3/ 26th, 2016 | Author: Ken |
ワレニ追イツク敵戦闘機ナシ・・・飛翔するデザイン
美しくリファインされた設計は高性能を生む。中島艦上偵察機機(C6N1)「彩雲」。前面投影面積を減らすために、誉21型のエンジンカウリウング直径に合せて、細く伸ばした直線的な胴体、そこにはカメラなど装備機器がギッシリ詰まり、母艦のリフト11mに合わせるため後縁が3点姿勢で前傾した垂直尾翼。主翼に層流翼の採用、その80%がインテグラルタンクだ。増槽無しでも3,000kmを飛行でき、700ℓ増槽装備で5300kmという単発艦上機としては世界最大の航続力を持っていた。艦上機だけに前縁スラット、親子式ファウラーフラップ等の高揚力装置、それに合せて水平尾翼の前縁が下がるという、まるでジェット時代を先取りしたようだ。離艦性向上のための3.5m・大直径プロペラ、そのため前方に突き出した長い脚、厚板構造でリベット数は10万本(零戦の22万本)・・・。レシプロ・エンジン機の限界に挑んだ近代性を感じる設計だ。推力単排気管によるジェット効果も計算ずくで、テスト機で350ktを記録、その高速ぶりを発揮した。
「彩雲」その名の通り姿もひたすらに美しい。
昭和19年6月下旬、サイパン島基地への高々度写真偵察の任務に(広瀬少尉・樋口少尉・電信員)硫黄島を発進し、サイパン島を目前に高度8,000mを二速で飛行中、前方に敵P38戦闘機3機と遭遇、距離300m。変針してブースト全開、水平全速・・・、「どうだ」「少し離れたようです」「まだ追いて来るか」「離れたようです」「見えません」伝声管を通しての会話があり、電文を打った。それが有名な「ワレニ追イツク敵戦闘機ナシ」だ。 「彩雲」は艦上偵察機として設計された唯一の機体で、単発艦上機としては世界最大の航続力を持っていた。戦後米軍によってテストされ「彩雲」は高オクタン価の燃料とオイルを使用し、高度6,000mで694.5km/hという高速を記録した。誉れエンジンは推定2200馬力を出した計算になるという。アメリカの燃料とはいえ、機体もエンジンも隠れた能力を発揮したのだ。