7/ 21st, 2012 | Author: Ken |
21g? … 魂の重さの量り方
もうすぐお盆である。お盆には死者たちの霊魂が帰ってくると言われている。じゃ魂はどこにいるのだろう? この宇宙の時空の中を彷徨っているのだろうか? 魂とは観念である。抽象である。非物質的存在であり認識を超えた永遠のものであると…..。
生命や精神の原動力となり死ねば体内から消えると言われる。その「魂」の重さを量ろうとする人がいた。20世紀初頭、アメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルだ。彼は死に瀕した患者を量りに乗せ去り行く魂の重さを量ったのだ。彼は魂の存在を信じていた訳では無さそうだ。魂が物理的存在として実在するなら重さがあると考えたのだ。実験では約30グラム軽くなったと出たそうだ。
まてよ? 人が死ぬと熱は体温が拡散するから熱に変換されるわけがない。魂が分子であり原子から構成されている物体と仮定したら、その質量はどこに消えたのだ? 1gの質量は約 9×1013(90兆)ジュールのエネルギーに相当する。そうすると90兆ジュール×30のエネルギー….? そんな!! じゃ、質量とは何だ? ついこの間、素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」が見つかったというニュースが世界を駆け巡った。CERNのLHCの衝突実験で新たな粒子を発見、これがヒッグス粒子だというのだ。… 昨年にもニュートリノは光速より速いというニュースがあったが、観測間違いと否定された。今回のヒッグス粒子は本当なのだろうか?… 素人ながら興味津々だ。宇宙の謎が僕の世代に見つかるなんて!… 前にレオン・レーダーマンが書いた「神が作った究極の素粒子」という本を読んだことがある。彼がいう“神の素粒子”こと、ヒッグス粒子という仮説粒子の存在でである…。僕にはゲージ場やその理論はとても説明できないが….。閑話休題…「魂」なんてとても物理的実在じゃないけれど、それが身体の中にあることは実感している。会話でもしょっちゅう使う。「この音楽や絵には魂がある」「スピリットこそ人間の行動原理だ」「ブルースはソウルだ」なんてね。
人間には「生きる根源として魂の観念」が植え込まれている。たぶん脳が作り出した幻想なんだろうけれど…..。(一昔前に臨死体験がブームになり体外離脱なんて言葉が流行ったものだ。ウィリアム・ブレイクの絵を見ていると、画家は本当に見えていたのではないか?…… 幻視や幻聴が見え聞こえる人に対して僕たちは無力だ。否定・証明のしようがないからだ)
■「魂の重さの量り方」レン・フィッシャー/著 林 一/訳:新潮社 この本は「魂の量り方」だけを論じているのではなく、自然科学における「事実に対する信念の検証」といった啓蒙書である。ピーター・アトキンスの「ガリレオの指」もおすすめです。
■「神が作った究極の素粒子」レオン・レダーマン/著 高橋健次/訳:草思社….とても楽しみながら読めます。
■「21グラム」2003年アメリカ映画/アレハレド・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、ショーン・ペン主演:心臓移植を受けた男と妻、提供した家族、その男を事故で死なせた男と家族、その時間軸が交差し「人がいつか失う重さ」とは、何なのかを問う。題名の「21グラム」とは、医師ダンカン・マクドゥーガルが行った「魂の重さ」を計測しようとした実験に由来する。イニャリトゥ監督の映画は暗く重い。やりきれない。救いがない。ああ。