8/ 17th, 2010 | Author: Ken |
直立猿人… 此の一枚。
ベースが重く暗いピッツイカートを刻む。深い原初の森を歩く足音のようだ。低くホーンがユニゾンで高まり、突如ホーンが咆哮する。
マクリーンのアルト、引き攣ったようなソロ、ホーンがアブストラクトに交錯する。「ピテカントロプス・エレクトス/直立猿人」だ。1956年録音とあるからその頃だろう。初めて聞いたとき驚愕した。なんてパワーだ、極太いのだ、激しいのだ、破壊的なのだ。
チャールズ・ミンガスのベースが吠え、フリージャズの熱気と激しいコントラストと高らかに歌いあげるソウルがあるのだ。そしてマクリーンの即興演奏には哀切がある。…ミンガスの解説によれば、Evolution(進化)→ Superiority Complex(優越感)→ Decline(衰退)→ Destruction(滅亡)の4部構成の組曲である。人類の歴史と文明社会を風刺し、黒人の社会意識の高まりとブラックパワーの宣言とも感じた。そして1971年に来日したのだ。ぼくは大阪サンケイホールで聴いた。メンバーは変わっていたがミンガスの力強いベースが牽引するサウンドは分厚く凄みがあった。あの頃はジャズに真摯に向っていた。レコードとジャズ喫茶とコンサートと。
….熱い年齢だった。それより「ハイチ人戦闘の歌」「水曜の夜の祈りの集い」「フォーブス知事のおとぎ話」とミンガスサウンドに打ちのめされたものだ。
●「PITHECANTHROPUS ERECTUS」チャールズ・ミンガス(b) ジャッキー・マクリーン(as) モンテローズ(ts)マル・ウォルドロン(p) ウィリー・ジョーンズ(d)