1/ 30th, 2011 | Author: Ken |
怪物20面体
怪人20面相ならぬ20面体。何とインフルエンザウイルスも20面体だ。ウイルスとは生物か無生物か?他の生物の細胞を利用して、自己複製させる微小な構造体でタンパク質の殻と内部に詰め込まれた核酸からなる、と。生物学上は非生物とされているが40億年の進化の歴史がこいつにもあるはずだ。……四分の一世紀ぶりにインフルエンザで寝込んだ。いまだに頭が時差ボケ状態が続く。普段から風邪?
そんなもんWill Powerだ、意思の問題だと豪語していたのだが慎んで撤回し謙虚に謝ります。ゴメンナサイ。
人間が罹患するということはインフルエンザも人間とともに進化してきたのか?アウストラピテクスも罹ったのか?ネアンデルタール人も寝込んだのだろうか。特に1918年、第一次世界大戦中に発生したスペイン風邪は、戦争以上の犠牲者を出した。世界で約四千万人の死者ともいうし、日本でも約38万人といわれている。パンデミック(Pandemic:伝染病の大流行)だ。そういえば親父が生前、スペイン風邪は酷かった。みんなバタバタ倒れたとよく話していた。ふーん、インフルエンザはあまりにも日常茶飯事すぎて病気の内にもはいらないくらいだと思ってしまうが、ところがどうして毎年一番多くの人間を殺しているウイルスなのである。現在インフルエンザは、A型、B型、C型や、H1N1とかH3N2とか、ややこしいが、スペイン風邪は鳥インフルエンザに由来し、ヒトと鳥の双方に感染する豚を媒介として、その体内の中で鳥とヒトのインフルエンザウイルスが、遺伝子間の組替えを起こして、種の壁を越え、殺人ウイルスとして変化するのだそうだ。
●「4千万人を殺した戦慄のインフルエンザを追う」ピート・デイヴィス著、高橋健次/訳:文春文庫を読んだ。スペイン風邪のウイルスを見つけようと北極海に浮かぶスバールバール諸島やアラスカで氷ついた遺体を発掘して調べるが失敗。
ところが米軍理学研究所(AFIP)にホルマリン漬で保存されていた検体からH1N1のウイルスであったことを突き止める。そのノンフィクションでなかなか興味深かった。ウイルスという奇妙な奴!そこで奇怪なウイルスT4ファージという奴が登場。まるでSF映画の未来戦闘マシンみたいだ。進化の妙というか自然がこんなものを作りだすなんて!こいつはは構造的にきわめて安定で、溶液中で何年も感染機能を保持したまま過ごし、いったん宿主大腸菌に吸着すると100 %に近い効率で一連の過程を経て感染するそうだ。
まるでだれかがデザインしたみたいだ。いま世界中で開発しているロボット兵器もこんなやつが出てくるんじゃないか。そういえば「ミクロの決死園」(1966)という映画があった。あれから約半世紀、ナノマシーンも登場し日々進歩している。これも恐いね。バクテリアみたいに自己増殖するナノマシンができたらどうなるのだ。もしそれが、自己複製時のプログラム・エラー(突然変異)などにより暴走したら増殖が止まらなくなり指数関数的に増えて行く。数時間のうちに地球全体がナノマシンの塊になる。
ああ、考えただけで気分が悪くなる。小松左京の短編「ウインク」みたいだ。これは相当に気色悪い怖い話だよ。読んでごらん….。