺しのテクニック」(1966) 監督:フランク・シャノン、 出演:ロバート・ウェバー。…..狙撃銃の慎重なサイト合わせ…NYに向う…朝焼けに浮かび上がるマンハッタン。ビルの屋上からの狙撃、ライフルの組み立て、 風向、細かい描写がたまらない。 相棒の生意気な殺し屋が何と!あのフランコ・ネロだ。これぞB級映画の王道である。… 日本でも加山雄三主演 「狙撃」(1968)、殺し屋森雅之が襲いかかる犬の群に7.62ミリ・モーゼルC96で…。ゲバルトなんて言葉が流行った時代でした。そして、あの蠍の目の男ヘンリー・シルヴァ「二人の殺し屋」これもいいんだな。
●「ソルジャー・ボーイ“Welcome Home”」(1972)ベトナム戦争から帰還した4人の若者がカルフォルニアに向う、人々の眼は冷たい。「俺たちは祖国のために戦ったのじゃなかったのか?」。様々な冷酷な仕打ちにとうとう….田舎町で武装し皆殺しを…戦争に傷ついた青春の哀しさ。監督:リチャード・コンプトン、出演:ジョー・ドン・ベイカー、ポール・コスロ…..。「アメリカは遂に俺たちを愛してくれなかった」。
●「探偵スルース」(1973)流石はミステリーの帝国である英国劇だ。たった二人だけしか登場しない(三船敏郎とリー・マービンの「太平洋の地獄」も二人だけで)L・オリビエ&M・ケインが丁々発止と火花を散らし、変装と演技合戦でいかに相手を出し抜くかが見物である。豪壮な大邸宅のラビリンスの庭で….。
●「価値ある男」(1961)メキシコ映画、あの世界のミフネが、酒浸り、乱暴者、打ち買う、神頼み、の愚か者を演じる。なぜ価値ある男なのか? 最後のシーンで哀しくもある男の姿….。
ああ、ウーン、見てみたい!