6/ 25th, 2011 | Author: Ken |
猫ちゃん、お元気?
「死んで冷たくなった猫にヒーリングしたら、生き返った」。友人からこんなメールを戴いた。どんな霊能者・超能力者か知らないけれど、治療師(ヒーラー)の会合に行ったそうだ。そして健康に凄く効果があるんだそうだ。…..フーン、死んだ猫がねー。
マ、信じる人は信じたらいいんだ。そこで「シュレーディンガーの猫」を思い出した。これは量子論の例え話なんだが、分かったようで分からない不思議な話なんだ。ぼくは高等数学が出来ないが、量子の振る舞いについての概念だけでも知りたいと思う。
●ここに箱がある。その箱の中に猫を入れる、中にはアルファ崩壊する放射性物質を置いて、その一つが崩壊したら毒ガスが出る。一定時間経過後、あなたは箱を開けて見る、果たして猫は生きているか死んでいるか?
この系において、猫の生死はアルファ粒子が出たかどうかのみにより決定すると仮定される。原子核がいつ崩壊するかは確率的にしかわからない。崩壊したかどうかは観測するまでは、原子核は崩壊した状態と崩壊しない状態が共存している。と解釈される。
このアルファ粒子を出すかどうかはシュレーディンガー方程式によって確率のみが計算でき、量子力学における確率解釈によれば、現象を観測するまでは原子核が、ひとつ以上崩壊した状態と原子核が全く崩壊していない状態の重ね合わせ状態で存在する。つまり猫が生きている状態と死んでいる状態が共存していることになる。
●コペンハーゲン派の解釈 で言うと観測者が箱を開けて観測を行った瞬間、その猫の状態群が一つの状態に収束する(波動関数の収縮)。つまり重なりあった波は、マクロな物体と相互作用すると収縮をおこす。….でもなぜ収縮するの、その訳を説明して?
●エヴェレット解釈(多世界解釈)箱の中に存在する猫の重ね合せ状態は、観測を行う前も後も変わらない。観測によって、生きている猫を観測した観測者と死んでいる猫を観測した観測者の重ね合わせ状態に分岐する。分岐した後には生きている猫を観測した観測者、または死んでいる猫を観測した観測者の一方しか残らないため、矛盾は存在しない。
…いまだにその論争は続いている。ちょっとオチョクリたくなった。凄い!ヒーリング解釈という新しい力学が出来たんだ!ノーベル賞ものだ! でも、このブログもPCもネットも量子論を利用してんだよね。もうすぐ量子コンピュータも出来るそうだ。
…..私たちの宇宙とはこんな構造が背景にあるのだ。分かった?….でも?
6/ 18th, 2011 | Author: Ken |
意識のホログラフィー
かって60年代後半から80年代かけてニューエイジ・サイエンス運動というのが流行した。A・ケストラー「ホロン革命」、K・ウイルバー「意識のスペクトル」、E・ヤンツ「自己組織化する宇宙」、F・カプラ「タオ自然学」……。ガイヤ、トランスパーソナル、パラダイム、散逸構造 …. ぼくも夢中になって読みあさったのだが「?」というのも沢山あった。
ぼくはどうも宗教色や超常現象期待派、心理学、東洋的瞑想、アカーシャ・フィールド、悟り、ゼロポイント・エネルギー、ホメオパシー、100匹目の猿などの?話になると鼻白んでしまうのだ。最初から疑似科学に浸った人たちのはいいのだ。だって笑ってしまえるからね。ところが著名人でこういう人たちは始末におえないものだね。心理学とか脳科学のように掴みどころのない分野に特に多いのだ。TVや新書なんかにタレント学者がよく出てくるでしょう。同じネタをホメオパシーみたいに薄めて々….まさに「柳の下に100匹目の猿」だね。
昔ファンだったあの「アウトサイダー」のコリン・ウィルソンだってあっちの人になっちゃった。どっかの国では「知の巨人?」だってサ。フーン!?
この辺の曖昧なグレイゾーンでスタンスがはっきり変わるのですね。神秘主義者とあくまで科学的に解明しようとする人たちと…。ぼくは神秘主義は興味津々、とっても不思議な空想に入れるから面白いけれどきっちりと一線を引きたいね。まあご勝手にと…。「心脳問題」「意識とは?」うーん!?分からん。
……ところでホログラムって不思議ですよね。ホログラフィーは物体から発せられた情報を含む物体光と参照光を感光媒体上で重なるように照射する。2つの光が干渉しあい干渉縞を生る。この干渉縞の明暗パターンが縞模様に感光される。これがホログラムで物体光に含まれた情報を記憶しいてるのだ。ホログラムの縞模様は非常に細く1000 分の1ミリ以下だ。そこに参照光を照射するとホログラムによって光が回折されて、元の物体光と等価な光が発生、 回折光は元の物体光の情報をすべて含み、立体像表示がされるのだ。そしてだよ、その縞模様の一部分だけを切り取って再生さすと、何と!画像は不鮮明にはなるが全体が投影されるのだ。部分に全体が含まれる、ン。ホロンの概念じゃないか。
そういえばぼくの身体の60兆個の細胞ね。 その一つづつに同じDNA情報が含まれているなんて….。そしてダ!ぼくたちの脳はこのホログラムの形で記憶という過去の事象が保存されているのではないか?….という仮設がある。
意識とはこの隠された「本質」のホログラムの一部であり本質とのシンパシーで生まれるのだと….。確かに意識とは無意識に浮かぶ一部でしかないし、D・ボームは「開示された秩序」のエネルギー(情報)の奥に潜む、この「織り込まれた秩序」のエネルギーこそ、現実(リアリティ)の本質であると主張する。……プラトン主義者だね。そしてだ、量子力学的思考によると、存在の不確定性である。あらゆる実体は客観的に独立して存在しているのではなく非実体的な無数の波動によって作られている。とこうなるのだ。
そして思考を拡大すると宇宙は巨大なホログラムではないか?そのホログラムに、宇宙の全時空に関する情報がすべて含まれている。ビッグバン、いやそれ以前の量子的ゆらぎからまりから遥かな未来までのすべての情報だ。それが、脳を含めた宇宙のあらゆる部分にあらかじめ織り込まれているのだと。ボームによれば、エネルギー(情報)と意識はイコールなのだ。意識はエネルギー(情報)になって現れる。大脳生理学者であるカール・プリブラムによると「われわれの脳は実存を作り出すが、それは別の次元時間・空間を超越たパターン化された第一次的な実在領界からの、振動数を解釈することによってなされる。脳は、ホログラフィック(完全写像法的)な宇宙を解釈するホログラム(完全写像記録)である」と。ケン・ウイルバーも「脳における情報はホログラムとして分布しているといえる」とね。まあクオリア問題もホログラム投射なのだろうか。
……..でもなぜリンゴは赤いんだ?
5/ 14th, 2011 | Author: Ken |
惑星メスクリン
惑星メスクリン、そこは異常な世界である。重さは地球の5000倍、木星の16倍の質量、赤道部分で直径88000キロメートル、自転速度は軸に対して毎分20度、1日は17分45秒で1年は1800日である。自転軸は軌道面に対してして28度傾き、惑星は押しつぶしたような楕円形であり途轍もなく重い星なのだ。高速回転のため赤道での重力は遠心力により3G、極での重力がなんと670G、並の地球人なら赤道で体重200kg、極地では40トンを超える。水素の大気とメタンの海をもつマイナス170度の惑星である。メスクリン人は体長45cmぐらいでムカデに似た2対の鋏と18対の脚を持つ好奇心旺盛な知的生物である。
…..地球人の無人探査船が極地付近に着陸し行方不明となった。貴重な機材とデータを得るために調査隊は、メスクリン人の貿易船ブリー号の船長バーレナンと契約し彼らの冒険がはじまった…..。
ハードSFのクラシックとも言える作品だ。作者ハル・クレメントは、まず惑星の状況設定を緻密な計算に基づいて行い、生態系、惑星系そのものまでデザインしていく。A・C・クラークに代表される科学知識に裏付けされ、宇宙を世界を、科学的に認識することによって問題を解決に導くお話なのだ。だから宇宙を舞台にした単なる人間恋愛冒険物のスペースオペラとは一線を画すのだ。
…..そうだ、SFのことを空想科学小説と言ったね。まさにその通りなのだ。面白いですよ。
「MISSION OF GRAVITY・重力の使命」1954:ハル・クレメント/浅倉久志 訳 ハヤカワ文庫
5/ 8th, 2011 | Author: Ken |
1個の光子が宇宙全体に?… Entanglement
光子は波動か粒子か? 量子力学は頭を強烈に揺さぶる・・・そんな馬鹿な! いや今までの常識や概念が全く通用しないのだ。
まず有名な二重スリットだ。光の「波動・粒子の二重性」の実験だ。有名なそのお話は調べていただくとして、ここは一挙に壮大な選択遅延実験だ。宇宙の彼方数十億光年のクエーサーから発した光パルスが二つの分波 ψaと ψb に分かれ、途中で非常に重い銀河による重力レンズで曲げられ地球に到達。地球上では観測者が自分の意志で「粒子像」または「波動像」を見るための装置を用意して持っている。と….。(まあ、直進してきた光と重力レンズで数万光年曲げられた光との時間差を光ファイバーか何かで保存させ一致させなければならないが)。そして検出器の前にハーフミラーのビームスプリッターを入れるかどうかを、観測者である人間が選択するのである。「どちらかの経路を通る」ことを観測するのか「両方の経路を通る」ことを観測するのかを決める。さあ、ビームスプリッターを入れてみよう。さてどうなるか。
「入れない」=「粒子像」が現れ、「入れる」=「波動像」が現れる。ここまではいいんだ。
…しかし、光がクエーサーを出たのは、まだ地球さえ形成されていない過去であり、人類発生以前の遠い々昔だろう。じゃ、数十億年後に検出器が作られ経路に設置されスイッチを入れると、これら一連の操作のために光は干渉パターンを現したり粒子として現れたりする。粒子ならば一方の経路を通ったように振る舞い、干渉パターンなら両方の経路を通ってきたのだ。おいおい、現在の今検出装置を置いんだよ。それが何十億年も前の光子の振る舞いに影響を与えるのだろうか?過去をいま変えられるのか?光は生まれた時に「粒子」か「波動」か決めていたのかい?そんなことはない!過去は終わっているのだ。それとも….。
ウーン、クエーサーから出た1個の光子がa経路とb経路に分かれ、銀河の重力レンズによって曲げられ数万光年も離れている。それだのに両方が絡み合っているという。一方を観測すると瞬時にもう一方も変わる? そんな…..分離不可能であり、光より速く信号が伝わる?そして絡みあっているなら1個の光子は宇宙全体に広がっているというの? そんな!!!絶句!!!。
J・ホイーラー宇宙規模思考実験は壮大すぎてまだ実証されていないが、実験室でアラン・アスペがベルの不等式を確かめる実験を行い確認されている。そう、今まで量子力学に反する実験結果は何一つ観測されていない。宇宙はそうなっているのだ!
リチャード・ファインマンは言った。Nobody understands quantum mechanics「誰も量子力学を理解できない」。「いかなる基本現象も、記録(観測)されるまでは現象でない」。じゃ、ぼくが月を見るまで月は存在しないのか?
これについてはまた。……..
2/ 21st, 2011 | Author: Ken |
地球の長い午後….Sense of Wonder
地球の長い午後
太陽は老齢期を迎え赤色巨星になりつつあった。地球の自転は停止し片面は灼熱の温室、片面は凍てついた永遠の夜の世界だ。動物はほんの僅かな種を残し、一本のベンガルボダイジュが大陸を席巻し覆い尽くしていた。動物を模倣した奇怪で異形の食肉植物たちが生存競争の死闘を繰り返す悪夢のような世界である。おぞましくも顎と歯ばかりのヒカゲノワナ、無数の足で這い回るヒルカズラ、太陽光線を集めレンズ武器を使うヒツボ、トビエイ、ハネンボウ、ダンマリ、土吸鳥、フウセンイブクロ…。知恵さえ無い食肉植物が凶悪で熾烈な闘争を繰り広げているのだ。なかでも圧巻はさしわたり1哩に達する植物蜘蛛ツナワタリ、月に糸を張り渡し行き来しているのだ。
….人類は細々と生き長らえる絶滅寸前の生物で、緑色と化した肌、身長は五分の一ほどに縮み、知性は減退している。この世界で部族を追われた主人公、少年グレンの彷徨と冒険。そのグレンの頭に知能を有するキノコ、アミガサタケが取り憑く。寄生し菌糸を延ばし人間の脳と一体になりグレンをコントロールするのだ。かつての人類の知恵も文明もアミガサタケが人間の脳に侵入し進化を授けたものだという。同行するのはポイリー。グレンと同じ部族の少女だったが無惨な死を遂げる。そしてヤトマーという牧人族の女。
また黒い口というセイレーンのように抗う事のできない歌で食物を引き寄せる底知らぬ口、巨大な樹木から尻尾で繋がれた魚取りポンポン族。彼らを乗せた船は昼と夜の境界である氷の小島に流れ着くがアシタカという移動植物の撒種行動を利用し大陸に戻る。この黄昏地帯でヤトマーはグレンの仔を産む。そしてソーダル・イー/ウミツキと呼ばれる魚かイルカのような動物は、生気を失った人間の従者に自身を担が運ばせている。それは地球終焉の予言を広めるためだ。策略によりアミガサタケはグレンの頭から取り去られウミツキの頭に被せられる。
… 地球の生命は最終期を迎え生命は胞子に凝縮された。それは竜巻か柱のように吹き上がり、銀河流の奔流に乗り新たな生命の地へ向うのだ。この地球もかってカンブリア期に銀河流により撒種されたものだ…。
おどろおどろしくも驚異に満ちた想像力、ブライアン・オールディスのイマジネーションは留まるところを知らない。ファンタスティックで奇怪な妄想から生まれたような陰残で異様エネルギーに満ちた生命体。またイマジネーションは「美」でもあるのだ。SFとは驚きの絵巻物であり読む者に映像を喚起させるのだ。ぼくの勝手な好みだが「面白さの三大SF」を挙げよ!と言われると躊躇無く「重力の使命」ハル・クレメント「宇宙船ビーグル号の冒険」A.E.ヴァン・ヴォクトー、そして「地球の長い午後」と答える。こんな面白いSFはない。まさにセンス・オブ・ワンダーなのだ。
●「地球の長い午後・ Hothouse」「The Long Afternoon of Earth」(米):1962年
Brian W. Aldiss・ブライアン・オールディス 著 伊藤典夫 訳/ハヤカワ文庫
2/ 10th, 2011 | Author: Ken |
海底二万リーグ。
「海底2万リーグ」(1869・明治2年/日本紹介明治11年)ジュール・ベルヌ。….子供の頃から何回読み返したことだろう。深海という神秘の世界で冒険につぐ冒険…。時は1866年、日本では幕末の動乱、列強による植民地支配、近代科学と工業化の波浪が押し寄せ、砲艦が世界の政治を牛耳っていた。その時代背景を映したハードSFだ。潜水艦ノーチラス号。全長70m、全幅8m、排水量1500t、艦体は複隔式、外鋼板は6.2cmの鋲打ち構造で394t、機関はナトリュムより得る電気力、推進機は1軸、スクリュー直径6m、水中最高速力40ノット以上、潜水深度1.5万m、後続力無限、武器は艦首の衝角….。と現代の原子力潜水艦も真っ青だ。このスーパー潜水艦に男の子が夢中にならないわけがない。
追跡、遭遇、捕虜、トレス海峡での座礁と蛮人、海底狩猟、スエズトンネル、海底火山、アトランティスの廃墟、南極点、大タコとの死闘、圧政者への復讐とネモ艦長の苦悩、殺伐、そしてメイルストロムへ……。
1954年にディズニーの映画が封切られた。ぼくはほんの子どもだったから、兄に頼み込んで遠い町まで連れていってもらった。めくるめくと言うか恍惚となりましたね。ぼくは映像に衝撃を受けたのだ。燐光を発して迫る怪物のような潜水艦、海底洞窟のシャコガイから巨大真珠が、乗組員の海底での葬送シーン、蛮人の襲撃には艦体に電気を流し、大イカとの死闘、窓はカメラの絞りのように開閉し、潜水器具も大時代がかっている。おまけに艦長が沈痛な顔でオルガンを演奏するのはバッハのトッカータとフーガだ……。
ノーチラス号も涙滴型のスマートなのを想像していたのだが…….何とも古めかしい鋼鉄の凄みなのだ。大人になって分かった。そうヴィクトリアン的美意識でデザインし、鎧のような艦体、インテリアも大時代そのもの。….ウーン、ハリウッドの映画つくりに感心しますね。監督はリチャード・フライシャー、ネモ艦長にはジェームス・メイスン、銛打ちネッドはなんとカーク・ダグラスだ。
さてノーチラス号は実現できたのだろうか?
●1900年、「海島冐險奇譚 海底軍艦」日本SFの草分け押川春浪作。1963年「海底軍艦」東宝:「轟天号」艦首の巨大なドリルが…。
●1908年、英国最新鋭機密潜水艦ブルースパーティントンの設計書紛失事件。シャーロック・ホームズが解決。原作コナン・ドイル。
●1940年、日本の試験艦第71号艦は1940年に21ノットを達成、その姿は驚くほど近代的だ。甲標的(特殊潜航艇)は24kt。
●1945年、終戦間近に伊号201潜水艦水中高速艦も作られ速力19ノットを記録。同じ頃ドイツでも革新的な UボートXXI型が作られ、大量の二次電池を積んだのでエレクトリックボートと呼ばれた。水中17.5ktだった。他にもワルタータービンの試作艦も作られた。魚雷では旧海軍の酸素魚雷が60ktを達成、現在ではスーパーキャビテーションと呼ばれる薄い気泡を発生させロケットモーターで200ktに達するルシクヴァルという魚雷もある。
●1953年、アメリカは戦後実験艦アルバコアで33ktを記録。そして1954年には世界初の原子力潜水艦ノーチラスの建造、命名は海底2万リーグへのオマージュである。1958年には潜航状態で北極点を通過。
●1971年、旧ソ連アルファ型原子力潜水艦705型、43kt。…..それからはもうトライデントミサイル、巡行ミサイル、タイフーン級だの夢も希望もない殺伐機械になってしまった。ひとたび発射すれば、それは人類と地球、その歴史を破壊する。愚行の極みである。
ディーゼルエンジンと電池の通常動力潜水艦も造り続けられ日本も現在16隻保有、機密だが超張力鋼の耐圧殻、動力もスターリングエンジン、燃料電池も研究(実用化)しているようだ。水中速力も潜航深度も機密だが、後続力以外は原潜に匹敵するらしい。
● 安全潜水深度は各国とも機密だがNS80、NS120、HY130という高張力鋼 耐圧殻を備えている。まあ400〜500mなのだろう。
単に潜るだけの潜水船を対象とすると、世界最深の潜水記録トリエステ号がマリアナ海溝で記録した11,000mが最深記録だそうだ。
● ノーチラス、日本ではオウムガイ、英名はノーチラス(Nautilus)で、ギリシャ語の水夫に由来するという。ガスの詰まった殻内部の容積を調節して浮き沈みする仕組みは進化の妙である。その断面の美しいカーブときたら、時々どこかの応接間なんかで….。
1/ 30th, 2011 | Author: Ken |
怪物20面体
怪人20面相ならぬ20面体。何とインフルエンザウイルスも20面体だ。ウイルスとは生物か無生物か?他の生物の細胞を利用して、自己複製させる微小な構造体でタンパク質の殻と内部に詰め込まれた核酸からなる、と。生物学上は非生物とされているが40億年の進化の歴史がこいつにもあるはずだ。……四分の一世紀ぶりにインフルエンザで寝込んだ。いまだに頭が時差ボケ状態が続く。普段から風邪?
そんなもんWill Powerだ、意思の問題だと豪語していたのだが慎んで撤回し謙虚に謝ります。ゴメンナサイ。
人間が罹患するということはインフルエンザも人間とともに進化してきたのか?アウストラピテクスも罹ったのか?ネアンデルタール人も寝込んだのだろうか。特に1918年、第一次世界大戦中に発生したスペイン風邪は、戦争以上の犠牲者を出した。世界で約四千万人の死者ともいうし、日本でも約38万人といわれている。パンデミック(Pandemic:伝染病の大流行)だ。そういえば親父が生前、スペイン風邪は酷かった。みんなバタバタ倒れたとよく話していた。ふーん、インフルエンザはあまりにも日常茶飯事すぎて病気の内にもはいらないくらいだと思ってしまうが、ところがどうして毎年一番多くの人間を殺しているウイルスなのである。現在インフルエンザは、A型、B型、C型や、H1N1とかH3N2とか、ややこしいが、スペイン風邪は鳥インフルエンザに由来し、ヒトと鳥の双方に感染する豚を媒介として、その体内の中で鳥とヒトのインフルエンザウイルスが、遺伝子間の組替えを起こして、種の壁を越え、殺人ウイルスとして変化するのだそうだ。
●「4千万人を殺した戦慄のインフルエンザを追う」ピート・デイヴィス著、高橋健次/訳:文春文庫を読んだ。スペイン風邪のウイルスを見つけようと北極海に浮かぶスバールバール諸島やアラスカで氷ついた遺体を発掘して調べるが失敗。
ところが米軍理学研究所(AFIP)にホルマリン漬で保存されていた検体からH1N1のウイルスであったことを突き止める。そのノンフィクションでなかなか興味深かった。ウイルスという奇妙な奴!そこで奇怪なウイルスT4ファージという奴が登場。まるでSF映画の未来戦闘マシンみたいだ。進化の妙というか自然がこんなものを作りだすなんて!こいつはは構造的にきわめて安定で、溶液中で何年も感染機能を保持したまま過ごし、いったん宿主大腸菌に吸着すると100 %に近い効率で一連の過程を経て感染するそうだ。
まるでだれかがデザインしたみたいだ。いま世界中で開発しているロボット兵器もこんなやつが出てくるんじゃないか。そういえば「ミクロの決死園」(1966)という映画があった。あれから約半世紀、ナノマシーンも登場し日々進歩している。これも恐いね。バクテリアみたいに自己増殖するナノマシンができたらどうなるのだ。もしそれが、自己複製時のプログラム・エラー(突然変異)などにより暴走したら増殖が止まらなくなり指数関数的に増えて行く。数時間のうちに地球全体がナノマシンの塊になる。
ああ、考えただけで気分が悪くなる。小松左京の短編「ウインク」みたいだ。これは相当に気色悪い怖い話だよ。読んでごらん….。
1/ 27th, 2011 | Author: Ken |
常識を疑え?
よく大空を自由自在に飛び回る夢を見るという人が多いが、残念ながらぼくは一度も無い。だから飛行機から見る風景や地表は面白い。
ふーん、普段はあんな二次元を這い回っているんだ。いま飛行中は三次元だ。….空間に様々な図形を想像して3D画像を回してみる。
まず正三角錐、正6面体のキューブ、ピラミッド…。正三角錐は四面体(図1)だ。それをを二つくっつけると(図2)……4+4=8 2面を共有しているから8から2を引いて6面体。次に正三角錐にピラミッドの五面体(図3)をくっつける形を想像してみた。4+5=9 9から共有している2を引いて7面体。アレッ?何か変だ。計算では間違いなく7面だのに、頭のどこかが警告を発している。直感というやつだ。何かおかしいよ。なぜなのだ?こんなこと気にし出したらどしようもない。早速ノートに展開図を描いてみる。どうも分からん、ノートを破って模型を作ってみたのだが機上では作図がダルいしどうも…。こんなことを考えているともう着陸だ。
出張から帰ると早速PCで作図してケント紙の模型を作ってみた。4+5=9 9−2=7だろう。 出来上がったのを見るとトンでもない!5面体(図4)だ。常識って当てにならないものだ。実験すればすぐに分かる事が計算や想像では。その間違っていること自体が分からない。そういえば思い出すね。昔学校でパッケージの課題だった。みんな四角形の形を考えるが、ぼくはひねくれ者だから飴ん棒みたいなねじれた図形を考えた。作図して組み立てるのだがどうも上手くいかない。結局諦めてしまった。ところがベルリン空港にはそんなビルができたそうだ。ネットで検索してみて。変な形でしょう。
…….閑話休題…..そこで少し多面体のお勉強をしてみた。
正多面体 (regular polyhedron)、とは、すべての面が同一の正多角形で構成され、かつすべての頂点において接する面の数が等しい凸多面体のことであり、そしてこの僕たちの3次元宇宙には正多面体には正4、6、8,12,20面体の五種類しかない。なぜ5種類しかないの?
三次元空間の中に一つの頂点を取り、その周りに取ることが可能な正多角形に関する制限から、正多面体が先に示したことにより五種類のみである。それはオイラーの多面体公式から証明できる。とな …….. ぼくの数学知識ではオイラーの公式なんてどだい無理。
不思議だね。アジアカップを見ながら考えた。サッカーボールはどうだ?…五角形12枚、六角形20枚の切頂二十面体で作った球形である。なんと!ウィルスも二十面体だ。どうしてそうなるのだ?….最近インフルエンザに罹り寝込んでしまった。まだ後遺症が残っている。何か頭がボーとしている(生まれつきだろうが)。
ウィルスめ!おまえは物質か生物か?…宇宙、空間、進化、認識….不思議だね。
1/ 13th, 2011 | Author: Ken |
百億の昼と千億の夜
寄せてはかえし寄せてはかえし かえしては寄せる波の音は何億年ものほとんど永劫にちかいむかしからこの世界をどよもしていた…。
時というどうしようもない存在。それがあらゆるもの宇宙さえもすり減らし崩壊させてゆく。絶頂を極めた科学文明も宇宙都市も星間技術もあまりにも儚いものであった。ある種族はおのれを一片のデータとして乗り越えようとした(人を、DNAを、脳を、1000億のニューロンを、記憶を、それらをスキャニングしシュミレートすると10の17乗桁の二進法メモリーを必要とするというが……)。
デジタルの夢? これも生物か? これが生きていると言えるのか? 幸せなのか? 人間なのか? また仏教でいう三千大千世界、弥勒は56億7000万年後この世に下生し衆生をことごとく救済すると言うのだが….。その時は山や谷もなく鏡のように平坦であるという。これはエントロピーの無限の増大、すなわち宇宙の熱的死なのか。…..そして無窮の空間も絶対ではあり得ない。いや宇宙は永遠に生滅を繰り返し、それを司るが『シ』であると。滅ぼすもの『シ』と抗う「阿修羅王」。絶望という言葉さえ虚しく響く終わりの無い戦いに挑み続けるのだ。….
一切は流転し縁起即ち相対的関係の変化だけが存在を決定させる。固定的実体は無く変転そのものが実体であり相なのだ。
自我即空、色即是空なのだ。…おのれを空しゅうするところに思惟はあっても感覚はない、感覚のないところに認識はない。「だが解らぬ、すでに肉体に帰着するはなく、しかもなお眼前の非情は何ぞ!」。
….あの天平時代に名もなき仏師が作った興福寺の阿修羅像、少年を思わせる顔貌、その憂いをおびた眉、彼の眼は何を見つめているのだろうか。永劫の時の流れの向こうに存在するかもしれない何かのおぼろげな姿を見つめているのだろうか…….。
……『シ』はどこにあるのか、真の超越にいたる道はいったいどこにあるのか。とつぜんはげしい喪失感があしゅらおうをおそった。
進むもしりぞくもこれから先は一人だった。すでに還る道もなくあらたな百億の千億の月日があしゅらおうの前にあるだけだった。
●「百億の昼と千億の夜」光瀬龍の描く宇宙叙事詩は壮大だ。漠々渺々の時空を硬質の文体が構築していく。阿修羅王、悉達多太子、弥勒、ナザレのイエス、そしてプラトン(おりおなえ)が繰り広げる世界観は、東洋哲学的でありながら、世の東西を越え何かジョン・ミルトンの「失楽園」を彷彿させる。神々の超次元宇宙を統治するする創造神ヤハウェに反逆するルシファー。しかし反乱軍は敗れルシファーは宇宙の果ての星たちの墓場(光さえ失われたというからブラックホールか?)に堕される。漆黒の闇を漂いながら新たな叛乱を目論むのだ。そしてルシファーの人間に対する嫉妬、謀略により人間は楽園追放に至る。しかし人間はその罪を甘受し楽園を去る。
….それ以来、知恵、知識を持った人間、ここ百年足らずの間にも、おのれすら、人類すら絶滅させれる核兵器を作り上げた。同類への不信のために?おのれの過信のために?知恵は知識のなかに埋没し、絶対悪である核兵器すら誇示しているのだ。…..愚かさの極みである。
12/ 10th, 2010 | Author: Ken |
ソラリス、至高のSF。
真紅と激青の光を放つ二つの太陽、その連星に惑星ソラリスがある。二重星の複雑な重力による不安定なはずの惑星軌道が何故か安定しているのだ。どうやらソラリスの海は一つの生命体であり高度の知性を有しているらしい。交互に訪れる赤い日と青く鮮烈な夜明け。菫色の大気、海からフレアのように吹き上がる想像を絶する巨大で不可解なオブジェ、海が擬態形成を行い実態化させているのだ。
いったい何が目的か、果たして意思があるのだろうか。何十年にも亘る観察も様々な仮説も何ら答えを得られない。ソラリスの知性とは何なのか?未知の生命とのファースト・コンタクトを描いているのだが、人間という基準尺度からは理解の片鱗さえ窺えない隔絶した生命体である。プラズマ状の“海”はひたすら変貌し人間を嘲笑するかのように擬態を繰り返す。
観測ステーションに男が降り立った。荒廃した内部、先任科学者たちの異常な行動。やがて男の前に十年前に自殺した恋人が現れる。そんなことはあり得ない。男は恋人の形をしたものをロケットで宇宙空間に放出する。ところが何事も無かったかのようにまた恋人が現れるのだ。どうも海は人間の最も奥深い潜在意識と記憶の奥津城をスキャニングし擬態化しているらしい。海は脳に秘められた希望や心の傷を読み取りその処方箋だけ作り出しているのか。
人間の脳、本来そこには言葉や感情といったものは一切ない。記憶とは分子の不同時性結晶の上に核酸で書き込まれた一種の絵なのだ。思い出も心の痛みも脳内の科学的・電位的変化でありわれわれはその幻想を実態と思っているのだろうか。…….恋人は激しく自己存在の意味を問う。「私はあなたにとって何?本当に私を愛しているの?」男は過去の罪の意識、悔恨に対峙し贖罪を求める…。彼女は液体酸素を飲み自殺を図る。しかし眼前で再生し復活するのだ。
男の心のなかに彼女への愛が強まり無くてはならない存在となっていく….。そして一連の実験の結果、彼女は消えた。しかし待ち続ける自分がある。….私は驚くべき奇跡の時代はまだ永遠に過去のものとなってしまった訳ではないということを固く信じていた。完
レムは解説でこう述べる「未知のものとの出会いは人間に対して、一連の意識的、哲学的、心理的、倫理的性格の問題を提起するに違いない」と。….人間と隔絶した異次元の存在。結局、人間は人間の思考を超えられない。それは鏡に映った自己を追いかけ続けているのだろうか。…..寄せては返し、寄せては返し、たゆたうソラリスの海………..。
● 「Solaris・ソラリスの陽のもとに」原作:スタニスワフ・レム 飯田 規和/訳 早川書房 いま読み返してみると宇宙科学やハードなツールなどは古めかしいが、それを超えてコンセプトが重い輝きを放つ。至上のSFである。
● 「ソラリス」アンドレイ・タルコフスキー監督(1972年)原作の意図とは違うタルコフスキーの映画だ。レムは「タルコフスキーが作ったのはソラリスではなくて罪と罰だった」と言ったそうだ。しかしエンディングの美しさは圧巻である。
● 「惑星ソラリス」スティーヴン・ソダーバーグ監督(2002年)これは恋愛映画か?