7/ 16th, 2014 | Author: Ken |
読了半世紀 …「月長石」。
嗚呼、疲れた。読み上げるのに半世紀もかかってしまった。今は昔、ミステリーなんぞに興味がわき読み始めたころ、名作解説書には必ず登場する名があった。ウィリアム・ウィルキー・コリンズ(William Wilkie Collins)の「月長石・The Moonstone」だ。T・S・エリオットが「最初の、最長の、最上の探偵小説にして最大にして最良の推理小説」と称え、ドロシー・L・セイヤーズが「史上屈指の探偵小説」と呼んだ。「クラシックで本格」というやつを、いつか読んでやろうと思ったのだが、ハードボイルドや短編ミステリー、SFもあり怪奇もの、冒険ものと面白そうなのが一杯あって、どうも手が着けられなかった。時は移り・・・・・友人のミステリー研究家で古書店の店主と話していると絶賛するではないか!「最後の200ページは残りページを惜しむくらい面白い!」。そうか、じゃ、東京に行くから車中で読んでみるか。創元推理文庫:中村能三/訳 その779頁というボリュームに威圧感を覚えながらページをひも解いた。やはり時代なんですね。少々かったるい。
それまでかってな想像で「印度の因習と呪いが込められた月長石を奪い合い….、そう「マルタの鷹」や丹下左膳の「こけ猿の壷」みたいに波瀾万丈の話と思いきや、静かなものなのである。1850年代のヴィクトリアン華やかなりし頃の上流階級のお話で、語りがすこぶる長い。疲れたら弁当を食べたりビールを飲んだり、他の本を読んだりしながら往復で読み上げた。やはり時代なんだ。アヘンチンキを飲んで再現したり、何派か知らないが教会主義者が出てきたり(S・ホームズのカーファックス姫の失踪にもありますね。また、どうも好きになれないねノブレス・オブリージュなんていう偽善が…、今でも時々いますよね。マジに戦争で将校の方が兵より死傷者が多かったなんて言う人が)、英帝国主義真っ盛りで世界中の植民地から富を搔っ攫ってきたバブル時代なんだ。日本では明治の中頃で列強を真似して敗戦へと続く…。
まあ、それなりに面白かった。特別のトリックがあるじゃなし、見事な推理があるじゃなし、読み終わって膝を叩く痛快感もないけれど、(少し前の時代には、SF、怪奇、ミステリー、推理、探偵、暗号、すべての大海である、あのE・A・ポーがいたのにね)・・・
名作というのはこんなもんなんだろうか。とにかく半世紀もかかって読み上げた。