10/ 29th, 2010 | Author: Ken |
極短小説….2
またしても悪乗りです。何の役にもたたない戯れ言を…..。Cartoon:カトゥーンって言う一コマ漫画がありますね。
あれって一コマに知恵を絞ること悪戦苦闘だと聞いた事があります。アメリカではそのアイディアだけ売る商売があるそうな。
まあ、極短小説もそんなものか。出来不出来はありますが歯に衣着せぬ辛辣なご批判を….。
側近
ナチの高官が胃潰瘍になった。権謀術数が渦巻く第三帝国の神殿はストレスが多い。忠誠心こそ生き抜く知恵だ。
入院にあたって医者に一つの注文をつけた。大手術だった。手術は成功し回復した。総統が見舞いに訪れた。
「元気になってよかったな。君は我が党になくてはならない存在だ。ところで傷口を見せてくれんかね?」
「ハイッ!総統!ハイルヒットラー!」彼は痛みをこらえてサッと立ち、踵をハッシと打ち、パッと右手を挙げた。
パジャマを勢いよく開いた。腹には大きく見事なハーケンクロイッツの手術跡。
長いお別れ
今日は来てくれるだろうか。いや必ず来てくれる。特別の日じゃないか。娘のサリー。あの栗色の髪、ちっちゃな唇は
甘いキャンディの香りがする。ほんとうに楽しみだ。足音が聞こえるぞ。サリーのスキップだ。ハイヒールの音はヘレンだ。
優雅に歩む姿が浮かぶようだ。どれほど愛しているかわかるかい?
幸せな日々は短いものだ。あのパーティの後、気分が悪くなって……。おや? もう一人の足音がするぞ。男だ。
三人が立ち止まった。花の香りが流れる。ライラックだ。雛菊もある。ヘレンの声だ。「あなた、もう来ることもないわ。今日は
その区切りよ。新しい人生を始めるの。さようなら」「さあ、サリー。お父さんに最後のお別れを言いなさい。今日からヘンリー
が新しいお父さんよ」「ヘンリー? あの保険屋の? あのパーティで飲んだ酒……」墓石は黙して語らない。
名手
ザハリコフ中尉はソヴィエト軍第一の狙撃手だ。フォン・シュタイナー少佐はドイツ軍最高の射撃教官だ。彼らはスターリン
グラードで相まみえた。名手であるほどチャンスは一回切りだ。六百メートルの距離は彼らにとっては必中圏だ。両者とも完璧に
相手を捉えた。敵の銃口がスコープにクッキリと見える。名手中の名手であるだけに引き金を引いたのも同時だった。
弾丸は当たらなかった。あまりにも完璧な射撃だったので、両者の弾丸が空中で正面衝突したのだ。
愛は蜜よりも
「やっと最高の女性を見つけたよ。僕は三度失敗したけど、君だけは違うよ」高齢の資産家は若い妻を愛おしく見やった。
「私もそうよ。あなたこそ理想の男性よ」「ところで前の旦那さんは何で亡くなったんだね?」
「そんなこと思い出させないで! 愛しているのはあなただけよ、甘いお酒で乾杯しましょ」「じゃあ、二人の人生に!」
「ウウッ! このシャンパンは苦い……」
ドランカー
「そんなに飲んじゃいけませんよ」「いいんだ。金ならある」。「しかし、困るんですがね」カウンターの男は顔をしかめた。
「そんなことを言っていると君を……」血液センターの職員は恐怖に震えて懇願した。「お願いです。ドラキュラ伯爵さま」。
最初のビジネス
若く魅力的な二人は一文無しだった。一人前になるためには何か仕事をしなければならない。
お腹が空いた。女はリンゴを囓った。突如、彼女の身体に衝動が走った。「ねェ……」「ン……」
気がつけば、生まれたままの姿でいることに微かな寒さと不安を感じた。金をかせがなきゃ二人は….。
男はひらめいた。「そうだ! 洋服屋をやろう。絶対だよ!」
深層心理
彼女は手を洗い続けた。洗っても洗っても心は安まらない。それはトラウマなのか? イドの奥底からこみ上げる脅迫観念か?
どうしても衝動を止めることができない……。「ああ、落ちない、落ちない」。森が動くように人々の一団が現れた。
「見て!見て!かわいいなー。あのアライグマ」