2/ 7th, 2013 | Author: Ken |
夢の魔法箱、あるいは一億総白痴化電波BOX。
リキ行け!空手チョップだ!ぶっ殺せ!….なんであんなに興奮したのでしょうね。TVを初めて見た時の不思議ったら!空中を電波が飛んでくるのだが、この魔法の箱から人間のいちばん人間らしい好奇心(野次馬精神)というものが吹き出すのです。同時性というかドキュメンタリー性というか、同次元、同時刻に事件やら臨場感や何やらが居ながらにして楽しめるのです。TV放送が始まって少し経った頃、プロレスに日本中が興奮したものだ。田舎ではTVがあるのは村に一軒きりだったから、プロレスの日になるとみんな集まって声援を飛ばし、敗戦国の悲哀と狡いアメリカレスラーに、怒りの力道山の空手チョップに託して溜飲を下げたのだ。その頃はまだ憎いB29とレーダーに負けたのだという会話が日常で話されていたのだ。僕はガキだったが村はずれの怖い夜道を通って見にいったのだ。でも、薄々は感じていましたよ。筋書きのあるドラマだって。だってなぜいつもレフリーのユセフ・トルコのTシャツが破られるのだ。拳固の反則を取られると大げさな身振りでオー!ノー!とか、豊登の脇をパコーン!なんてね。しかし、ルー・テーズと力道山の対決は身体が震えるほどだった。….いつか我が家にもTVが入り「番頭はんと丁稚どん」なんかヘラヘラ笑って見ていたものだ。
それからはアメリカ製ドラマにはまりましたね。ほとんどが西部劇だった。「ローハイド」ローレン、ローレン、ローレン….「ライフルマン」Staring Chuck Connorsバキューン!ウィンチェスターを片手で回すのだ。….箒なんかで真似していたよね、ご同輩。
ぼくは「アンタッチャブルズ」に夢中だった。そのタイトルのカッコいいこと!The Untochables ロバート・スタック as エリオット・ネス、そのナレーションは30年代に活躍したウォルター・ウインチェルだったのですね。日本では黒沢良だった。ネスのストイックなスリーピース姿、チョークストライプ・スーツにスパッツ、ギャングスターのお洒落度(まるで当時のエスクァイア誌みたいだ)や場面のクロスカッテイング手法の素晴らしさに「オお!」。いまだにハードボイルドが好きなのもその影響でしょうか?
「西部のパラディン」も大好きだった。Have gun will travelなんてチェスのナイトを印刷した名刺を出すんだ。「スタンドバイミー」で少年たちが線路を歩きながら歌っていたね。Paladin, Paladin, Where do you roam?
そしてだ、ロッド・サーリングの「ミステリー(トワイライト)・ゾーン」ああ!もう一度見てみたい!
「ヒッチコック劇場」何たって原作からして凄いんだ!ロアルト・ダールの「南から来た男」とかドロシー・L・セイヤーズやジョン・コリア、ヘンリー・スレッサーなんて名手たちの名作揃いなんだから….。ああ、切りがない。情報が新鮮で輝きTVがTVであった時代…今年は放送開始60周年だそうだ。…ン?いま?大きな50インチの板だけれどTVなんてほとんど見ないね。だってあまりにも詰まらないんだから。媚びと追従と醜悪とオツムの弱そうなタレント?が面白くもないのに…憮然とするしか。
…おっと!60年前に大宅壮一が言ったっけ「一億総白痴化」って。
まあ、「進め一億火の玉だ!」とか「一億総懺悔」とか、一億って語呂がいいんですね。「〜讃えて送る一億の歓呼は高く天を突く〜」…もういいよ。つまりぼくも歳を喰ったってわけだ。といいながらPCでYou Tubeなんか見ているんだから。