8/ 18th, 2012 | Author: Ken |
楕円美と楕円コンパス
楕円!純粋の数学? それとも自然?….レオン・レーダーマン。たしかに楕円は優美だ。何故と言われても困るのだが美しいのである。もとより微積分や解析は頭が痛くなる質だし、その数式が美しいと言われても、とてもとても…。
デザインを勉強し始めた頃、様々な多角形や図形を定規とコンパスで描いていたのだが、優美で流れるような楕円を描きたかった。コンパスで描いても本当の正楕円は描けない。糸をピンで二カ所止めて描いてみても不安定でとてもスミ入れ(鉛筆でなくペンや烏口で印刷原稿にする)は出来ないし。
調べてみたらアルキメデスの楕円コンパスがある? エッ!二千年以上前から? 当時はネットなんて無かったし図書館で調べたのだが十文字の溝に支点が2カ所あって不思議な動きをする….。自分で作ってみようとはしたのだが….面倒だ(ここが私の欠点である。そして当時は百均やホームセンターが無かったしね)。そうこうするうちにドイツHAFF製で楕円コンパスを見つけた。恐ろしく高い(当時の給料の一ヶ月分以上!)。無理して手に入れたのだが、その完璧さに脱帽しましたね。長径と短径の数字を合わせ回せば好きな楕円が描ける。おまけに鉛筆の代わりにロットリング(0.1〜1mmのインクペン、この0.1mmがよく詰まる。分解して洗い、入れようとすると….何本オシャカにしたことか)が差し込まれる。重宝しましたね。
時は過ぎMAC PCの世界になってからは楕円なんて一撃! おまけに変形も自由自在、隔世の感がありますね。
楕円は何故美しいのだろう?緒方光琳の「紅白梅屏風」の水の渦、スーパーマリン・スピットファイアの楕円翼、その垂直旋回の美しい姿。斜めから見たグラスの切り口(バーの切り絵で有名な成田一徹氏もグラスの楕円の繊細な切り口が命だと)、浮世絵の美人画の瓜実顔、アーモンドのような眼、モジリアーニのフォルム、女性の肉体美も曲線の魔力? DNAだって二重螺旋だ。
曲線は美しい=楕円・放物線・双曲線の3種の円錐曲線、日本の城の石垣の曲線(誰が考えたのだろう?水圧や地圧に対抗して出来たのだろうが、石積みはどうしたのだろう?たぶん大きな木型を作りと思っていたのだが、何と綱を垂らしたら自然とその形が出来る。カテナリー曲線(懸垂曲線・ラテン語の鎖に由来)と呼ぶんだそうだ。中世の石工や職人たち、ほんとに頭イイーッ!
そして何といっても惑星の軌道だ。ヨハネス・ケプラーの法則以来、惑星の運行は楕円である(細かくいえば惑星どうしの干渉で正楕円ではないが…)。古代ギリシャから続く真円だと言われた「天球の音楽」宇宙のハーモニーも楕円でより優雅になった?ケプラーも宇宙の構造を音階で表わそうと神秘学や音楽理論でも考えていたのだろう。 しかし、天球の音楽は実際に聞こえるものではなく、精神で受け取るものだと….。でもホルストの「惑星」、あれはホロスコープが思想が背景にあり出来も僕好みじゃない。
それより唱歌「美しき天然」田中穂積:作曲、竹島羽衣:作詞(明治35/1902年、いつしかサーカスのジンタやチンドン屋のテーマ曲になり下ったが、それもまた消えた)にある歌詞を地球から宇宙に拡大して
〜聞けや人々面白き この天然の音楽を 調べ自在に弾きたもう 神の御手の尊しや〜
こちらの方がいかにも星辰の運行を唱っているじゃありませんか。