11/ 7th, 2009 | Author: Ken |
雑誌が先生だった。
デザインという言葉を知ったのは何時頃だったのだろう? それまでは図案と言っていた。
インダストリアル・デザインの草分けレイモンド・ローウィがデザインした煙草ピースのモダンさと、そのデザイン料に子供心に驚いたものだ。そういえば進駐軍が吹かしていたラッキーストライクも彼のデザインだ。デザインなど皆無の世界に育った者として、街の古本屋で見かける、リーダーズダイジェスト、ライフ、ポスト、マッコール、セブンティーン、などの洋雑誌に輝くイラスト、写真、広告はきらびやかで豪奢で、夢とモノと豊かさに溢れていた。
ダッグウッドが夜中にサンドウィッチをパクつき、毎朝ボウタイを締めバスを追いかける。映画では冷蔵庫がありシャワーがあり、ポンティアックやスチュードベーカーとジャズが流れていた。いつしか図案?を学ぶようになり、古本屋漁りを始めた。
その中でも一際輝いていたのが大判雑誌「エスクワイアー」だ。そのカッコ良さといったら、もう! 発想が根本的に違うんだ。映像が全てを理解さすんだ。皮肉とユーモアとウィット。デザインとはこのことなんだ!と眼から鱗だったね。
女性が泡を顔に塗りたくってヒゲを剃っている。「アメリカ女性の男性化」だって…。アンディ・ウォホールがキャンベルの缶に溺れている。J・F・ケネディ、R・ケネディ、M・L・キング牧師の三人が墓地に立っている…。またカシアス・クレイ(モハメッド・アリ)の身体に矢が刺さっている。聖セバスチャンの殉教だね(三島由紀夫もやっていたネ)。…徴兵を拒否したアリは殉教者だと。インテリジェンスが違うんだ。大胆なんだ。大人のデザインなんだ。このアートディレクターは誰なんだ? それがジョージ・ロイスだ。
彼の名を長く忘れていたのだが、トミー・ヒルフィガーがデビューした時のエスクワイアー誌の広告。これが何とも…。見開き6ページなんだが、最初の見開きはネイビーブルーにブルックスブラザーズのロゴ、Biforだって。次はグレイピンクにラルフ・ローレンのロゴ、そして、トミーのマークでAfter…。正直憎たらしいと思ったよ。
時は過ぎ2007年に見つけたね。ICONIC AMERIKAアメリカの象徴という写真集。ぺージを開けば、眼鏡をかけて3D映画魅入る観客のあの有名な写真、隣のページはハート型サングラスのロリータ。全ページこんな展開。聖と俗、古いと新しい、これがアメリカ文化だ!ダイナミックで繊細で、ジョークとユーモアとシニカルな眼。ジョージ・ロイス健在なり!だ。一見、無造作に思えるレイアウト。ところが計算されつさくれているんだ。そして直感に訴える。心憎いとはこのことだね。偉大なる怪人、奇才、天才。
どこかの文化人面しているデザイナーとは大違いだね。ジョージ・ロイス先生ありがとう。