3/ 22nd, 2010 | Author: Ken |
名探偵登場…何でも十傑。
探偵稼業もやり辛くなったものだ。携帯電話、GPS、監視カメラ、司法解剖、ガスクロマトグラフィー、DNA鑑定、毒物の組成を調べるためにSPring8まで使うのだから。密室殺人、凶器、トリック、そして大団円という図式が成立しなくなった。だから探偵が輝いていたのは19世紀後半から20世紀前半なのである。いかに読者に挑むか作者たちが技巧と知恵を絞った時代である。推理、ミスディレクション、倒叙、安楽椅子探偵….。これら珠玉の作品を愉しむのはこの上ない悦楽である。とても十傑を選べといっても無理なので、あくまで私の印象に残る作品の紹介である。E・クインや江戸川乱歩の選んだのとほとんど同じになってしまった。
⚫️「盗まれた手紙」エドガー・アラン・ポー:史上初の探偵C・オーギュスト・デュパンの登場(1841年・モルグ街の殺人)。
⚫️「唇のねじれた男」コナン・ドイル:あのシャーロック・ホームズがアヘン窟にいた。….商売は三日やったら止められない。
⚫️「ダブリン事件」バロネロ・オルツイ:安楽椅子探偵、隅の老人。名前も何も分からない謎の老人が推理力で…。
⚫️「13号独房の問題」ジャック・フィットル:オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン、思考機械の登場。フィットルは1912年タイタニック号遭難事故で死亡。
⚫️「赤い絹の肩かけ」モーリス・ルブラン:あの紳士にして強盗、詐欺師、冒険家、アルセーヌ・リュパンが活躍。
⚫️「オスカー・ブロズキー事件」R・オースチン・フリーマン:当時最新の法医学や鑑識技術を取り入れ、一見不可能に見える事件を科学的に解明。ソーンダイク博士の頭脳が冴える。
⚫️「ギルバート・マレル卿の絵」ヴィクター・L・ホワイトチャーチ:走行中の列車から目指す一両だけをどうすれば抜きだせるのか?
⚫️「堕天使の物語」パーシヴァル・ワイルド:カードゲームのトリック、その労力たるや…。奇術師ロベール・ウーダンによるいかさまの話からと言うが果たして。
⚫️「茶の葉」エドガー・ジェプスン&ロバート・ユーステス:トルコ風呂殺人、凶器は何だ?…この手はいっぱい模作を生んだ。おかげで今ならすぐ思いつく。凶器は….の槍で殺したというのを読んだことがある。
⚫️「密室の行者」ロナルド・A・ノックス:密室殺人、食料が豊富な部屋にいて、なぜ餓死なんだ?
⚫️「二壜のソース」ロード・ダンセイニ:死体を隠せ!なぜ薪割りなんかしているんだ。
現代ではアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」会話を聞いていた給仕のヘンリーの推理が冴える。「ユニオンクラブ」微睡んでいた意地悪爺さんグリズウォルドがやおら目を覚まし…。大好きだ。 他にもエルキュール・ポワロ、ブラウン神父、ドルリー・レーン、アンクル・アブナー、マックス・カラドス、ミス・マープルなどなど、いかに個性的探偵を創作するかと多彩である。わが国にも明智小五郎、金田一耕助、三河町の半七、神津恭介と…。