6/ 30th, 2011 | Author: Ken |
時計を捨てよ街に出よう。
男の唯一といっていいほどのアクセサリーはリストウォッチだ。昔は成人になるとまず時計を親から貰ったり無理して買ったものだ。
とても高価なものだったし豊かさの象徴でもあった。古い強盗漫画には腕時計を巻き上げるシーンがよく描かれていたし、旧満州で進駐したソ連兵が日本人から取り上げ腕に何個も時計を巻いていた。なんて話も聞いたことがある。
「腕時計・リストウォッチ」その精巧な機械仕掛けに感嘆し、左腕に輝く光沢を誇らしく感じたものだ。いまでもメンズマガジンでは「時計特集」をやると部数が増えるそうだ。まあ男の子はメカニズムが大好きだし、女性がジュエリーに目がないのと同じだ。
そして超高価なブランド物をジャラつかせて、どうだ!という自己顕示欲も満足させるしね。ぼくにはそんなお金はないからもっぱらアンティーク?と言えば聞こえはいいがジャンクばっかりしか身につけたことがない。おまけにほとんどが手巻きだ。いつも修理で困ったものだ。だけれどクォーツにはない人間的というかゼンマイや歯車の機構に魅せられていたのかも知れぬ。
……そしてもう16年前にもなる阪神淡路大震災があった。仕事はすべて吹っ飛んじゃったし生活の不安やら、もう明日が見えないから口を開けて笑うしかなかった。そう、バブルが弾けリストラという言葉が大流行りだった。Restructuring・再構築、そうだ自分自身をリストラしよう。まず車を止めた。友人は何十年も乗っていた者が止められる訳はないと笑ったが….。ゴルフも止めた。仕事柄ゴルフのウェアやグッズなんかの仕事が中心の癖にね。そして時計を外した。何か時間というものに、習俗というものに、束縛され、自分とっての時間が掴めなかったからだ。震災の後何をしていいか解らない。そのくせ仕事もないのに毎日半壊の事務所に通う……
いったい何をやってんだ?車を止めたら駐車違反にビクビクすることもなく、お酒も飲めるしかえって行動範囲が広まった。時計を止めても携帯電話もあることだし不便はなかった。だが自分だけに流れる、自分の時間なんて掴めなかった…….が。
…..抽き出しを整理していたら錆び付いたのが随分出て来た。もう修理してくれる人も少ないだろう。正確な時間を刻むならハイテクはトンでもない時計を生み出した。GPSなんかアインシュタインの相対性理論を使い時間の遅れを調整しているし、セシウム原子時計なんか9,192,631,770Hzのマイクロ波を作り。これが1秒の定義となっている。誤差は1億年に1秒(10の-15乗)だそうだ。
最近では「光周波数コム」でセシウム原子時計の1000倍の「300億年に1秒」の精度だとか、いやイッテルビュウム171光格子時計もあるとか。黒体輻射や核スピン影響が少なく周波数は518,295,836,590,864 Hzだと…….。ウーン、最後はプランク時間なんだろうか。
その値はプランク長さと真空中の光速度によって定まり国際単位系で5.39121x10のマイナス44乗だそうだ。
時間っていったい何なんだろうね。