12/ 1st, 2009 | Author: Ken |
何でも十傑……戦争映画編
1.「西部前線異常なし」レマルク原作、監督 ルイス・マイルストン。1930年アメリカ製映画。鉄条網に突撃してくる敵を機関銃がなぎ倒すシーンは凄絶だ。そして休暇、学校、前線復帰、静かな塹壕、蝶に手を伸ばす。……..その日、西部前線異常なし。
2.「人間の条件」五味川純平原作、小林正樹監督。全6部の総上映時間は9時間31分。戦争における人間性とは。かっては日本でもこんな映画が作れたのだ。TV版は加藤剛主演。戦争を越えた世代が少なくなっていくいま、もう戦争映画は作れないだろう。
3.「人間魚雷回天」松林宗恵監督。…「僕たちは何て時代に生まれたんだ」「Es ist Gut これでいいんだ」その言葉を残して出撃。
4.「二十四の瞳」監督木下恵介。海の色も、山の姿も、昨日につづく今日であった…。出征兵士を送る打ち振る旗の列、軍歌。白木の箱の帰還。戦争シーンはないが重い戦争の影が覆っている。「この写真だけは見えるんや」そして仰げば尊し…木下監督は歌が好きだ。歌が時代の大きなうねりの中の人間を描いている。同監督の「陸軍」この最後の約10分に凝縮されている。遠くに進軍喇叭が…母が駆け出す…歓声と人の波…〜軍靴の響き地を圧し血潮溢れて出ゆくぞ〜…息子を探す…顔を見つめる…兵士が去って行く…手を合わす。武運長久を願ったのか? 否、子の母である。これが敗色濃い時代に陸軍省からの声で作られた映画とは!田中絹代の表情の移り変わりだけでの表現、言葉はいらない
5.「Uボート」監督W・ペターゼン。駆逐艦に制圧され、息を潜めながらソナー音と爆雷、閉所恐怖症には耐えられない。
6.「フルメタルジャケット」監督S・キューブリック。フルメタルジャケット・軍用被甲弾、それは真摯だ。弾は相手を選ばない。MICKY MOUSE MICKY MOUSE MICKY MOUSE
7.「僕の村は戦場だった」監督タルコフスキー。1枚の写真、最後まで敵を睨みつけているイワンの顔があった。詩情、映像美。タルコフスキーだ。
8.「独立機関銃隊未だ射撃中」監督谷口千吉。ソ満国境、トーチカで迎え撃つ兵。佐藤允の農民出身兵、その遺書、たどたどしい平仮名で「とったんは、いま…」。生き残った兵が花に手を伸ばす…。うろ覚えだが、本来は日本兵の屍を越えてソ連軍が「自由のために」「ウラー」などと叫びながら軍靴が踏越えて行くはずだったのだが、さすがにそれはカットしたそうだ。そんなことを読んだ記憶がある。
9.「アタック」監督R・アルドリッチ。ジャッ・クパランスが「神よ!お願いです。1分間だけ生かしてください!」の絶叫。
10.「地獄の黙示録」原作コンラッド「闇の奥」、監督F・コッポラ。前半100点、後半0点。チョッパーの襲撃、鳴り響くワルキューレ、この音楽を使った映画は日映の記録フィルム「落下傘部隊メナド・クーパン降下」のシーンが初めてだと思う。連合軍コンボイとUボートの死闘を記録した「大西洋の戦い」にも使われていた。それにしてもコッポラは何を言いたかったんだろうね。・・・「恐怖だ、恐怖だ」。
プラス1.「かくも長き不在」監督アンリ・コルビ、脚本マルグリット・デユラス。パリで小さなカフェを営む中年の女、かってドイツ軍に連れ去られた夫にそっくりな浮浪者に出会う。彼は記憶喪失者だ。「何も…本当に何も…覚えていないの?」「ノン」。
「誰も…たったひとりだけでも…?」「ノン」。アリダ・ヴァリが哀しくも美しい。…ソフィア・ローレンの「ひまわり」も。
戦争映画にしても小説でも負けた側の眼から見みたものに名作が多い。1万メートル以上の高空から爆弾を落としても罪の意識はあまり感じられないだろう。誰もが戦場に行けば、その悲惨さや残酷さは実感できるだろうがそうもいかない。報道写真や映画で多くの人たちが見ることにより少しでも感じることができれば…。
「ヒロシマ」「原爆の子」「ひめゆりの塔」「沖縄健児隊(鉄血勤王隊)」「火垂の墓」もう一度見たいとは思うのだが辛くて見れない。「橋」ドイツの小さな町、少年たちが橋を守ろうと。「野火」レイテの山を彷徨する兵、猿の肉だ…。「太平洋の地獄」監督ジョン・ブアマン。三船敏郎とリー・マービンが太平洋の島で。
「眼下の敵」監督D・パウエル。爆雷の炸裂とはこんなに凄いものか!実写は違う。ヘッジホグは積んでいなかったのか?。
「独立愚連隊」監督岡本喜八。戦争西部劇、佐藤允の怪演。
ワースト:「パールハーバー」長い、退屈、見れるのはCGのみ。「プライベート・ライアン」星条旗パタパタそれだけ。「硫黄島からの手紙」あの時代あんなチンタラした兵隊いたのかしら、人間を描きたかったんだろうけど、俺でもぶん殴りたいね。これでイーストウッドのファンだったのだが半減した。まだ「硫黄島の星条旗」の方がマシ。原作はいいのにね。原作は彼らの生涯を追っていくんだ。
…これだったらJ・ウェインの「硫黄島の砂」の方が断然上!あの有名な星条旗を立てる写真、本物が登場している。英雄となったその日から人生が変わった…。菊島到の「硫黄島」とその映画、ノンフィクションならR.F.ニューカムの「硫黄島」も考えさせられる。