1/ 12th, 2010 | Author: Ken |
冬の旅
これはテオ・アダム「冬の旅」のコンサートのカタログなのだが、表紙はフリードリヒの「雲海の上の旅人」だ。シューベルトは「…それは飛行船の操縦士だけが見る事のできる絵だった。彼がその乗り物に乗って厚い雲の上に飛び出し、霧のベールの切れ目から濁りなく青い空が見えるまで上昇したときに…」と書いた。霧を突き破った無限の空間のなかでの純化と浄化、自我が消滅し無となる。…山頂に屹立する人物の後ろ姿はツァラトゥストラか!
「冬の旅」はわたしの”独白”による24曲の歌曲である。「おやすみ」に始まり「凍った涙」あの「菩提樹」「鬼火」「からす」「まぼろし」「幻の太陽」そして「辻音楽師」へと続く。重く陰鬱なさすらいを重ね、透明な虚無へ近づいてゆく若者の姿である。”村はずれにライエルを奏でる狂った老人がいる。凍った地面を裸足のままで、誰一人聞こうとはせず、誰一人目も止めない…犬が唸っている…不思議な老人よ、お前についてゆくことにしようか?わたしの歌とお前のライエルで”…。この狂った辻音楽師とは何者か?もしかしたら死神か? ライエル弾きとは「夜の画家」と呼ばれるジョルジュ・ラ・トゥールが描いたような人物か。
「冬の旅」フィッシャー・ディースカウ、テオ・アダム、ピーター・シュライヤー… どれも名唱だ。
Liederzyklus: Winterreise D.911 Musik: Franz Schubert 作曲:フランツ・シューベルト
Text: Wilhelm Mueller 作詩:ヴィルヘルム・ミュラー