8/ 24th, 2011 | Author: Ken |
Box Art「太っちょ」
航空機の設計には空気力学上、合理的でスマートな形状になるはずなのに、そこには設計者のコンセプトやデザイン性、美意識といったものが現れている。ここに登場するのは短躯、寸詰まり、太っちょのユニークな機体たちだ。それを醜いと感じるか美しいと見えるかは見るものの感性だろう。
まず、空飛ぶビア樽、ジービー・レーサーだ。1932 年の「トンプソン・トロフィー・レース」に出場したグランビル兄弟の設計だ。当時の大馬力のエンジン、ワスプを搭載し、強引に引っ張る設計思想で異形の姿となった。異様に太い胴体、短主翼、垂直尾翼なんて付け足しみたいだ。そのR-1は東京初空襲で有名なジミー・ドゥーリットルが操縦し優勝。飛行性能はスピードのみ、恐ろしく不安定だったそうだ。だが473.82km/hの陸上機世界速度記録も樹立した。ユーモラスにも感じる飛行ぶりは強烈な印象があり何か心に残るのだ。R-2レプリカ機の飛行ぶりはYoutubeで見る事ができる。
これも相当短躯な猪武者である。ジービーの影響があるのではないか?旧ソ連のポリカルポフI-16(И-16 イー・シヂスャート)は、ソヴィエト連邦・ポリカルポフ設計局開発の戦闘機だ。スペイン内戦から第二次大戦初期にかけて労農赤軍の主力戦闘機だった。世界最初の引き込み脚、カウリング・シャッター、短排気管、防弾、重武装、時代に先駆けた革新機構だ。配備当時世界最速を誇ったが各国の高性能の機体が現れ陳腐化していった。1939年のノモンハンでは我が97式戦と対決、初期には抜群の運動性を持つ97式戦に格闘戦に持ち込まれ惨敗したが、後半には一撃離脱戦に徹し日本空軍に苦戦を強いたという。
お次はブリュースターF2Aバッファロー、アメリカ海軍戦闘機だ。これも空飛ぶビア樽と呼ばれた。英国に輸出されメッサーシュミットBf109と対決したが歯が立たず、極東の日本軍相手なら勝つだろうとマレーやシンガポールに配備されたが、1式戦「隼」や海軍の「零戦」には手もなく捻られた。映画「加藤隼線戦闘隊」には鹵獲したバッファローと隼の実写空中戦シーンがある。
また黒江保彦がシンガポールで2式戦「鍾馗」の圧倒的な性能差でバッファローに勝利する様が活き活きと描かれている手記もある。この愛嬌さえ感じられる肥満系の猛禽たち。どうも日本人の繊細な神経ではとてもデザインできない太い線がある。その「太っちょ」の形態故、ボックスアートの絵になるだろうナ、と長年思い続けてきた。….スリムな美人も素敵だけれど、丸ぽちゃで豊満過ぎの彼女も魅力的だね。