1/ 29th, 2010 | Author: Ken |
奇妙な味の映画
観終わったあと奇妙な感触が残り忘れられない映画がある。「泳ぐ人」もその一つだ。導入部から奇妙なのだ。夏の午後アッパーミドルクラスのプールサイドで人々が談笑している。林をかき分け水泳パンツ一つの男が入ってくる。筋骨の逞しさを誇る肉体の持ち主だ。
皆が噂する「ぜんぜん変わらないね」「元気かい、娘さんたちは?」「ああテニスをね」。彼は眩しそうに空を見上げ「そうだ!泳いで帰ろう」。友人たちのプールを泳ぎ巡って家まで…。
かって彼に彼に憧れていた少女が、両親がかまってくれない裕福で孤独な少年、空のプールを泳ぐ真似をして渡る、ヌーディスト主義の夫婦、成金のパーティ真っ盛りのプール、プチブルたちの虚栄。….だんだん男のヴェールが剥がされてゆく、ウェイターも邪険に扱う、昔の愛人のプール….相手にされない、嘲笑される。男の裏面と過去が暴露されるにつれ内面が浮かび上がってくる。ハイウェイを渡り公営プールにたどり着く、入場料がない。出入りの食料品屋が蔑んだ眼で出してくれた。「脚を洗え!」監視員が命令する。屈辱的だが言葉に従いプールに入る。
食料品屋が毒を含んだ嘲笑を浴びせる「なんだ偉そうに!ジャムはフランス製でないとなんて言ってやがったくせに…」。人混みのプールを泳ぎ渡り、裏山の岩壁を登り家にたどり着いた。そこは荒廃し庭もテニスコートも寂れ放題だ。廃屋の匂い。嵐がやって来た。深閑とした家には人の気配もない。「寒い」… 雨に打たれながらドアにすがりつき呆然とうずくまる…。奇妙な味が後を引く映画だ。
「泳ぐ人」THE SWIMMER(1968) 監督:フランク・ペリー、主演:バート・ランカスター 原作:ジョン・チーヴァー(1964)