8/ 30th, 2012 | Author: Ken |
零戦・大和に昂る。…いつか描きたかった。
戦後67年、太平洋戦争はもう歴史である。しかし「零戦」「大和」の人気は衰えない。ますます詳しく細かく図面やデータが揃い出版物も多い。零戦は「十二試艦上戦闘機計画」(昭和12年)に端を発し、昭和15年(皇紀2600年)に制式機となり、その下桁が「0」であるので「レイセン」と呼ばれた。開戦初期には大活躍をしたが後半には敵の新鋭機や戦争の実態の前に苦戦を続け特攻機となって散っていった….。大和も昭和12年に起工、開戦直後の1941年(昭和16年)に就役、世界最大の艦体、最強の主砲を備えたが、戦局に何ら貢献することもなく日本海軍の象徴として1945年4月7日に沈んだ。零戦も大和もその生涯のドラマ性、悲劇性故に日本人の魂を揺さぶるのだ。
僕も少年雑誌の巻頭見開きに興奮したものだ。圧倒的に押し寄せる戦後アメリカ文明の前に、江戸時代の名残を残す日本のショぼい文明、そうブルドーザーの前の鍬、ジープの前の大八車、B-29対竹槍と日本人が自らを揶揄していたのだ。そんな時代に負けたとはいえ「こんな凄い兵器」を持っていたという日本人の誇りのシンボルが「零戦・大和」だったのだ。小松崎茂のダイナミックな絵に「零戦」の爆音と機銃音、「大和」の海を圧する偉容、主砲の炸裂に興奮を覚えた。いつか僕も描いてみたい!授業中によくノートの端に描いたものだ。あれから長いようでほんの一時の刻が過ぎた….。今でも描いてみたいのだ。だから……
小松崎茂:こんな凄い絵は!と絶句したものだ。何てかっこいい!プラモデルの箱絵を見るだけで爆音が聞こえてくるようではありませんか!!! 上田毅八郎:艦船模型の箱絵は小松崎茂と違い「整然として美しい」のだ。
生頼 範義:中世洋画を彷彿させる重々しいリアリズム、ドラマ性、悲劇性に唸ってしまった。70年代だろうか戦国の英雄、秀吉や信長を点描(ひたすらペンのドットでリアルに肖像を描く、恐ろしいほど面倒で時間がかかるのだが、まるでモデルを目の前に置いたようにリアルなのだ。あの何万という墨の点、いまならピクセルと言うのだろうか)。そして「スターウォーズ」のポスター。アメリカ人よりアメリカ的な画風に喝采を叫んだ。
ロバート・T・マッコール:あの「2001年宇宙の旅」のポスターといえば2010年に90歳で亡くなったボブ・マッコールだ。宇宙ものが中心なのだが、1970年のハリウッド大作「トラ!トラ!トラ!」のポスターは彼が描いたものだ。確か週刊プレイボーイだったか「君が描こうとして描けなかった絵」とかのキャッチコピーだった。凄い!雲間から満月がのぞき荒波をかきわけ真珠湾に急ぐ機動部隊、特殊潜航艇を積んだ伊号潜水艦、中央は比叡か霧島か?遠くに飛竜?零戦は映画用に改造したT6・テキサンだから少し寸詰まりだけれど、この迫力、このダイナミズム!それにしてもこの映画は黒澤明監督に撮ってほしかった。その辺の事情は『黒澤明 VS.ハリウッド』( 田草川 弘・著):文藝春秋に詳しい。
こんな絵が描きたかったから、雑誌やプラモデルの箱、本の表紙なんか見つけると切り抜いてスクラップブックに貼って保存していたのだが、いつのまにか散逸してほとんど残っていない。でも忘れないよ。