7/ 26th, 2011 | Author: Ken |
戦艦大和・Box Art
「ボックスアート・Box Art」、プラモデルの箱に描かれた絵である。それがとてつもなく勇ましくてカッコいいのである。何時の日にか俺も描いてやろうと決心して半世紀が経ってしまった。最初は「少年」なんかの雑誌の巻頭見開きに描かれた小松崎茂の戦争画だった。真珠湾奇襲の絵なんて今でも眼前にありありと浮かぶ。97式艦攻が海面すれすれに魚雷を放ち、戦艦ウェストバージニアやテネシーに炸裂する巨大な水柱、轟音と機銃音が聞こえてきそうだった。模型を作りたくって木を削ってソリッドモデルを真剣に作ったものだ。
そしてアメリカからプラモデルが登場した。レベルやモノグラム製のパッケージの素晴らしいことといったら!P51マスタングが唸り、スピットファイアが蒼空を駆けるのだ。高くて買えないけれど店頭で見惚れましたね。
日本でもプラモデル時代になりタミヤ模型が小松崎茂に頼んだそうだ。「先生、是非」「わかった、ぼくが会社を救ってあげよう」それが「パンター戦車」だった。そう、プラモデルはパッケージの箱絵で売れるのだ。そのアートが決めてなのだ。完成した喜びへ誘うのだ。作りたいッ!と。
その点小松崎茂にはドラマがあるのだ。飛行機や軍艦が生きているのだ。僕も彼のボックスアートに魅せられて幾つも買った。一番の印象は艦上偵察機「彩雲」だ。「我に追いつく敵機なし」その電文が聞こえてきそうだった…..。彼は「戦艦大和」がライフワークだっという。火を噴くヘルダイバー、爆発するアベンジャー、奮戦する大和。だが、今見るとポスターカラーで描かれたそれはどぎつく妙に明るいのだ。大和の悲劇性や慟哭が感じられないのだ。
そうこうするうちにペーパーバックの表紙絵に生頼範義が現れた。泰西名画を憶わせる暗く粗いタッチの背景、短縮法を取り入れた異常に圧縮された軍艦、悲劇性のドラマの幕開けだ。まるで「橋の上のホラティウス」なのだ。…..早く橋を落としてくれ、私は仲間とともにここで敵を食い止める。さあ、私の横に立ち橋を守るのは誰だ?…….
カラヴァジョが太平洋戦争を描けばこうなる。そんな気さえしてくる。ああ、僕にはとてもそんな絵は描けないし時間もない。だけれど描いてみたい。できればキャンバスに油で、いやアクリルカラーでもいい。ドラマを呑んだ存在感ある軍艦や飛行機を…。
やっと半世紀ぶりに描いてみた。それも大部分はPCというキャンバスで。でも描く過程は普通の絵と同じ。マウスという筆でタッチを利かせてサッサッさと。やはり平筆や面相筆で息を凝らして塗る方が楽な気もするが、手が汚れないし筆を洗う必要も無い。その点はイージーだけれど、マ、いいか。黒鉄の威容、聳える艟艨、鋼鉄の夢、そんなのが少しは描けたかしら。