1/ 30th, 2013 | Author: Ken |
ありがとうございました。
1月27日「成田一徹さんを偲ぶ会」が行われました。
全国から270人以上の方々がご参加され、故成田一徹さんの思い出、
エピソード、作品にまつわる話など、
様々な気持ちを語っておられました。
これも誠実一徹、成田さんのお人柄を慕ってのことでしょう。歌手の大西ユカリさんの熱唱もあり
会場は熱気に包まれました。どこからか成田さんが恥ずかしそうな顔で覗いているような気がしました。
みなさま「ありがとうございました」。関係者一同、心より感謝いたします。
彼の初期の作品から最後の作品までを展示しました。それぞれの作品への熱い情熱が感じられ、
「切り絵一筋三十年」、成田一徹の人生が偲ばれます。
1/ 10th, 2013 | Author: Ken |
成田一徹さんを偲ぶ会
拝啓
本年もあと僅かになって参りましたが、
皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
すでにご承知のことと存じますが、
切り絵作家の成田一徹さんが、10月14日、脳出血のため63歳で逝去されました。
心よりの哀悼の意を表します。
皆様には突然のお知らせであったかと存じますが、葬儀はご親族と近親者のみで執り行われました。
この度、成田さんのご縁のあった方々にお集まりいただき、
思い出やエピソードを語り合いながら、個人が歩まれた足跡を振り返りたく、
下記のとおり「偲ぶ会」を開催することになりました。
ご多忙中とは存じますが、ご来臨賜りますよう、お願い申し上げます。
2012年12月 敬具
記
日時:2013年1月27日(日曜日)午後3時より(開場2時30分)
会場:甲南大学平生記念セミナーハウス
(JR住吉駅、阪急御影駅徒歩約10分)会場には駐車場がありませんので、車でのお越しはご遠慮ください。
会費:3000円
会費制とさせていただきますので、ご香典、ご供花などはご辞退申し上げます。
また、当日は平服でお気軽にご参加下さるようお願いいたします。
後ほど正式のご案内状を差し上げます。
尚、ご参加は原則として案内状をお持ちの方に限らせていただきます。
●
発起人:(アイウエオ順)網谷隆司郎(毎日新聞)、江川栄治(十三トリス)、城戸秀雄(サントリー)、
木村義久(サヴォイ北野坂)、後藤昌史(メインモルト)、島田誠(ギャラリー島田)、道又隆弘(京都新聞)、
中泉勉(ヤナガセ)、中西秀之(日本海事新聞)、中本由美子(あまから手帖)、林芳樹(神戸新聞)、
福岡宏泰(海文堂書店)、福冨淳也(パパヘミングウェイ)、三好正文(神戸新聞)
世話人:荒川英二、穴田佳子、芝田真督、中島俊郎、樋口東光、吉本研作
1/ 9th, 2013 | Author: Ken |
独立愚連隊 … そして映画看板
俳優、佐藤允が逝った。僕は彼の大ファンだったのだ。金壷眼の特異な風貌は用心棒や殺し屋役によくはまった。和製ウィドマークと呼ばれ後半には和製ブロンソンとも呼ばれた。「暗黒街」シリーズや「野獣死すべし」(1960:東宝)では殺し屋、黒いシャツに白ネクタイのギャングがよく似合った。貸本の「影」や「街」なんかのタフガイもこんな格好だったのだ。目深に被ったソフト帽、トレンチコートという小道具はこのジャンルには欠かせないものになった。ブラックジャック(革袋に砂と鉛を入れた凶器)…これは大藪春彦の小説で知った。当時の不良(死語?)はメリケンサックやチェーンをいつも忍ばせていたものだ…時代が分かるネ)。
そして「独立愚連隊」(岡本喜八監督1960:東宝)だ。面白いの何の!それまでの日本製戦争映画は反戦思想を反映して暗く重かった。ハリウッド製は星条旗パタパタで、登場する日本兵はドジで間抜けで、歩哨は首を刈れるはGIの一連射で数十人は倒されるは、おまけにかっこ悪い軍服とゲートルで不釣り合いな38式歩兵銃だ。「独立愚連隊」の主人公は細身のパンツに革の短パンを重ね、軽機関銃を腰だめで連射するは、スパイ容疑の美人(何と!隠し砦の雪姫様だよ)の銃殺シーンでは処刑将校のブローニング拳銃の銃口を手の平で押さてうそぶくのだ(ブローバック機構だから発射できない)。ラマ寺の廃墟や鶴田浩二扮する馬賊の頭領、元恋人の慰安婦(いまこの言葉には注意を要する)は雪村いずみだ。気が狂った隊長は三船敏郎だし、八路軍の大集団を殲滅するやら、痛快この上なしだ。彼のふてぶてしさ、精悍さ、戦闘機乗り的眼光、それでいてコミカルな味は劇画の主人公みたいなのだ。
「独立愚連隊西へ」では八路の隊長フランキー堺が絶妙でしたね。まあ、戦争西部劇、コミックパロディー物の愉快な映画なんだが、日本人は生真面目だから「戦争を茶化すとは何事かッ!」「散華した人たちに恥ずかしくないのかッ!」とか顰蹙を受けたとも聞く。
しかしだ、戦争の愚かしさを笑い飛ばすのは反戦映画だとも言える。余談だが戦争を経験してきた人たちが作った映画には何か凄みのようなものと哀感があった。それが80年代からの戦争映画には妙なフォーク調ソング、最悪は近頃の初音ミクだろう。…その低次元の捉え方、お手軽なのだ。その心底のイージーさに恥ずかしくて汗が流れる。クサイのだ。愚劣の臭気なのだ。….ああ、恥ずかしい。
そして戦争映画の隠れた傑作「独立機関銃隊未だ射撃中」(谷口千吉監督1964:東宝)で佐藤允は機関銃手の上等兵役だった。農村出身で遺書を書くシーンでは覚束ない字で「とったんは…..」、ソ満国境のトーチカの中だけという設定も、敵戦車にアンパン(破甲地雷)で肉薄したり、「西部前線異常なし」を意識したエンディングの空しさ…。
… 映画館の暗闇に身を沈め時間を忘れる没入の快感。もう、あんな時は二度とないのでしょうね。映画の黄金時代だった。映画館の看板も巨大でおどろおどろしく、キッチュで欲望をそそったのだ。この正月に前から気になっていた「青梅市」に行ってみた。レトロな昭和を売り物の町おこしだ。映画の看板がたくさんあるというので … ところが美大生のアルバイトか? 小さいのだ、ショボイのだ。あの大胆で大げさでポップでキッチュな大看板を見たかったのに。これがシネラマだ!とかベンハーとか、黄金の腕、ナバロンの要塞、大いなる西部とかね…..。
昔は看板職人が駐車場みたいな広い場所にベニア板のパネルで何十畳もある看板を泥絵の具で描いていた。弟子たちと分業でね。近くで見ると雑いのに看板として立ち上げると、錦之助や大友龍太郎、唐獅子牡丹の健さん、カーク・ダグラスが圧倒的な存在で迫ってくる。…最後に先生は梯子に昇り仕上げだ。おもむろにホワイトを入れる。B・ランカスター白い歯が眩しく、A・エグバーグの唇が輝き、ヘップパーンの瞳がひと際眩しくなるのだ。まさに画龍点晴とはこのことだ。あの職人、名人も時代とともに去っていったのか……。
1/ 1st, 2013 | Author: Ken |
明けましておめでとうございます。
明けましておめでとうございます。
二千十三年/元旦
宇宙創世137億年….、地球誕生46億年…..、無限宇宙の広がりからプランクの大きさまで….
そして究極の真理、大統一理論は証明されるのか? 巳年にあたり宇宙のウロボロスの中に存在する人間、意識。
わたしはたった68年生きてきました。いまここにいる!って意識は何なんでしょうね?
この宇宙、この次元、この時間、お世話になったあの方この方、同じ時空を共有しているのですね。
本年もよろしくお願いします。
12/ 31st, 2012 | Author: Ken |
飛行するデザイン……翼竜とステルス
進化とはトンデモなく不思議な形態を生み出す。ダーウィン説が正しいとしても、ランの花そっくりな花カマキリの擬態や翼竜は、どうやって進化したのだろう。あまりにも巧妙過ぎる….。空を飛ぶというのも不思議すぎる。重力に逆らって空を飛ぶとは…..
1)空気より軽い(気球)2)弾道飛行(跳ぶ、投げる、打ち出す)3)羽ばたく・ホバリング(昆虫、鳥)4)翼による揚力(飛行機の固定翼、滑空)5)回転翼(ヘリコプター)6)反作用(ジェット、ロケット推進)7)磁気の斥力、空中浮遊の方法はこんなもんじゃないかな?
しかしだ、3億年前から昆虫は飛行していたし、翼竜はジュラ紀から白亜紀に栄え、奴らは初めて空を飛んだ脊椎動物だ。ランフォリンクスも(Rhamphorhynchus=「舳先の嘴」)その異形な姿はまるで中世の悪魔の絵を彷彿させる。長い尾の先にある菱形のヒレなんてだれがデザインしたのだ!地上に生息するものは重力の呪縛から逃れられない。しかし、空気を利用すれば飛行できる。……昆虫、鳥、ヒヨケザル、モモンガ、飛びトカゲ、etc…..生態系のニッチに適応して進化したと教えられるが、この巧妙極まる形態がダーウィンの言う……ドーキンスさん、本当?
人間だって負ちゃいない。世界初の実用的なステルス( stealth/こっそり、隠れる)機、1981年に初飛行を行ったアメリカ空軍の攻撃機F-117。初めて写真を見た時驚嘆した。こんなものが飛ぶのか? あまりにも異様、飛行機の常識を逸脱している。レーダーから発見されにくくするため、平面で構成された独特の多面体の機体形状、これにより空気力学的に不安定な形状を、操縦にコンピュータを介在安定性を確保した。そして黒塗りの塗料、これもRAM(Radar Absorbent Material)と呼ばれるレーダー波を吸収するグラファイト/エポキシ複合剤で覆われており、機体内部にも電波反射の少ない非金属素材が使用されている。そして爆撃機B-2は側面は曲線的だが平面形は、何とまあ!折り紙細工みたいな菱形の構成だ。垂直尾翼と水平尾翼がない「空飛ぶ翼」そのものだ。
僕はUFOを見た事あるのだ。時は1996年12月23日午前12時過ぎ、何故憶えているかと言うとその日は事務所開きだったのだパーティが終わり、酔いを醒ますためにベランダに出ていた。神戸・三宮中心街上空、北西から南東に向かい20秒ほどだったか?薄緑の五角形の十字形であった。高度は300メートルくらいと感じた。最初は連凧かと思った。次に連凧が切れて飛んでいるのかと….。それにして.は高度が高すぎる….。当時は携帯にカメラはついていなかったし慌ててメモした。あれは何だったのだろう?…..合理的解釈として.「F-117ステルス」ではなかったか? 多面体で構成され機体に街の灯が反射し連凧にみえたのでは?…..。今もって解らない。どなた.か見た人や写真に撮った人はいないのだろうか?
11/ 28th, 2012 | Author: Ken |
Farewell my Lovely…..さらば愛しき女よ
戦争の足音が近づく1941年・夜のロスアンジェルス下町、やるせないアルトがむせび泣く、クレジットが流れる、ネオンが映る安ホテルの窓、初老の男のつぶやき「最近疲れを感じる….関心はジョー・ディマジオの連続安打だけだ….」この哀愁がたまらないのだ。(連続56安打というディマジオの不滅の記録が生まれ、12月8日には太平洋戦争が始まった。この前の年にはディズニーのファンタジアが封切られた。オールカラー、ステレオ、クラシック音楽をテーマに…嫌になるね、我が国では軍歌と特高、憲兵が…贅沢は敵だ!の時代なんですよ)
閑話休題 … 大男ムース・マロイ(ジャック・オハローラン)これがいいんだ、チンピラのS・スタローン、こんなマーロウ映画はもう作ることが出来ないだろう。だって時代背景を理解している人がいなくなったのだから….。いまソフトにトレンチコートなんて人いますか? 探偵なんて家業も浮気調査くらいなものだろう。スマートフォンやGPS、DNA鑑定とくりゃタフガイも形無しだ。… ハードボイルドは男の夢だからいいんですよ。最後のシーンもいいですね。「ポケットの二千弗が家が恋しいとサ…泣かせますね。
★世の中には親切で同じことを感じる人がいるものだ。 http://www.youtube.com/watch?v=JiiBwT9h2u8 をぜひ見てほしい。…この方にお会いする事があったらフォアローゼスを並々と一杯ご馳走したいものだ。
「さらば愛しき女よ」(1975年)●音楽 デヴィッド・シャイア 監督 ディック・リチャーズ 出演 ロバート・ミッチャム、シャーロット・ランプリング、ジョン・アイアランド 他
11/ 19th, 2012 | Author: Ken |
長いお別れ……The Long Goodbye
親友を亡くした。もう一ヶ月が過ぎたが夕刻になると、いまだに彼からの電話がありそうな気がする。バーのカウンターで一人ウィスキーを舐めていると、あのシャイな顔がドアを開けて入ってきそうな気もする。彼とよく話したものだ。お互い金も無いし二枚目でもなければ屈強な肉体の持ち主ではない。平凡な男だ。
だが、心に矜持だけは持ちたいものだ。仕事も生き方も、そうハードボイルドだよ。やせ我慢だ、ストイシズムだ。センチメンタリストでロマンチストを隠した強がりだ。まあ、精一杯突っ張ってね…….。
その彼が好きだった映画のサウンドトラック「The Long Goodbye」これが素晴らしい。切ないのだ、やるせないのだ。思い出と悔恨なのだ。そう、あの時……。マーロウの台詞「To say Good bye is to die a little.・さよならをいうのは束の間死ぬことだ」…..こんなカッコいい台詞を一度だけでも言ってみたいものだ。…でも親友は逝ってしまった。本当の長いお別れだ……。
You Tubeでこれを聞いてみてください。
There’s a long goodbye.
And it happens everyday when some passer by invites your eye to come her way.
Even as she smiles a quick hello, you’ve let her go. You’ve let the moment fly.
Too late you’d turn your head, you’d know you’ve said the long goodbye.
Can you recognised the pain on some other street, two people meet as in a dream,
running for a plane through the rain.
If the heart is quicker than the eye, they could be lovers Until they die.
It’s too late to try when a missed hello becomes the long goodbye.
長い別れが毎日のように起きる …. 通りすがりの女に視線が引き寄せられたとき
彼女が微笑んで声を掛けてくるのに君はすれ違ってしまった、大事な瞬間を手放したのだ。
振り向いても遅すぎる 長いサヨナラを言ってしまったのだから。 その痛みが分かるかい?
飛行機に遅れぬよう雨の中を走っているときにも どこかの通りでふたりが夢のように出逢う
もし心が眼差しより素早ければ ふたりは死ぬまで恋人でいれるのに …
もう試してみても遅すぎる 言葉を掛けずに長いお別れになってしまったから…
映画は1973年:監督ロバート・アルトマン、主演エリオット・グーリド、音楽ジョン・T・ウィリアムズ。その時代性というか70年代風のアレンジはあんまり戴けなかった。(あのアーノルド・シュワルッツネッガーがチンピラ、チョイ役で見事な肉体を見せているが、こんなシーンはどうだかね?)ハードボイルドはやはりソフトにトレンチコート、皮肉で気障な台詞をうそぶくマーロウでなくっちゃね。だってハードボイルドは大人の男のハーレクインロマンなんだから。
10/ 17th, 2012 | Author: Ken |
さようなら一徹さん。
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昨日、成田一徹さんのご葬儀が行われました。
あまりにもはやすぎる別れ、ご本人の胸中を察すると無念でなりません。
これからが円熟の技の年齢であっただけに惜しまれてなりません。
「この世のから闇が消えていくのが惜しい、かって都会には如何わしさを漂わした闇があった。
南京町裏通りの外人バー、時代を超えて来た人々の影の部分、そんな所を切り絵にしたいんですよ」。
「神戸は大震災で人肌の暖かみや歴史を刻んだ沈黙の声があらかた消えてしまった。その幽かな
残り香りを絵にしたいんですよ。人の営みと優しさと、それらを包んできた建物や名残をね」。
…彼のこんな話をよく聞いたものだ。彼は詩が大好きだった。妹さんが語ってくれた。
「兄は子どもの頃から詩が大好きで家では大きな声で朗読していました。だからわたしもいつのまにか
覚えてしまいました」と…..。人を街をバーを場末の居酒屋を、そして微かな残り香りを愛した成田一徹。
さようなら。君のことは決して忘れないよ。
吉本研作
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10/ 14th, 2012 | Author: Ken |
成田一徹氏を偲ぶ
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本日、成田一徹(本名徹)氏が無窮の世界へと旅立たれた。
あまりにも突然、そんな馬鹿な、いまだに信じられない、来週会おうと約束したじゃないか。
彼とは親友のなかの親友、最初に会ったときから以心伝心、暗黙の了解が出来ていた。
お互いに超恥ずかしがり屋で、人前では照れてしまって語れないことも彼には語れた。
カウンターでグラスを傾けながら、美学、小説、彼が大学院で学んだ哲学、生意気盛りの何十年前に読んだ小難しい本の話。
そしてファンタジーとSF、特にブラッドベリの「火星年代記」「恐竜物語」….。屋根裏はタイムマシンだ…をもじって
「バーはタイムマシンだ」「バーのドアは日常からリープする異次元への扉だ」「バーは人に会いにいく所だ」
「闇を切る…黒白の世界に人間というものを描くのだ」「黒白の二分の中にたくさんの諧調を込めるんだ」….。
そうだ、十月は黄昏の国だ。そして君の好きだった上田秋成の「菊花の約」親友との約束を守るため、約束の夜に魂が
千里を飛んで会いにくる…どうして会いに来てくれなかったんだ、もう一度会いたかった。
彼の語録、そして飲み疲れて深夜の町を歩きながら、戯れに遠く忘れていた詩を二人で交互に暗誦しあったものだ。
〜あはれ 秋風よ 情あらば伝えてよ男ありて 今日の夕餉に ひとり さんまを食らいて 思いにふける と。
さんま、さんま そが上に青き蜜柑の酸をしたたらせてさんまを食うはその男がふる里のならひなり。〜
また 〜秋の日の ヴィオロンのため息の ひたぶるにうら悲し〜 とか
〜巷に雨の降るごとく わが心にも雨ぞふる かくも心に滲みいる この悲しみや何ならむ〜
……彼は寂しがり屋で夕暮れともなると、つい人恋しくなってバーに向かうのだ。
僕は禁欲主義者だ。いやハードボイルドを気取ってストイシズムだ。やせ我慢の美学だ。そんな馬鹿話をしながらも
彼に教えられたことがある。「ジャズのハードなリズムでは日本人の持つ情は表現できない。演歌ですよ。
あのダサくって、ヘチャでドロドロして生臭く、不細工で巷の人間の洗練にはほど遠い悪趣味と情念、その中の涙と恨みと
繰り言なんですよ。大人にならなきゃ分からない。そう耳に毛が生えた大人のね」。
僕もユーチューブでいろいろ聞いてみた。いいんだなー….いつか聞き惚れている自分がいた。
「ン、人生とは風雪流れ旅だナ」….。僕も茶化して「あなたの絵ネ、最近は切る人間の顔に優しさや慈しみが出て来たね、
これからだよ円熟の味は…..そして切り絵・キリエはねキリエ エレイソン・主よ憐れみたまえだ」。
それが何という事か! 彼の魂にこの自然と宇宙の限りない憐れみを与えられんことを…。
…..いつかN.Y.のブルーバーで、P.J.クラークスで、神戸で、東京で、
火星のオリンポス山を見ながら運河の空想のバーで、壮大な土星の輪とタイタンのバーで、
おい、一徹、先週約束したじゃないか!
「帰神したら一杯飲りましょう。そしてあの企画や取材をすぐにでも….」
その言葉と握手の手の感触がいまもこの手に残っている。
吉本 研作
10/ 13th, 2012 | Author: Ken |
成田一徹氏のこと
そんな馬鹿な!
いまだに信じられません。大変に残念なことが起こりました。
成田一徹氏が10月8日(月)に倒れました。気分が悪いと駅に訴えすぐ救急車で病院に運ばれました。
その時はまだ意識があったそうなのですが、脳出血で現在も意識不明、東京上野の病院で人工呼吸器と強心剤で闘っています。
「そんな!」「まさか!あの成田さんが!」「どうか!」と祈るばかりです。
先週11時頃、神戸・新開地のホームで別れたのが最後でした。
「明日から東京です。来週帰神したら一杯飲りましょう…..」と。
切り絵教室のこと、新しく企画していた「酒場幻想」連載のこと、最初はニューヨークのバーを….
バットマンの視点で摩天楼の谷間に浮かぶマンハッタンを…バー・クールの想い出を226事件にからめて….。
夢は次々に浮かび続きは帰神したらとあんなに約束したのに….。
そしてゴルフの倶楽部ハウスを切る話…..。これは彼との永年の企画で帰神後すぐ「六甲山の神戸ゴルフ倶楽部」に
取材に行く予定でした。悔しい、あまりにも辛い、苦しい….。やり場のない腹立たしさえ感じます。
….彼とは震災の頃知り合い意気投合、それより東京でバーを巡り、彼が帰神したときもバーを巡り、
居酒屋で、カウンターで、わたしの事務所で、彼のお家で様々なことを話ました。
極めてシャイな人ですので、わたしに飲みに行こうとは言えず、必ず何か詰まらない用事に引っ掛けて電話があったものです。
「あー、成田です。ちょっと頼みたい事があって」、いえいえたった五分で終わる詰まらないことなのです。
わたしも一緒に飲みにいきたいけれど言えなくて、電話で「ちょっとあの仕事のことで….」。そんな暗黙の了解の友人です。
ああ、頼むから蘇生してくれ!俺との約束があったじゃないか!
….万が一の僥倖を信じて祈るしかないのでしょうか。
友人知人のみなさま、どうか彼のためにお祈りください。
吉本研作