1/ 11th, 2010 | Author: Ken |
寂寥と崇高と。
フリードリヒの絵の前では何を語ればよいのか…。荒涼、廃墟、静寂、薄明、黄昏、静謐、峻厳、茫漠、孤独、畏怖、崇高…。
こんな言葉をいくら書き連ねても意味はない。書は言を尽くさず、言は意を尽くさずだ。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(1774〜1840)ドイツのロマン主義絵画を代表するとあるが、宗教的含意を含む風景画である。何なんだろうね、この不思議な世界に誘う絵は。
彼は「まず精神の目でタブローを見るために、きみの目を閉じるがよい」と言ったそうだが、精神の目によって眺められたヴィジョン、直観、印象を感覚的に表現した絵。それはフリードリヒ自身の人間を見ることなんだろう。
自画像は恐ろしいほど厳しい顔をしている。同時代の風景画家ターナーの色彩と較べるとフリードリヒには凍てつく凛々さが漂う。上は「海辺の修道士」下は「樫の森のなかの修道院」と「氷の海」。暗鬱な北欧の冬から生まれた眼なのだろうか。