7/ 7th, 2014 | Author: Ken |
神々の骰子遊び。
アインシュタインは、もし量子力学が正しいなら、世界は狂気じみているといった。彼は正しかった。世界は狂気じみているのだ。…ダニエル・グリーンバーガー・ホイーラーはファインマンの論文に感動し、原稿をアインシュタインに見せた。「素晴らしくないかい?これで量子論を信じらるようになるんじゃないか?」「God does not play dice. 神がサイコロ遊びするとは信じられない。でも、これで私は間違いを犯せるようになった」。かつて、アインシュタインは量子論発展の先頭に立ち、ブラウン運動論を始め物理学における確率論的手法の開拓者でもあった。
しかし、彼は確率解釈を基とするコペンハーゲン派の量子力学に疑問を抱いた。・・・1935年、アインシュタイン(A. Einstein)はポドルスキー(B. Podolsky)、ローゼン(N. Rosen)と連名で量子力学の記述が不完全だと主張した。EPRパラドックスである。そのパラドックスとは?これはあくまで思考実験である。・・・ここに対で発生した二個の粒子A、Bからなる力学系を考える。各粒子は、二つの値スピンa(上向き)、スピンb(下向き)しか取らない力学量をもっている。角運動量保存の法則に従って2つの粒子の総合スピンは0で
A(の力学量)が値aを取ればB(の力学量)が値bを取り、A(の力学量)が値bを取ればB(の力学量)が値aを取という相関関係があるとき「Aがa、Bがb」および「Aがb、Bがa」という運動状態が同時に存在する。したがって、おのおのの波動関数を、それぞれ、Ψ1(Aがa、Bがb)とΨ2(Aがb、Bがa)と書けば、重ね合わせの原理により、この力学系の状態はΨ=Ψ1(Aがa、Bがb)+Ψ2(Aがb、Bがa) でなければならない。
つまり、AB各々の粒子は上向きと下向きが同時に重なっていて観測するまでは何も確定していないのだ。この相関関係が成立した後、AとBを宇宙の中でアンドロメダ銀河くらい200万光年以上の星間距離を取って、Aの力学量の測定を行う。その時A(の力学量)が(値)aを取ったことがわかれば、「波動関数の収縮」Ψ→Ψ1(Aがa、Bがb)が起きるはずだ。したがって、B(の力学量)が(値)bを持っていることを知る。測定結果がA(の力学量)の値としてbあれば、「波動関数の収縮」は、Ψ→Ψ2(Aがb、Bがa)であり、ただちにBがaを取ることを知るわけだ。そんなことが!!!A、Bが200万光年も離れているのにBに情報が瞬時に(光の速度で200万年かかるのに、それを超える速さで)伝わるとは!この宇宙で最も速いのが光である。それであるから瞬間にAに対する測定がBを乱すことはない。またBからAに伝わるはずもない!アインシュタインは無限大の速度で情報が伝達されることを「お化けの遠隔作用と皮肉った(Spooky action at a distance)」
1)Aの観測結果が自動的にBの状態が決まる。これは「観測行為が状態を決定する」という量子力学の主張に反する。
2)Aの観測結果を持った情報がAからBに光速度以上(無限大の速度)の速度で伝わることになり、相対性理論に反する。
しかし、1964年にベルは局所実在論が不等式の形で表現できることを発見した。このベルの不等式による予言と量子力学による予言が異なる結果になる場合があることを示し、EPRパラドックスは実験的に検証可能となったのである。その後、アラン・アスペ等による実験結果、光子対では非局所相関が確かめられ、量子力学を支持する結果となった。つまり、2つの粒子はこの「分離不可能」であり最初から強い「相関関係」からなっており2つの粒子に何ら信号が伝わる必要はないことになる。どんなにと遠く離れていても2つの粒子は「絡み合い(entanglement)」しているのだ。・・・・不思議過ぎる!!!でも、重要なことは、いまだかって量子力学に反するような結果は一つも現れていないし、現代のコンピュータやスマートフォンも量子力学の賜物である。
一体、宇宙とはどうしてそうなっているのか? 朝永振一郎博士とノーベル賞を分かち合ったリチャード・ファイマンは「誰も量子力学を理解できない(Nobody understands quantum mechanics)」と言った。・・・・不思議過ぎる!!!
(「量子力学入門」並木美喜雄:岩波新書、「量子力学のからくり」山田克哉:ブルーバックスを参考にさせていただきました)