12/ 2nd, 2009 | Author: Ken |
第三の男 The Third Man
“第三の男”あのチターのメロディーが……。荒廃した「維納(こう書きたいね)」ウィーンを舞台に米英仏ソの四カ国による恊働管理下。
廃墟、荒んだ人間、東欧諸国やハンガリーからの難民、心まで荒廃したブラックマーケットに暗躍する悪人。
建物に巨大な風船売りの影が伸びる、足元にじゃれつく猫、一瞬の光のなかにハリー・ライムの不適な顔、モノクロの光と影がこれほど効果的に捉えられた映像はちょっとない。それもそのはずカメラはあの「意志の勝利」や「民族の祭典」を撮ったレニ・リューヘンシュタールの恋人だったハンス・シュニーバーガーだ。またアリダ・ヴァリの顔のショットでは決して白い歯を見せない。いつも影なのだ。それが神秘的な美しさをより引き出している(お歯黒もその美の強調?)。そしてプラーター公園の大観覧車。
ハリーがうそぶく「ボルジア家30年の圧政はルネサンスを生んだ。スイス500年の平和は何を生んだ?鳩時計さ」(これは英国19世紀の画家ホイッスラーの言葉だそうだ)。地下水道の追跡、マンホールから指だけがもがく…。中央墓地、哀愁のチターが流れる、アリダ・ヴァリは待ち受ける男に一瞥もくれずに歩き去る…。アントン・カラスのチターが枯葉とともに … 忘れがたいシーンである。
名画中の名画だろう。グレアム・グリーンの原作では「彼女の手は彼の腕に通された」とあるが。映画の方がはるかに深い印象を残す。グリーンも「結果は彼リードの見事な勝ちだ」と認めている。1949年制作、監督キャロル・リード、音楽アントン・カラス。
※ダッフルコートにベレ。トレヴァー・ハワード(モントゴメリー将軍もこんな格好していた)も忘れ難い。