3/ 27th, 2013 | Author: Ken |
Mr.T.Shigeji
繁治照男氏が三月二十六日のお昼に旅立たれた。デザインの世界を一気に駆け抜けられた生涯だった。
先週までベッドでビールを飲み、煙草をふかし、意識の混濁が始まってもデザインを考えていたそうだ。
「ワシはデザインも何も好き放題をやってきた。それでいいんや!」彼の言葉が耳に残る。…….
…..初めてお会いしたのは半世紀ほど前で僕がまだ高校生で、あの特異な風貌と鋭い目で睨まれたときには少し怖かった。
彼のデザインはまるで手品だった。どうしたらあんな発想が浮かぶのだろう…。とにかく新鮮だった。他とは全然違った。カッコいいのである。繁治氏は「NEW JAPAN」の宣伝課長だった。彼はサウナの概念を変えた男だ。それまで何となく如何わしいイメージがあったサウナを健康的で明るくしたのだ。「健康な人をより健康に」と。マクルーハンが流行ったとき「マクルーハン理論を実践しよう!」これがなんとキャバレーの案内状だ。他にも「割烹日本」「メンズジャパン」など数々の革新的なデザインをし、そして独立した。
「日本ブレーン・センター」NBCだ。ぼくはメンズウェア会社で企画・デザインをしていたので、彼のサブとしてディレクションをする機会が多かった。ぼくたちの会議はいつもバーだった。「こんどのカタログ、どんなテーマや?」「50年代のボールドルックで行こうかと」「そやな!表紙はイラストで行こ、おまえ描けや」それで終わり。ぼくの頭の中にはイメージができていたから直ぐに見せた。「ええやんか!」。「次何やね?」「ハードボイルで行こうかと」「アイディアあるか?」酒を飲みながら会話が続く。「探偵事務所のドア越しに狙ったら?どうでしょう」「「オモロいなそれ行こ」。
早速業者にドアを発注、シルクスクリーンで I Don’t Sleepなんて…。「おい、次は宝物の争奪戦のテーマで行こや、何がええ」「そうですねー、マルタの鷹みたいに….」
「OK! 鷹どうするねん」「作ります」早速、紙粘土を買い塑像作り。夜中にふとん乾燥機を回し庭で金色のスプレーをした。翌日の撮影ではまだネバネバしていたネ。彼には酒の飲み方も教わった。北、南、神戸、チェーンスモーカーで酒は底なし。とても追いていけない。「ジョージ・ロイスが先生やったからなー。あれワシらの原点やで。デザインはエンターテインメントなんや」。
「この人間という生き物、人間が対象やワシらの仕事は。人間らしくやりたいな、これやで!」。