5/ 20th, 2014 | Author: Ken |
製図機
かって製図機と三角定規、面相筆はデザイナー必携の道具だった。多角形や円や線の分割など、定規とコンパス、そしてデバイダーで制作したものだ。製図機には英国式とドイツ式があり、英式はお国柄を表し真鍮製、ドイツ式は合理的なステンレスやクローム仕上げであった。ずっしりとした重量感、研ぎすまされた形態、これぞプロの道具というアナログの実在感があった。そしてとても高価だった。多角形の作図、平行線、黄金比やフィボナッチ数による螺旋など随分勉強させられたものだ。でも、どうしても描けないものもあった。正楕円は楕円定規が必要だったし、ギリシアの三大作図問題という定規とコンパスによって作図が可能か?というのもある。
1)与えられた円と等しい面積をもつ正方形を作ること。
2)与えられた立方体の体積の 2 倍に等しい体積をもつ立方体を作ること。
3)与えられた角を三等分すること これらは現在では作図不可能ということが証明されているのだ。
文字だってレタリングという製図機、定規、溝尺、面相筆で墨汁やポスターカラーで描いたものだ。懐かしいというより己の技を競ったのものである。……俺は1ミリ幅に線を烏口で10本も描けるなんてね。
90年の初頭だった。Macintosh Performaを手に入れたのだ。いまから思えばチャチなものだったが、それでもオオーッ!と歓声を上げた。そしてQuadraになり、Power Macになり、8500、9500、G3、G4、G5。とうとうOS 10.92 Mavericksだとさ。たった20年だよ。あの頃は俺も若かった? 確かに便利になったし、グラディエーションだってCGだって、何だって出来るのだが、手描きの緊張感や満足感、存在感が薄いのである。つまり軽いのである。だって、それを見るのはアナログである人間なんだから。そしてコンピュータのお陰で消えていった仕事も多い。まず、写真植字、製版レタッチ、街のDPE(現像・焼き付け・引き延ばし)、トレース、青焼き……。CADとDPTの時代になって、製図機も知らない人が多くなった。別にそれでいいんだ。製図機がPCのキーボードとマウスとモニターに変わっただけだ。と言いながら、一抹の寂しさを感じるのは歳のせいかな。