11/ 29th, 2011 | Author: Ken |
モンティの古マント…..ダッフルコート。
コートの季節である。さてコートにも色々あるがダッフルコートとは不思議なものである。厚手のウールでフード付、止めは奇妙なトッグルと呼ばれる漁網の浮きである。ループは麻縄とくれば当然として漁師の防寒着だ。初めて見たのは「第三の男」でトレヴァー・ハワード扮する少佐であった。ベレとダッフルコート、いかにも英国の将校らしく映画を引き立てていた。その次は「ナヴァロンの要塞」だ。終わりのシーンで任務を果たしたD・ニーヴェンとG・ペックが駆逐艦艦上で着ているのだ。
あのコートは何なのだ。いつも疑問に思っていたのだが、あのVAN JACKETが発売したのだ。うーん、これか!とネイビー色を愛用していたのだがどうも雰囲気が違う。本物が欲しいルーツが知りたい…。ダッフルという言葉は毛織物の町オランダのデュフェルと知った。その頑丈な素材を漁師が着たことからこのコートが生まれたとも分かった。いつしか時が過ぎロンドンの古着屋で見つけた。とてつもなくヘビーで無骨なものだった。色はキャメルのみ。問いただしてみると第二次大戦時の英国海軍のユニフォームだった。それが戦後余剰物資となって民間に流れたものだ。なるほど、やっと納得がいった。そして厳寒のシェットランドへ着ていった。
吠え狂う海、ブリザード、さすがはノースランドの知恵だと最初はダッフルコートを楽しんでいたのだが、雪は染み込むは、重いは、冷たいは、で、こりゃナイロンやポリエスターの方が優れているナと思い知った。…だがダッフルコートには歴史とドラマが染み込んでいるのだ。あの冒険活劇小説の白眉、アリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」。そのヴァレリー艦長や勇士達を思い起こすではないか! これは対ソ連援助物資を、凍てつき吹き荒ぶ北海をムルマンスクまで運ぶ輸送船団と男の闘いなのだが、下敷きはPQ18コンボイの悲劇だ。Uボートの群狼作戦、ユンカース爆撃機の襲撃、戦艦ティルピッツの出動と極寒の闘いに手に汗握る展開だ。冒険小説の最高と讃える人も多い。「ナヴァロンの要塞」もマクリーンが原作だ。
そしてエルアラメインの戦いで有名なモントゴメリー将軍がダンケルク撤退時に漁師から贈られ、彼のトレードマークとなり「モンティの古マント」と呼ばれた云々…。こういう話を聞くと嬉しくなってしまう。
…かってDunMastersという会社でダッフルコートを作ることになった。もちろんノウハウはたくさん仕入れてあるから「モノ」そのものの高い完成度を作る自信はある。しかし後発の我々が市場で勝負できるのか?値段だって特別高いし….。英国のG社や国産でも多くのメーカーが競っているしね。…….そこで無い知恵を絞った。そうだダッフルバッグに詰め込み、それらしいドラマをタグで語ろう。ちょうどカーキの防水生地が余っているしベルトだって。そしてステンシルでそれらしき内容をバッグにプリントした。いかにもヘヴィーデューティだぞ!と。………一瞬で売り切りれましたね。つまり男物のファッションとは「男にだけ解る」楽しみの提供なのですね。