10/ 1st, 2012 | Author: Ken |
猫町伝説。
猫とは不思議な生き物だ。気ままで優雅、毅然、おすまし、しなやか、残酷、媚びたり媚びなかったり、と、女性の性格に例えられることが多い。人間に一番身近な動物でありながら妖怪譚や神話のたぐいが。 ……..あれは夢の中の出来事だったのだろうか?
そう、ポール・デルヴォーの絵のような町、凍りついた時間、あまりにも静かな夜に猫が次々と集まってきて僕の頬に極めて柔らかい感触が……気がつけば枕元で喉を鳴らして愛猫がくっついて寝ていた。……どこかに猫の町がありそうな気もする。
「いにしえの魔術」アルジャノン・ブラック ウッド:北フランスの小さな中世風の佇まいの町。宿屋の女将は大きな斑猫を思わす。傍らを柔らかく匂いのいいものが通り過ぎた。宿屋の娘だ。安息日(サバト)の夜、窓々に人の顔が現れぴょんと地面に飛び降りる。その瞬間四つ足の猫に変身するのだ。わたしも抗いがたいその衝動に駆られる…..。
「猫町」萩原朔太郎:そして「ウォーソン婦人の黒猫」…..猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。そして家々の窓口からは、髭ひげの生はえた猫の顔が、額縁の中の絵のようにして、大きく浮き出して現れていた。
……ああ このおほきな都會の夜にねむれるものはただ一疋の青い猫のかげだ…….
「猫の泉」日影丈吉:フランスの片田舎ヨンという町にたくさんの西藏猫がいると言う。その地で私は三十番目の外来者で予言を聞いて欲しいと頼まれる。大時計が刻を打つ、その機械音から予言を聞くのだ。…..ガッタン ルルー グルール グルルール それがヴァッタン(去れ) ジュンノム(若者よ) デリージュ(洪水) ロルロージュ(大時計)と聞こえたようなきがした。…..
「黒猫」エドガー・アラン・ポー:…..完全犯罪と調子に乗って妻を塗り込めた壁を叩く。その壁からすすり泣きか悲鳴のような…..。
「我が輩は猫である」夏目漱石、言わずと知れた。
「長靴を履いた猫」ヨーロッパの民話だが明治の我が国に翻訳された。題名は「猫君」(びゃうくん)、その挿絵が奮っている。裃に居住まいを正した猫君が正座して…かわいいね。
「チシャ猫」ルイス,キャロル:不思議の国でのアリスに出てくる猫は消えたのにニヤニヤ笑いだけが残っている…..。他にもロバート・A・ハインラインの「夏への扉」、レオノール・フィニの何て言ったかな?そうだ!「夢先案内猫」だ。とか…
猫にあんまり関係ないけれど水が相転移するカート・ヴォネガット・Jrの「猫のゆりかご」とか。「空飛び猫」というのもいた。
そうそう「鍋島化け猫騒動」とか、谷崎潤一郎の「猫と庄造と二人のおんな」もあったな。映画は森繁だった。
ほかにも僕の知らない猫話がたくさんあるのだろうな。
9/ 15th, 2012 | Author: Ken |
エイリアン、お前もかッ!
お許し下され今回は支離滅裂です。【Alian】異邦人、【営利案】金儲け企画、【鋭利案】切れ味鋭い考え、【絵入り餡】フォーチューンケーキ。…………かのギリシャ神話曰く、兄のプロメテウスは「先の知恵」すなわち先見の明を持ち、神から火を盗んで人類に与えた。弟のエピメテウスはepi(後の) metheus (知恵)という「後知恵」である。「タラとレバ」なんですね。あの時ああしていれば良かったと後悔する、まるで私だ。
人類はどこから来たのか? 壮大なタイトルに牽かれて映画「プロメティウス」を観てきた。ウーン、如何な物か!なんでしょうかね。政治家の発言みたいになってしまうが、入場料を払った以上文句の一つも言わせてもらわねば…..。あの鬼才リドリー・スコット監督、それだけに期待をしますわナ。ところがどうだ、船長は長距離トラックの運ちゃんがお似合いだし、主人公の女性科学者は一昔前のカラオケスナックのママみたいだ。その他の乗員も似たり寄ったりでちっとも科学者や宇宙飛行士に見えない。アンドロイドはアラビアのロレンスの真似をするし、この探検プロジェクトのオーナー老人の登場は?だしメイクも酷いし、そのスタイル抜群の娘なんて!
CGと3Dはたっぷりなんだが、「エイリアン」とスピルバーグの「インディ・ジョーンズ・クリスタルスカル」(もういいよ!)とスティーヴン・キングの「ザ・ミスト」(2007/フランク・ダラボン監督:後味の悪さは相当なもの)を足して3で割って、混ぜて薄めたらたらこんなもんか! 舞台は2090年代なのに安モノのカジュアルを着たり拳銃を撃ったり(おいおいレーザー銃でも無いの?)チンケな火炎放射器、兵員輸送車やヴィークルもイラク戦争じゃないんだよ!「地球の空気と同じだ」と言って簡単にヘルメットは脱ぐは(あのー、未知のウィルスとか…..)ハードのお膳立てがどうしようもありませんね。
おまけに「人類はどこから来たのか?」と哲学的考察でもあるのかと思ったら、….あのエンジニア(創造者)とはアメリカで勢力を持つID(インテリジェント・デザイン)受けを狙ってかしら? ……どうせならツァラトゥストラぐらいの名前にすればいいのに!
太古に宇宙人が地球に訪れてDNAをまき散らした?それ何時?40億年前?…..A・C・クラークの「モノリス」の方が! 宇宙船の中も惑星も1G、冷凍冬眠や超光速飛行、それはオバカSFだから許せるとしても、宇宙船のプラスチック・コックピットのペラペラさ(宇宙船の形態はクリス・ロスの描くところのパクリ感がありますね)、ロボット(2にも登場しましたね。首が飛ぶのも二番煎じ?)がアシモフの三原則を破って「人命より会社の命令を最優先する」のも有りかな? 超推進エンジンがイオン?…もうマイナス・イオンのブームも去ったことだし、エイリアンの宇宙船が落ちながらのしかかってくるときに横に逃げたらいいのにネ。
生物兵器の開発?….あんな大きなものでは?ウィルスは極微だし無数に増えるから怖いのでしょう?イカのお化けもどこで栄養とって巨大化したのでしょう? 一番にツッコミたいのは老人の車椅子、撮影所近辺の病院から借りてきたの?…おいおい宇宙船の中は地球重力1Gで制御出来るんだろ? カッコいいデザインの反重力車椅子でも用意しろよ。
それで思い出した「2001年宇宙の旅」はいま見ても古びませんね。そしてタルコフスキーの「ソラリス」も。やはりしっかりした背景、コンセプト、哲学がなければ、どんな娯楽作品だってそれまでですね。CGや技術がいくら凄かっても「観るのは人間」だし、観客だって馬鹿ではありません。いくらエンターテインメントだと言っても内容を求めますよ。
監督のリドリー・スコットは「決闘者」を観て大好きになり「エイリアン」では最高に面白い!脱帽!だった。ギーガーの世界も超不気味だった!(早速、画集「ネクロノミコン」を買いました)そして「ブレードランナー」(1982)もなかなか。シド・ミードのデザインが秀逸(「画集センチネル」も最高ですね)!….映画で特に記憶しているのは増田喜噸みたいな親父が「二つで充分ですよ!」かな….。嗚呼、リドリー・スコット老いたり!映画産業とハリウッドの凋落、大きなシネコンのホールには僕を入れて観客はたったの二人!ポップコーンもコークも不味かった…..。
●「エイリアン」監督:リドリー・スコット(1979)大好きだ。「エイリアン2」(1986)監督:ジェームス・キャメロンまでは付合えた。でもプレデターと競演(2004)するとはお終いだ、堕落だ!
●「プレデター」(1987)監督:ジョン・マクティアナンは結構いけました。「プレデター2」は苦笑以下だった。「プレデターズ」(2010)監督:ニムロッド・アンソール…..もう合掌するしかないですね。
嗚呼、噫、ああ、エイリアンよ、プレデターよ、ターミネーターよ、堕落の道を歩む….お前もか!
9/ 9th, 2012 | Author: Ken |
魔法の泉
暑い、残暑が厳しい。今年の夏はほんとうに雨が少なかった。公園の噴水も心なしか弱々しく見える。地球温暖化現象が始まっているのだろうか……?そんな不安が頭を過る。 ずーっと昔、ウィンドウディスプレイに眼を見張った。空中にビール瓶が何の支えも吊り糸もなくあって、ビールが下のジョッキに永遠に注がれているのだ!みんなも立ち止まって不思議そうに眺めていた。ぼくもいったいどういう仕掛けだろうと眺め続けていた。もし自分で作るならどうする?…なるほど!そうか!!「エウレカ!」。それほど大それたことでなく単純だった。答えは流れ落ちる滝の中に透明パイプをネ。ジョッキの底かテーブルにポンプが仕込んであってテーブルの足に電気コードが巧妙に隠されている。これだ!…やはりそうでしたね。
同じように「水飲み鳥」、あれは永久機関じゃないの? この仕組みも巧妙極まりますね。
8/ 30th, 2012 | Author: Ken |
零戦・大和に昂る。…いつか描きたかった。
戦後67年、太平洋戦争はもう歴史である。しかし「零戦」「大和」の人気は衰えない。ますます詳しく細かく図面やデータが揃い出版物も多い。零戦は「十二試艦上戦闘機計画」(昭和12年)に端を発し、昭和15年(皇紀2600年)に制式機となり、その下桁が「0」であるので「レイセン」と呼ばれた。開戦初期には大活躍をしたが後半には敵の新鋭機や戦争の実態の前に苦戦を続け特攻機となって散っていった….。大和も昭和12年に起工、開戦直後の1941年(昭和16年)に就役、世界最大の艦体、最強の主砲を備えたが、戦局に何ら貢献することもなく日本海軍の象徴として1945年4月7日に沈んだ。零戦も大和もその生涯のドラマ性、悲劇性故に日本人の魂を揺さぶるのだ。
僕も少年雑誌の巻頭見開きに興奮したものだ。圧倒的に押し寄せる戦後アメリカ文明の前に、江戸時代の名残を残す日本のショぼい文明、そうブルドーザーの前の鍬、ジープの前の大八車、B-29対竹槍と日本人が自らを揶揄していたのだ。そんな時代に負けたとはいえ「こんな凄い兵器」を持っていたという日本人の誇りのシンボルが「零戦・大和」だったのだ。小松崎茂のダイナミックな絵に「零戦」の爆音と機銃音、「大和」の海を圧する偉容、主砲の炸裂に興奮を覚えた。いつか僕も描いてみたい!授業中によくノートの端に描いたものだ。あれから長いようでほんの一時の刻が過ぎた….。今でも描いてみたいのだ。だから……
小松崎茂:こんな凄い絵は!と絶句したものだ。何てかっこいい!プラモデルの箱絵を見るだけで爆音が聞こえてくるようではありませんか!!! 上田毅八郎:艦船模型の箱絵は小松崎茂と違い「整然として美しい」のだ。
生頼 範義:中世洋画を彷彿させる重々しいリアリズム、ドラマ性、悲劇性に唸ってしまった。70年代だろうか戦国の英雄、秀吉や信長を点描(ひたすらペンのドットでリアルに肖像を描く、恐ろしいほど面倒で時間がかかるのだが、まるでモデルを目の前に置いたようにリアルなのだ。あの何万という墨の点、いまならピクセルと言うのだろうか)。そして「スターウォーズ」のポスター。アメリカ人よりアメリカ的な画風に喝采を叫んだ。
ロバート・T・マッコール:あの「2001年宇宙の旅」のポスターといえば2010年に90歳で亡くなったボブ・マッコールだ。宇宙ものが中心なのだが、1970年のハリウッド大作「トラ!トラ!トラ!」のポスターは彼が描いたものだ。確か週刊プレイボーイだったか「君が描こうとして描けなかった絵」とかのキャッチコピーだった。凄い!雲間から満月がのぞき荒波をかきわけ真珠湾に急ぐ機動部隊、特殊潜航艇を積んだ伊号潜水艦、中央は比叡か霧島か?遠くに飛竜?零戦は映画用に改造したT6・テキサンだから少し寸詰まりだけれど、この迫力、このダイナミズム!それにしてもこの映画は黒澤明監督に撮ってほしかった。その辺の事情は『黒澤明 VS.ハリウッド』( 田草川 弘・著):文藝春秋に詳しい。
こんな絵が描きたかったから、雑誌やプラモデルの箱、本の表紙なんか見つけると切り抜いてスクラップブックに貼って保存していたのだが、いつのまにか散逸してほとんど残っていない。でも忘れないよ。
8/ 18th, 2012 | Author: Ken |
楕円美と楕円コンパス
楕円!純粋の数学? それとも自然?….レオン・レーダーマン。たしかに楕円は優美だ。何故と言われても困るのだが美しいのである。もとより微積分や解析は頭が痛くなる質だし、その数式が美しいと言われても、とてもとても…。
デザインを勉強し始めた頃、様々な多角形や図形を定規とコンパスで描いていたのだが、優美で流れるような楕円を描きたかった。コンパスで描いても本当の正楕円は描けない。糸をピンで二カ所止めて描いてみても不安定でとてもスミ入れ(鉛筆でなくペンや烏口で印刷原稿にする)は出来ないし。
調べてみたらアルキメデスの楕円コンパスがある? エッ!二千年以上前から? 当時はネットなんて無かったし図書館で調べたのだが十文字の溝に支点が2カ所あって不思議な動きをする….。自分で作ってみようとはしたのだが….面倒だ(ここが私の欠点である。そして当時は百均やホームセンターが無かったしね)。そうこうするうちにドイツHAFF製で楕円コンパスを見つけた。恐ろしく高い(当時の給料の一ヶ月分以上!)。無理して手に入れたのだが、その完璧さに脱帽しましたね。長径と短径の数字を合わせ回せば好きな楕円が描ける。おまけに鉛筆の代わりにロットリング(0.1〜1mmのインクペン、この0.1mmがよく詰まる。分解して洗い、入れようとすると….何本オシャカにしたことか)が差し込まれる。重宝しましたね。
時は過ぎMAC PCの世界になってからは楕円なんて一撃! おまけに変形も自由自在、隔世の感がありますね。
楕円は何故美しいのだろう?緒方光琳の「紅白梅屏風」の水の渦、スーパーマリン・スピットファイアの楕円翼、その垂直旋回の美しい姿。斜めから見たグラスの切り口(バーの切り絵で有名な成田一徹氏もグラスの楕円の繊細な切り口が命だと)、浮世絵の美人画の瓜実顔、アーモンドのような眼、モジリアーニのフォルム、女性の肉体美も曲線の魔力? DNAだって二重螺旋だ。
曲線は美しい=楕円・放物線・双曲線の3種の円錐曲線、日本の城の石垣の曲線(誰が考えたのだろう?水圧や地圧に対抗して出来たのだろうが、石積みはどうしたのだろう?たぶん大きな木型を作りと思っていたのだが、何と綱を垂らしたら自然とその形が出来る。カテナリー曲線(懸垂曲線・ラテン語の鎖に由来)と呼ぶんだそうだ。中世の石工や職人たち、ほんとに頭イイーッ!
そして何といっても惑星の軌道だ。ヨハネス・ケプラーの法則以来、惑星の運行は楕円である(細かくいえば惑星どうしの干渉で正楕円ではないが…)。古代ギリシャから続く真円だと言われた「天球の音楽」宇宙のハーモニーも楕円でより優雅になった?ケプラーも宇宙の構造を音階で表わそうと神秘学や音楽理論でも考えていたのだろう。 しかし、天球の音楽は実際に聞こえるものではなく、精神で受け取るものだと….。でもホルストの「惑星」、あれはホロスコープが思想が背景にあり出来も僕好みじゃない。
それより唱歌「美しき天然」田中穂積:作曲、竹島羽衣:作詞(明治35/1902年、いつしかサーカスのジンタやチンドン屋のテーマ曲になり下ったが、それもまた消えた)にある歌詞を地球から宇宙に拡大して
〜聞けや人々面白き この天然の音楽を 調べ自在に弾きたもう 神の御手の尊しや〜
こちらの方がいかにも星辰の運行を唱っているじゃありませんか。
8/ 9th, 2012 | Author: Ken |
カモメとヨットと真夏の夜のジャズ。
あの日も頗る暑かった。1975年夏、ロードアイランド州の港町ニューポートだ。あの伝説のジャズ・フェスティバル、その地に立ったのだ。写真家バート・スターンが1958年のジャズ・フェスティバルをドキュメントした「真夏の夜のジャズ」(1960)が忘れられなかった。ジャズと聞くだけで血が騒ぐませたガキで映画に魅入られたのだ。いつか行ってみたい!聞いてみたい!….やっと行けたときはもうフェスティバルは無くなっていた。でも町を歩き回り映画のシーンを思い出していましたね。余談だがあんまり暑いのでジュースでも買おうと小さなドラッグストアに立ち寄った。ところが表のウィンドウに真珠湾空襲の写真がいっぱい飾ってあるのだ。…ヤバイ…ジャップめ!と怒鳴るんじゃないか?親父はニコニコ顔で好人物だ。…表の写真は何?ああ、俺はあの時パールハーバーで闘った。日本人は実に勇敢だった。この前も12月7日の記念日に日本人パイロットを交えて記念パーティがあった。楽しかった。…
閑話休題、冒頭、波が揺れ動く背景にジミー・ジェフリーとボブ・ブルックメイヤーの「汽車と河」が流れる。カーキのスーツが何ともカッコいいんだ!セロニアス・モンク、波、太陽、ヨットレース…映像が素晴らしい。そして、そしてあのオキャンでコケットリーなアニタ・オデイ。「わたしはシンガーではなく、ソング・スタイリストなの」という名言を残した彼女、やっとライブで会えたのが確か87年ロイヤルホースだったか? ハンク・ジョーンズ(p)、フランク.ウェス(fl)、彼女は片手にウィスキーで、アル中気味だけど、そりゃ素敵でしたよ。
そしてジェリー・マリガンだ。深紅のブレザーにバリトンサックス、もう!カッコいいったらない!….彼のライブでは前半はミッドナイトブルーのスーツ、後半はシアサッカーのジャケット、それで「ナイトライツ」や「カーニヴァルの夜明け」なんか演奏するんだ、もうカッコいい!…いつだったかな?確か神戸の国際会館だった。
そしてネイサン・ガーシュマンがチェロを弾いている。部屋は暗くタバコの煙、汗が流れる。曲はバッハの無伴奏チェロソナタ第一番G長調だ。そして映画は夜になりチコ・ハミルトンの「ブルー・サンズ」、マレットがドコドコドコドンドコドコドン〜〜エリック・ドルフィーのフルートが流れるのだ。神秘的で異国情緒あふれるサウンドだ。観客がうっとりと浸りそっと肩を寄せる…60年代の中頃だったか?そのチコが来日した。
場所は神戸の朝日劇場、開演は深夜12時、ギターの異邦人ガボール・ザボ等、夜明けまで演奏に酔いしれたのだ。もう半世紀近い時が過ぎたのですね。夏になれば暑さと共に熱いサウンドが追憶となって心の奥底から蘇るのだ。
8/ 2nd, 2012 | Author: Ken |
飛行するデザイン …. 異形の翼
どのようにしてこんな生物が出来たのか!まさかID(インテリジェント・デザイン)とも言えないし…。ランフォリンクス、まるで中世絵画にある「聖アントニウスの誘惑」に出てくる悪魔そのものの姿だ。画家たちは蝙蝠を意識して邪悪さを描いたのだろうが、こうも似ているとは!(アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」クライマックスの宇宙人の姿には意表を突かれますね)。プテラノドン、これは「大怪獣ラドン」のモデルだ。初代「キングコング」で崖上でプテラノドンがヒロインを鷲掴み?羽ばたきながらコングと闘うシーンは忘れられない。
ケツアルコアトルス、アステカ神話の「蛇神」の名を戴く史上最大の飛行生物だ。その翼開長は12メートルを超えると言われる。第二次大戦期の戦闘機に匹敵する大きさだが軽量構造で重さは60〜70kg位だと言われる。でも不思議だ、小指は退化し薬指が伸びて(蝙蝠は親指以外の指が伸びて皮膜作っている)、それが足との間に皮膜を張り飛行するのだ。羽ばたいてホバリングは無理だろうが横縦比の高い翼はグライダーのように滑空に適していたのだろう。ハンググライダーに酷似しているし、ハイテク戦闘機ステルスF117やB2爆撃機はなんと翼竜に似ていることだろう。近所のデパートで恐竜展が開かれる。行ってみるか、あの子どもの頃のドキドキした興奮が蘇るだろうか。
7/ 27th, 2012 | Author: Ken |
ブルーズの魂
♪ Oh Baby、don’t you want to go Oh Baby、don’t you want to go Back to the land of California Sweet home Chicago…..
よう、べぃびー、おめえ行きたかねーかい、あのカルフォルニアヘ、あんの古巣のシカゴへさ。♪
数あるブルース・ナンバーの中でも超有名「スウィート・ホーム・シカゴ/Sweet home Chicago」。1937年、あの伝説のブルースマン、ロバート・ジョンソンによって録音されたものが根源だ。そして1980年の映画「ブルース・ブラザーズ」で大ヒットした。ブルースまたはブルーズはアメリカ南部の土と汗と涙と哀しみ、人間の複雑なあらゆる感情が入り混ざり、そのジャンバラヤみたいなごった煮のなかから歌として産まれたものだ。田舎臭いのである、ムッとする口臭と腋臭が漂うのである。労働歌でありダサさの極みである。ブルージーである。アーシーである。ミシシッピーの湿気と泥水が母体である。黒人霊歌やハラーソングやワークソング(労働歌)であり、くぐもったダーティなはらわたの声である。そしてそして…..泣き笑いである。言葉でいくら語ろうが、そんなものは聞いてみれば分かることだ。ほら、いいでしょう? 独りでに首を振り足でリズムを取り体を揺すらすでしょう?
ロバート・ジョンソンには伝説がある。彼はクロスロードで悪魔に魂を売って「ブルーズ」を手に入れた….。27歳の若さであの世へ行ってしまったんだ。そういえばジミ・ヘンドリックスもジャニス・ジョプリンもその歳で逝った。余談だが東京の板橋区、成増から赤塚へ向かう道路に「六道の辻」というバス停がある。六道輪廻のあの六道だろう。ここにギターを持って立っていたら悪魔が来て取引を唆かさないものか?….まあ、この道を行くと名刹松月院や東京大仏は近いけれど….。
閑話休題、彼が生涯に残したレコーディングは、29曲(42テイク)だけである。写真も数枚しかない。でも写真を見るとダブルブレストのチョーク・ストライプにストライプタイ、ポケッチーフで決めている。当時のEsquier誌にあるような最高のお洒落姿である。だからだ、ロバート・ジョンソンは土着のブルーズを近代ブルーズにしたところが功績なのである。全米をギターで巡り、様々なスタイルと交わり、ラジオでSPレコードで、新しい時代のブルーズを、音楽を作り出したところを忘れてはいけないと思う。
そうだ!土臭い悲喜劇を作るコーエン兄弟の映画「オー・ブラザー」にロバート・ジョンソンのパロディ人物が出てくる。主人公たちは彼と交差点で出会い、そして…。
まあ、1920年代にスクラッパー・ブラックウェルやココモ・アーノルドがいたし、忘れてはならないのが偉大なベッシー・スミスだ。こんなことを書いているとモダン・ジャズにハマっていた60年代を思い出す。そうだ!ラングストン・ヒューズやジェームス・ボールドウィンの「もう一つの国」、リロイ・ジョーンズの「ブルースの魂」なんかを…..。まだガキだったけれどジャズ喫茶に入り浸りミンガスのBlues & Rootsの「水曜の夜の祈りの集い」なんかに興奮していた自分があった。
You Tube には Sweet home Chicago が数多くある。その中でも気に入ったもの?…ありすぎる!
●Robert Johnson : http://www.youtube.com/watch?v=O8hqGu-leFc ここから始まる。
●Blues Brothers : http://www.youtube.com/watch?v=Tlou_2lMLAc あれからもう30年以上も過ぎたのですね。楽しかった。
●The White House All Stars : http://www.youtube.com/watch?v=BIZAS_tOYOo&feature=related BBキング、ジェフ・ベック、
ミック・ジャガーに…大物たちうち揃いホワイトハウスで。オバマ大統領も歌うのだ!
●Ari Frello & Marcos Fernandez : http://www.youtube.com/watch?v=J_bdArwfmdw ブルースハープがいいね!
●たくさんあり過ぎるから片っ端から聴いてみて!!
7/ 21st, 2012 | Author: Ken |
21g? … 魂の重さの量り方
もうすぐお盆である。お盆には死者たちの霊魂が帰ってくると言われている。じゃ魂はどこにいるのだろう? この宇宙の時空の中を彷徨っているのだろうか? 魂とは観念である。抽象である。非物質的存在であり認識を超えた永遠のものであると…..。
生命や精神の原動力となり死ねば体内から消えると言われる。その「魂」の重さを量ろうとする人がいた。20世紀初頭、アメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルだ。彼は死に瀕した患者を量りに乗せ去り行く魂の重さを量ったのだ。彼は魂の存在を信じていた訳では無さそうだ。魂が物理的存在として実在するなら重さがあると考えたのだ。実験では約30グラム軽くなったと出たそうだ。
まてよ? 人が死ぬと熱は体温が拡散するから熱に変換されるわけがない。魂が分子であり原子から構成されている物体と仮定したら、その質量はどこに消えたのだ? 1gの質量は約 9×1013(90兆)ジュールのエネルギーに相当する。そうすると90兆ジュール×30のエネルギー….? そんな!! じゃ、質量とは何だ? ついこの間、素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」が見つかったというニュースが世界を駆け巡った。CERNのLHCの衝突実験で新たな粒子を発見、これがヒッグス粒子だというのだ。… 昨年にもニュートリノは光速より速いというニュースがあったが、観測間違いと否定された。今回のヒッグス粒子は本当なのだろうか?… 素人ながら興味津々だ。宇宙の謎が僕の世代に見つかるなんて!… 前にレオン・レーダーマンが書いた「神が作った究極の素粒子」という本を読んだことがある。彼がいう“神の素粒子”こと、ヒッグス粒子という仮説粒子の存在でである…。僕にはゲージ場やその理論はとても説明できないが….。閑話休題…「魂」なんてとても物理的実在じゃないけれど、それが身体の中にあることは実感している。会話でもしょっちゅう使う。「この音楽や絵には魂がある」「スピリットこそ人間の行動原理だ」「ブルースはソウルだ」なんてね。
人間には「生きる根源として魂の観念」が植え込まれている。たぶん脳が作り出した幻想なんだろうけれど…..。(一昔前に臨死体験がブームになり体外離脱なんて言葉が流行ったものだ。ウィリアム・ブレイクの絵を見ていると、画家は本当に見えていたのではないか?…… 幻視や幻聴が見え聞こえる人に対して僕たちは無力だ。否定・証明のしようがないからだ)
■「魂の重さの量り方」レン・フィッシャー/著 林 一/訳:新潮社 この本は「魂の量り方」だけを論じているのではなく、自然科学における「事実に対する信念の検証」といった啓蒙書である。ピーター・アトキンスの「ガリレオの指」もおすすめです。
■「神が作った究極の素粒子」レオン・レダーマン/著 高橋健次/訳:草思社….とても楽しみながら読めます。
■「21グラム」2003年アメリカ映画/アレハレド・ゴンザレス・イニャリトゥ監督、ショーン・ペン主演:心臓移植を受けた男と妻、提供した家族、その男を事故で死なせた男と家族、その時間軸が交差し「人がいつか失う重さ」とは、何なのかを問う。題名の「21グラム」とは、医師ダンカン・マクドゥーガルが行った「魂の重さ」を計測しようとした実験に由来する。イニャリトゥ監督の映画は暗く重い。やりきれない。救いがない。ああ。
6/ 13th, 2012 | Author: Ken |
御先祖様万歳… どこの馬の骨やら。
●
まあ、どこの馬の骨かは分かんやつだが、いま僕がここにいるということは二人の両親がいたからだ。両親にはまた四人両親がいてと…。祖父と祖母だ。そして八人の曾祖父と曾祖母がいて…..。これを繰り返すと10代で1,024人、20代で1,048,576人、30代で10億73百74万1千824人となる。平均30歳で世代交代するとしたら30×30=900年前、40代遡れば約1兆人と。 まあ、これは累計だからあくまで数字上のことだ。100代遡れば30歳×100=3000年前、縄文時代だ。文献によると日本列島には8〜15万人位住んでいたと。
でも確かに御先祖の人物がいたのだ(こんな馬鹿な奴は俺の子孫ではない!というだろうが)。石斧を持って猪でも追いかけていたのか、ドングリを拾っていたのか知らないけれど…。その御先祖もこの日本列島に黒潮に乗って流れ着いたのか、氷河期に北からナウマン象を追ってやってきたのか、あの山の向こうはもっと食い物がありそうだとね。人類がアフリカを出たのが約10万年前だとういう。それからトコトコ歩き続けてユーラシア大陸を縦断し、この地に着いたのだ。ヨーロッパにはつい数万年前までネアンデルタールという親戚もいたが消えちまった。その前はアウストラロピテクスだし、その前は….。完新世 → 第四紀 → 第三紀 → 白亜紀 →ジュラ期 → 三畳紀 → ペルム紀 → 石炭紀 → デボン紀 → シルル紀 → オルドビス紀 → カンブリア紀(僕の指が5本というのもいつ決まったのだろう?最初に5という原型があるのだろうね、それ以来連綿と…)→ 原生代 → 始生代と。→ 太陽系・地球の誕生47億年前→ ビッグバンが137億年前と。
… 考えりゃ不思議だね。ウム、こんな俺みたいなのがいるのは宇宙があるからだ!と言って「人間原理」でもあるまいし。分からんね。まあ、我が貧乏家系には由緒ある系図なんてあるわけないし、代々食うや食わずの水飲み百姓だろうよ。源氏や平家の子孫を誇る人もいるけれど、何を言やがる、どこかで御親戚じゃないか!チンプ君とね。万世一系だって?君だって系図は無いけれど「いまここにいる」のだから繋がっているのサ。リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」じゃないけれどDNAに書き込まれた情報を受け継いで長い旅をしてきたのだ。お寺の過去帳なんか調べたら7代位前まで分かるんじゃないかな。祖父も祖母も全く知らないが、明治からは微かな記録もあるだろう。タイムマシンがあったら御先祖さんに会って「おい子孫にもっと金でも残しとけ!」と言いたいが、どうせドジでツイていない家系だろ。落胆するのがオチさ。