8/ 18th, 2011 | Author: Ken |
ヨハネは何を指差すか。
レオナルド・ダ・ヴィンチ最晩年の作と言われる「洗礼者ヨハネ」、その不思議な微笑と天を指す指先は、いったい何を示しているのだろう。
15世紀半ばから16世紀初頭という当時の世界観から言って恐らく神と解釈するのが妥当なのだろうが、果たしてダ・ヴィンチは敬虔な信者だったのだろうか。あの時代においてあれほどの科学的観察、描写力、客観性、合理的思考、想像力を持ってしても、それ故に未知に対しての謎と好奇心は尋常ではなかったはずだ。人智の及ばぬ永遠の謎を指先に込めたのではなかろうか。
ここ一世紀ほどの間に人間は未知に対して驚異の発見をしてきた。ビッグバンに始まり宇宙を支配する4つの力、量子力学、原子に内在するエネルギー。そしてその核力を引き出したのが66年前だ。それより「ヒロシマ」「ナガサキ」「ビキニ」「チェルノブイリ」「フクシマ」。人間は何というものを作り出してしまったのか。
…だがそれは原初からこの宇宙に組込まれていたものを単に人間が取り出しただけなのか? 宇宙に物質が生まれ、凝縮し太陽となり、その核融合で重い物質が生成され、それが超新星爆発を起し、より重い物質が生まれた。私たちの身体もそれらの星屑から出来ている。現に地球の内部では今も放射性物質の崩壊熱によるマントル対流が地殻を動かしそれが地震を起こす……。
放射性物質というのも不思議なものだ。地球46億年の時間に半減期を繰り返し今も残っている。ウラン235の半減期は約7億年だ。ルビジュウムの半減期は490億年、フェルミニュウム244は0.0033秒である。ある量が半減する時間は解っているのに目の前の物質一つがいつ崩壊するかは誰にも分からない。1秒後か1億年後か….?(アナロジーとして人間は必ず死ぬ。これは必然である。しかし誰がいつ死ぬかは分からない。でも寿命はだいたい決まっているのに)。そして人間は地上に残る希釈されたウラン235を人為的に濃縮し爆弾や原子炉を作った。それがいまコントロールが利かない状態に堕ちいっている….。宇宙の法則を知った積もりの人間の傲慢さから来ているのだろうか….。
ぼくは無神論者だがこの宇宙の秘めた永遠の「Enigma・謎」を知りたいと思う。
そこで恥知らずにもダ・ヴィンチの「ヨハネ」のパスティーシュ(作風の模倣)を試みた。モデルは嫌がる豚児に頼んだ。安易だね。メタルロック小僧、茶髪、ロンゲ、おまけに洗礼名はほんとうにヨハネである。「おい、もっと真剣な顔しろや」「こんなアホなことやってられっか!」