10/ 4th, 2010 | Author: Ken |
The Raven「大鴉」……ポー賛/1
Once upon a midnight dreary,
while I pondered, weak and weary,
Over many a quaint and curious volume of forgotten lore,
While I nodded, nearly napping, suddenly there came a tapping.
As of some one gently rapping, rapping at my chamber door.
” ‘Tis some visitor, “ I muttered .
” tapping at my chamber door, Only this and nothing more. ”
むかし荒凉たる夜半なりけり
いたづきみつれ黙坐しつも 忘郤(ぼうきゃく)の古學のふみの奇古なるを繁(しじ)に披(ひら)きて
黄(こう)ねいのおろねぶりしつ交睫(まどろ)めば 忽然(こちねん)と叩叩の欸門(おとない)あり。
この房室(へや)の扉(と)をほとほとと ひとありて剥啄(はくたく)の聲あるごとく。
儂呟(われつぶや)きぬ 「賓客(まれびと)のこの房室(へや)の扉(と)をほとほとと叩けるのみぞ。
さは然(さ)のみ あだごとならじ。」
日夏 耿之介
“Lord, help my poor soul.” 主よ、哀れな魂をお救いください…。エドガー・アラン・ポー最後の言葉だと言われる。この耽美的、神経的、憂鬱症、幻想、幻影、ネクロフィリア、アルコール中毒、闇にひっそりと浮かびあがる美しい女、心を震憾させる想像の風景、イマジネーションの宇宙。……の男はあまりにも感性が強過ぎる人物と思われているが、実際は論理的で計算に優れ冷徹な科学者のような頭脳を持っていたのだろう。「ユリイカ」「ハンス・プファールの無類の冒険」「シェヘラザーデの千二夜の物語」「メルツェルの将棋差し」などを始めその小説や評論の背景には当時の最新の科学知識に基づいて創作されている…SFの父だ。
史上初の諮問探偵を創り「黄金虫」は暗号解読、「使い切った男」はサイボーグだ。「ウイリアム・ウィルスン」は二重人格だし「群衆の人」は現代の孤独を先取りしている。なんという凄い直感と頭脳だ。そしてあまりにも美しく音楽的で静謐で奇怪不思議に満ちた詩の数々…..底なしのイマジネーションの深淵を覗く。….ぼくの英語力では深く理解することができないが、原文で読むより翻訳が素晴らしい。日本語の曖昧で多彩な語彙と表現。日夏 耿之介は格調高く(難解だが優美)ゴシック的な耽美の世界だ。
●「アッシャー家の崩壊」谷崎精二/訳:あの嵐の夜にアッシャーがリュートで弾き語る即興詩なんて…嗚呼。
●「大鴉」昔、古本屋で何気なく見つけた詩の本、それが上記の写真。挿絵がギュスターブ・ドレ、夢幻への耽溺だ。
●「黒夢城」写真家サイモン・マースデンのエドガー・A・ポーの世界。崩壊の古城、深閑の墓地….廃墟がひたすらに美しい。