4/ 12th, 2010 | Author: Ken |
外骨さん、大好きだ!
こんな凄い人がいた。宮武外骨(慶応3年1867〜昭和30年1955)、ジャーナリストにして世相風俗研究家、反骨とパロディに徹し面白可笑しく世相を批判した。あのマイケル・ムーアだって真っ青になる人だ。あの明治時代にここまでやるか!
とにかく「頓智研法発布式」として「第一條、大頓知協会ハ讃岐平民ノ外骨之ヲ統括ス」と大日本国憲法発布を皮肉って不敬罪に問われ入獄3年8ヶ月。その生涯で入獄は4回、罰金・発禁などは29回に及んだ。その「頓智協会」設立のお知らせも効いている。
「美玉も琢磨せざれば光輝に発せず私剣も砥礪せざれば断割に適せず(古い々ゝ)、本会は一名活機転用学校と称い、専ら時に応じ変に臨んで利用すべき頓智を発育養成するを主義とし、広く会員を全国に募集す。余の名前は「宮武外骨」である。…ついては、この主旨を十全に理解し、今後の頓智の縦横無尽なる活躍に期待せし紳士諸君であるならば参加しない手はないであろう。余の今後の活動に賛同するものは余の居宅にその旨送りたし」。まさに空前絶後の宣言ですね。
そして「滑稽新聞」を創刊し記事の大半を自ら書いた。時事批評から下世話な世相まで、毒を仕込んだパロディー精神、さらに挿絵もなかなかである。…怒り脳天に達し頭がカチ割れたイラストなんか、それはもう! 当局が「滑稽新聞」に対して発行禁止命令を出せば、外骨は先んじて173号を以て「自殺号」として廃刊。しかし翌月には「大阪滑稽新聞」を出すなど何とも奮っている。傑作なのは「真の写真」として自分の顔に墨を塗り紙に推し当てる顔拓。娘が鏡で化粧、映っているのは骸骨。鋏が男女の顔で接吻、タイトルが「切っても切れない仲」。アールヌーヴォーはハイカラ繪にあらず日本古代模様の化物。….とか、当時の写真加工まであったり広告まで楽しめる。彼はアートディレクターだ。デザイナーだ。クリエィターだ。
大正5年(1916)にスコブル面白くて、スコブルためになると、月刊誌「スコブル」を創刊し。大正6年には衆議院選挙に再び選挙違反告発を目的として立候補。投票日前に「落選報告演説會」の告知を出したり、落選後予定どおり開催した。…まあ何と。そのアイディア、ウィット、遊び精神、パロディ、斬新、奇天烈、モダン、ナンセンス、行動…。とても常人には真似できない生き方だが、現代の企画・デザイナーを遥に越えている。とにかく凄い、単なる奇人ではなく真のヴィジュアリストと僕は尊敬している。
外骨さん、大好きだ。
●「宮武外骨・滑稽新聞」赤瀬川原平・吉野孝雄 編:筑摩書房 復刻版(全6冊)別冊「繪葉書世界」
●「過激にして愛嬌あり」吉野孝雄 筑摩書房 ●「外骨という人がいた!」赤瀬川原平:筑摩書房