4/ 15th, 2010 | Author: Ken |
ボーイデアル…美しき理想。
1933年に創刊されたEsquire(エスクァイア)誌。「趣味がよく、スタイル感覚に優れ、そして優れた品質を尊重する男」というBeau Ideal(美しき理想)がドグマだった、と編集長アーノルド・ギングリッチが述べている。まあ、そのダンディなことといったら!「キリマンジャロの雪・1936」ヘミングウェイやフィツジェラルドが掲載され、ヴァーガスのピンナップ、そして何といってもルイス・フェローズが描くファッション。男が輝いていた時代だった。パーティからアウトドアライフまで、着こなしと洗練、豊かさに満ち溢れ、当時大活躍していたフレッド・アステアやボビー・ジョーンズの世界にタイムトリップしてしまう。60年代に初めて大判のエスクァイアを古本屋で見つけ感激した。あの天才アートディレクター、ジョージ・ロイスの素晴らしいとしか言いようのない表紙に眩惑されたのだ。そして中身の豊かさとカッコよさ、洋画と同じく文明の衝撃だった。
いつしかメンズ・ファッションの仕事をするようになって、サンフランシスコの古本屋で30年代のエスクァイアを見つけた。ナックナンバーすべてを揃えて欲しいとその場で注文した。….400冊余が届いた。ページを繰る度に正直唸ってしまった。「ここにすべてがあるじゃないか!」「30年代に完成していたんだ!これがベーシックなんだ!」…。大事にファイリングしていたのだが、あの阪神大震災で消えてしまった。落胆この上ないのだが、幸いにも表紙、フェローズのイラスト、素敵な広告や特集記事はポジフィルムに納めてあった(いまならPCにデータ保存できたのにクヤシイね)。いつしか小型版になり日本版も出版されたが2000年を境に買う事も止めてしまった。仕事もパソコンになり、情報もインターネット中心になったからだろう。でも、ずっしりと手応えのある大判の重みはLPジャケットを手にしたときと同じく忘れ難い。