4/ 3rd, 2010 | Author: Ken |
共和国から帝国へ、そして…。
BANANA REPUBLIC 「バナナ共和国」。いまもブランドはあるがこれは別世界のことだ。ぼくが好きなのは、あのカーキースで埋まった店のことだ。まず仰天した。入り口は象牙のブッ違い、店内には巨大なアフリカ象、傾いたジープ、岩が転がしてあり、天井からはゼブラ模様のセスナが吊り下がっていた。商品棚は竹と厚板で藤蔓で縛ってあり、それにサファリ・ジャケットやチノス、バッグや帽子がいっぱい置いてあるのだ。ここまでやるか!という面白さなんだ。
これはパトリシアとメル・ジーグラー夫妻が70年代後半に始めた店だ。そして、カタログのコピーが何とも人を食った文章だ。ブリティッシュ・アーミー・ショーツには、「まだ英帝国が創世記のころ、ただの一兵卒でも士官やジェントルマンのような服を着ていた。なぜかと言うと最高の仕立てはキュッカンバー・サンドイッチのようにブリティシュであるからだ…」(キュッカンバー・サンドイッチなんて英国の上流階級?しか食べないし美味しくない)、とか。
ポロシャーツには「ぼくは前から胸に鰐(ラコステ)を飼っていたのだが、近所の人たちを食べ始めたから止めた。胸にポニーを走らせているやつ(ラルフ・ローレン)、ぼくはそんな家柄じゃないし….、だから何もついていないポロシャーツがほしい」。
そして「夢見る人に、冒険家に、専門家に、 ディレッタントに、父さんに、母さんに、…ユニークな人のために、他にする事があって服なんてどっちでもいい人のために」なんて書いている。
服を売っているくせにね。この考え方に唸った。ふーん、知的お遊びなんだ。これを分かる人が笑いながら買うんだ。その考え方気に行った!とね。世界中にバナナを真似した店が出来たけれど、みんな大したことなく消えた。上ッ面だけ真似してコンセプトまで真似できなかった。…そしてバナナ共和国は全米に店を出し帝国を築き上げた。でも大きくなるとGAPに会社を売っちゃった。
名前は残ったけれど、当たり前の店と服になってしまった。時代の波だ、共和国の終焉だ。ぼくはもう着ないけれどバッグやカーキなんかを物置に大事にしまってある。