8/ 3rd, 2011 | Author: Ken |
冷たい夏。装丁・「原爆症」
あ年目の夏が巡って来る。原爆とは人類が犯した最大の過ちである。核戦争は個人の死だけではなく人類という種の滅亡である。この46億年の地球、生命の歴史、ホモサピエンスの歴史、それらが潰えるのだ。 いままた核の恐怖が福島で起っている。
いかに平和利用とはいえ「核」はあまりにもリスクが大きいダモクレスの剣だ。それを思うだけで背筋に冷たい戦慄が走る。世界はいまだに2万発以上の核兵器を持ち続け、原子炉を内蔵した廃艦も含めて数百隻の原子力を動力とする空母や潜水艦、そして431基の原発が地上に存在する。人間が作り、それを制御できるという思い込み、それは人間の傲慢としか言えないのではないか。
ここに一人の医師がいる。郷地秀夫氏だ。30年余り被爆者を診続け、原爆症認定集団訴訟の証言台に立った医師が、被爆者の実相と生き様を描き出す。また、「原爆症」の実態を浮き彫りにし、国の厳しい認定基準を告発する。そこには、医師であるがゆえに、誰にも言えなかった被爆者たちの心の奥底からの叫びが聞こえてくる。彼は語る
「暗闇を恨むのをやめて、一本のろうそくに灯をともそう」矛盾だらけの現実に、先の見えない暗闇の愚痴を行っても何も変わらない。たとえわずかな灯でも、自分の心のろうそくに灯をともそう。行動すること、自分が変わること、信じること。そして希望を持つこと…そして、今、これまで私に託された、たくさんの被爆者の思いもこの火と一緒になって、手に持つ筆を燃やし、紙面を焦がしながら文を焼きつけていく。多くの被爆者は高齢となりつつある今、この灯火が消える前に私たちが継がねばならない」と。
ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ、未来に悲劇を、禍根を残さないためにもいま「核・原発」への決断が迫られているのではないだろうか。….数年前になるが縁あって郷地秀夫氏の「原爆症」の装丁を頼まれた。やはり「人間とその内面」を表現しようと悩んだ末に描いたのがこの絵である。少しでも著者の「重さ、深さ、メッセージ」が表現できただろうか。
●「原爆症」罪なき人の灯を継いで…..郷地秀夫/著:かもがわ出版