4/ 11th, 2010 | Author: Ken |
噫無情…レミゼラブル。
ああ、アイディアが欲しい!痛烈な飢餓感に襲われている。オレってなんて頭が悪いんだ、おい、考えろよ。… 索漠たる荒野である。
乾ききった雑巾である。出ない物は出ないのである。幾夜悶々と悶えても無い物は無いのである。鬱を通り越した虚無である。
円形脱毛症にもなった。酒を飲み馬鹿話に興じて見せるが一向に埒は開かない。顔では笑っているが、これは仮面である。
考え事をしていて、スーパーでレジを通らずに気がつけば籠を下げたまま表通りで気がついたこともある。まるで認知症状である。
返しに行くときの入り口やレジの恥ずかしさと恐い事(ここまで挙動に無意識なら警備員も気がつかない)。…. 歳だろうか?
アイディアを生業として今日まで生きてきた。それもノーベル賞でも狙おうとするほどの大義でもあればいいよ。クリエイティヴと
言えるほどの創造的な仕事ならいいよ。たかが企業の提灯持ちの企画やデザインの世界じゃないか……。
アイディアってなんだ?….ムム、古くはギリシャのプラトン哲学の idea から始まり「見る」という意味に由来している。
それは肉眼に見える形ではなく、「心の目」によって洞察される純粋な形、つまり「ものごとの真の姿や原型・理念」だと。
ふーん、そこまで難しく考えなくて、シャイニング、閃き、発想、着想、思いつきでいいんだよ(スターウォーズではフォースと言
っていたね。滝田ゆうの漫画では電球の光るフキダシがあったね)。…..と、真剣にわが身を削って考えているんだよ。
酒をきこしめしたらバンバン、アイディアが飛び出して、これだ!メモしとこ。と翌朝見直したら、嗚呼!通俗・凡庸、わが身を嘆く
ね。所詮、平々凡々のわが頭よ、願わくば….。結局、締切間際になって無理矢理絞り出した妥協なんだが、答えがどこからともなく
やって来ることもある。….だから鬱になりお酒を飲むんだ。これって自己弁護? 大袈裟に言えば魂の告白?
チャンチャラおかしいー、カッコつけんじゃねーよ。分かっているさ、自分でやるっきゃないんだよね。……レミゼラブルだね。
4/ 10th, 2010 | Author: Ken |
Best Bar of New York
友人からニューヨーク土産に本をいただいた。「Best Bar of New York」うん、2〜3軒なら知っている。その記憶が懐かしくも蘇ってきた。マンハッタンの59 West 44th。1902年にオープンした名門アルゴンクィン・ホテル、エスクアイヤーやニューヨーカー誌の編集者や作家たちが屯しているというオークルームとブルーバーだ。高齢の名物バーテンダー、ホイ・ウォン氏がいる。
彼を友人の切り絵作家、成田一徹氏が絵にしたのだ。ぼくもN.Y.に行く事になり成田氏が絵を届けてほしいと。それが上の絵だ。ホイさんに手渡すとみんなが集まり、凄い!そっくりだ!おかげで楽しい時を過ごせた。
連日ニューヨークは大雪で、重いコートに傘をさして毎夜飲みに出かけたのだが、915サードアヴェニューにあるP.J.クラークスも忘れることができない。創業1884年、何とも古めかしいところがいい。肩の雪を払っていたら隣の飲んだくれの婆さんが何かと話しかける。こちとらは英語は不調法なもので困ったね。でもいい人なんだろう。ニューヨークに住んでいるのか、ここにはよく来るのか、ハンバーガーを食ったのか、二杯目はアイリッシュ・ウィスキーにしろとかね。でも楽しかったよ。
外国で飲む酒は何んだか映画のエトランゼの気分にしてくれる。酔った頭にシナトラのN.Y.N.Y.が流れていたと言いたいのだが、歌詞も忘れた。ミスター・ホイも引退したと風の噂に聞いた。成田氏とバーのカウンターにもたれ、いつか一緒にニューヨークに行こうと話してはいるのだが…。
The History and Stories of the Best Bar of New York Written by Jef Klein photographis by Cary Hazlegrove TURNER
4/ 8th, 2010 | Author: Ken |
聖性と俗性
映画「カラヴァッジオ」を見た。監督:アンジェロ・ロンゴーニ(製作イタリア)。バロックの画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi Caravaggio 1571〜1610)、37歳で逝った天才の波乱に満ちたスキャンダラスな生涯を描く。
時代考証も確りし、絵画製作過程も再現している。「果物籠」「蜥蜴に噛まれる少年」「バッコス」「聖カタリナ」「いかさま」「ユディト」「蛇の聖母子」「洗礼者ヨハネの斬首」など有名なものはほとんど網羅している。俳優も絵のそっくりさんを使い、制作の様子も映像として再現していて面白い。「聖マタイの召命」動画を一瞬で切り取ったようなダイナミックで劇的な絵だ。この光を見つけるシーンは興味をかき立てられた。
この絵の明暗法は、後に夜の画家と言われたラ・トゥール、そしてあのレンブラントへと発展していく。あの17世紀前半に光と影の明暗、まだ広角レンズの無い時代に短縮法描く迫力など、ほんとうに時代を越えている。
モデルは市井の人間であり、俗っぽい笑みや厭らしさがより人間を見せつけるのだ。人間の持つ生臭い俗を描くところが何とも凄い。映画は伝記に忠実であるのはよいのだが、内面を描こうとするあまり「ペスト・死」の象徴としての黒騎士の悪夢は余計だと感じた。(PTSD? また映画アマデゥスの影響か?)また音楽で盛り上げようとして不快な不協和音を使ったり、クロスカッティングで絵を見せるところは使い古された手法だし、もっとバロック音楽の華やかさの裏の悲しみや押さえた演技が欲しかった。(前にデレク・ジャーマンの「カラヴァッジョ」も見たが監督がゲイであるだけにホモセクシャル映画であった)。
凄い絵といえば残首されたカラヴァッジョ自画像を描く「ゴリアテの首を持つダヴィデ」は恐ろしい絵だ。これもアレッサンドロ・アッローリが「ホロフェルネスの首」にカラヴァッジョの強い影響を見る事ができる。….1610年7月18日、希代の画家ポルト・エルコーレで死す。…..カラヴァッジのすべてを見たいのだが、そんなことは不可能だし画集や本で辛抱しているのだが。
●「カラヴァッジオ」ミア・チノッティ 森田義之 訳 岩波書店:その生涯と全作品、A3判で印刷も良い。全作品カタログ付。
●「カラヴァッジョ灼熱の生涯」デズモンド スアード 石鍋真澄・真理子 訳 白水社:波瀾万丈の生涯を史料と研究をもとに描く。
●「カラヴァッジオ鑑」岡田温司 編 人文書院:フリード、ロンギまで、論者17名によるカラヴァッジョの世界。
●「カラヴァッジオ」宮下規久朗 名古屋大学出版会:血と暴力に彩られた破滅的な生涯を描く。彼は多くのカラヴァッジオを書いて
いる。彼の市民講座にぼくも通っていたことがあるのだ。なかなかユニークな人で顔までカラヴァッジオ風の異才である。
4/ 7th, 2010 | Author: Ken |
戦艦大和ノ最期
満開の桜である。昭和20年(1945)4月7日、戦艦大和は沈んだ。それは、戦争を知らない世代にとって語る資格はないのだろうか。
日本人には悲壮感を伴ってこそ自らを鼓舞する意識が強い。白虎隊、神風特別攻撃隊、吉田満著「戦艦大和」を現代の平家物語とさえ例える評論家もある。全編文語体。文語にはリズムがあり暗唱にたえ、口語は黙読すると、山本夏彦は書くが、まさに文語の速度感で一気に読ませる。文章は一気呵成、あまりにも雄々しく美々しい。しかし、置かれた状況として無理もないが、予備学生といえども士官のからの視点である。ほとんどの死が下士官・兵であったことを思うとき、彼ら沈黙の声があることを考えてしまう。
あの時代「断じて行えば、鬼神もこれを退く、天佑は我にあり」の神がかった熱弁や、作戦は壮烈無比の突入…、光輝ある帝国海軍水上部隊の伝統を高揚する…一億総特攻のさきがけという面子など、作文と気分が優先し、疑問を持ったまま菊水一号作戦は開始された。
結局は石油が枯渇し巨体を柱島にさらすより死に際に華を咲かせたい、という現実から遊離した観念である。また片道燃料で出撃との説が広範に流府し悲劇性を増しているが実際は4000トンの往復分は積載した…。玉砕、散華、言葉は美しいが滅びの美学に陶酔していたのだろうか。たくさんの若者が死んでいった。大和が目指したその沖縄もいま基地問題で揺れている。
….あれから65年、いまだからこそ「愚」とか言える。私がその時代・立場であったなら何を感じ、また何を書き残せたであろう。
「戦艦大和と戦後」吉田満 保坂正康 編 筑摩書房:何度も改稿されたその決定稿といえる。
「戦艦大和の最後」坪井 平次 著 光人社:下士官・兵の立場から書かれた記録である。淡々と書かれ別の凄味すら感じられる。
映画「戦艦大和ノ最期」1953年、監督:阿部豊 応援監督:松林宗恵 昨年の今頃、松林宗恵さんのお話をうかがった。
彼も8月15日に逝った。「そう、皆死んでいったんだよ。彼らの言葉を代弁したいんだよねー」。その言葉が耳朶に残る。
4/ 3rd, 2010 | Author: Ken |
共和国から帝国へ、そして…。
BANANA REPUBLIC 「バナナ共和国」。いまもブランドはあるがこれは別世界のことだ。ぼくが好きなのは、あのカーキースで埋まった店のことだ。まず仰天した。入り口は象牙のブッ違い、店内には巨大なアフリカ象、傾いたジープ、岩が転がしてあり、天井からはゼブラ模様のセスナが吊り下がっていた。商品棚は竹と厚板で藤蔓で縛ってあり、それにサファリ・ジャケットやチノス、バッグや帽子がいっぱい置いてあるのだ。ここまでやるか!という面白さなんだ。
これはパトリシアとメル・ジーグラー夫妻が70年代後半に始めた店だ。そして、カタログのコピーが何とも人を食った文章だ。ブリティッシュ・アーミー・ショーツには、「まだ英帝国が創世記のころ、ただの一兵卒でも士官やジェントルマンのような服を着ていた。なぜかと言うと最高の仕立てはキュッカンバー・サンドイッチのようにブリティシュであるからだ…」(キュッカンバー・サンドイッチなんて英国の上流階級?しか食べないし美味しくない)、とか。
ポロシャーツには「ぼくは前から胸に鰐(ラコステ)を飼っていたのだが、近所の人たちを食べ始めたから止めた。胸にポニーを走らせているやつ(ラルフ・ローレン)、ぼくはそんな家柄じゃないし….、だから何もついていないポロシャーツがほしい」。
そして「夢見る人に、冒険家に、専門家に、 ディレッタントに、父さんに、母さんに、…ユニークな人のために、他にする事があって服なんてどっちでもいい人のために」なんて書いている。
服を売っているくせにね。この考え方に唸った。ふーん、知的お遊びなんだ。これを分かる人が笑いながら買うんだ。その考え方気に行った!とね。世界中にバナナを真似した店が出来たけれど、みんな大したことなく消えた。上ッ面だけ真似してコンセプトまで真似できなかった。…そしてバナナ共和国は全米に店を出し帝国を築き上げた。でも大きくなるとGAPに会社を売っちゃった。
名前は残ったけれど、当たり前の店と服になってしまった。時代の波だ、共和国の終焉だ。ぼくはもう着ないけれどバッグやカーキなんかを物置に大事にしまってある。
4/ 1st, 2010 | Author: Ken |
April Fool
祖父の遺品を整理していたら妙なものが出て来た。確か明治の末に赤ゲットであったとは聞いてはいたが…。
こんな日乗の切れ端がついていた。…明治四十一年、四月朔日、吾、欧羅巴洋行より帰邦し折り、喜望峰を超え阿弗利加まだがすかるの小諸島にて石炭積み込みのため停泊。暑気殊の外強くあまりの無聊さに慰みとして腕に憶えある夜釣りと相成った。糸を垂れる事数刻、凄まじき引きに甲板より引き込まれそうになった。激闘数刻、汗淋漓と流れ、精も根も尽き果てやうとした頃やうやくにして巨魚を釣り上げた。その容貌怪異にして怪しき燐光を放ち足るが如し。はて何という怪物ならんと土人に聞くや、ごんべっさ、権兵衛佐と騒ぐ。昔より神の使わしたる魔魚にて凶事あるとて海に還せとしきりに言う。この奇っくわいなる魚、刺身にして食うべきにもあらず魚拓を撮りて海へと還した。船長のあいざっく・うぉるとんjr.が言うに、これ、すこっとらんど、ろっほ・ねすなる湖に古き伝説あり、その仲間なるらんと。それにしても大洋は不思議ではある…
このように日記には書いてあるが祖父は明治の男ゆえ気宇壮大、話も大袈裟であったと聞く。まあ、信じるか信じないかは勝手だが。
3/ 29th, 2010 | Author: Ken |
MJQ
Modern Jazz Quartet ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds)、…..いまはもう誰も
いない。当時ファンキー、アーシー、ソウル、ハードバップ全盛期に、まるでクラシックの弦楽四重奏のような繊細でクリスタルの
響きを聞かせてくれた。ベルサイユ、フォンテッサ、コンコルド、黄昏のヴェニスなど題名までヨーロッパそのものだし、集合即興
演奏などバロックとジャズの融合だった。優雅で、デリケートな叙情があり、まさにフーガの技法である。華やかで新鮮で美しいメ
ロディー。知的な大人のジャズであった。CONCORDにおける「朝日のごとくさわやかに」…M・ジャクソンのヴィブラフォーンが
何とも素敵なイントロを奏でるのだが、最初は知らなかった。後にバッハの「音楽の捧げもの」を聞いていたら、アレッ、これって
No.3のカノンじゃないか!MJQが何ともお洒落に取り入れていたもんだ!と。(1747年、老バッハがフリードリヒ大王の宮廷を訪ね
た際、ハ短調テーマを大王より与えられた。バッハはその場で即興演奏を行ったが、後に作品に仕上げ献呈した。それが音楽の捧げ
ものである)。…..MJQ初来日当時は、アート・ブレイキーの熱く激しいファンキーさに酔っていた。特にM・ジャクソンはハード
バッパーとの競演が多かったし「プレンティ・プレンティ・ソウル」というブルージーなレコードもあった。ところがMJQでは押さ
えた演奏で、かえって際立つのだ。確かにバロックとジャズはポリフォニー音楽だし、即興演奏なども似ている。…それからダブル・
シックス・オブ・パリス(6人編成のスキャットによる合唱、後にスィングル・シンガーズ)、ジャック・ルーシェも盛んにバロック
ジャズを演っていた。…..バッハ「音楽の捧げもの」トリオ・ソナタ、一晩中でも聞いていたい音楽だ。大王のテーマがフルートで現
れるところなんて……。MJQ、メンバーはみんな逝った。だが、その音はいまも耳に残っている。
3/ 27th, 2010 | Author: Ken |
何だか…。
環境問題が喧しい。地球温暖化、温室ガス、不都合な真実、排出量取引、マイ箸、シーシェパード….。エコの大合唱だ。
もちろん環境問題こそ一番大事なことであることは誰だって分かっている。地球は有限であり、ここ一世紀ほどで人間がとんでもなく破壊してきたことは事実である。でも、何だか変なのだ。エコって声高に叫ぶ人と話したら以外と地球や環境に無知である。思いだけが先鋭化して、生きていることがまるで悪であるかのように言う。エコ、エコ、エコエコアザラクって呪文みたいなもんだ。
じゃ、一番環境を破壊しているものは何だ?と質問したらはっきりと答えない。簡単なことだ。軍隊であり戦争だ。世界の軍事、核兵器、戦車、戦闘機、そんなものがどれだけの金と頭脳とエネルギーと人命を奪っていることか…。人間の猜疑心と恐怖と権力と金儲け、エゴこそが元凶だ。
また文明があるから大災害があり戦争をする。1万年前なら大地震があってもほとんど被害なんてなかっただろう。
結局は人間の文明の傲慢なんだろう。…と言って原始に帰れと言うわけじゃない。みんなが少し生活を控えるとか押さえれば済む事だ。
何もマグロを一皿100円で食べなくてもいいじゃないか。安いからといって百均で少し心を痛めながら買物することもないじゃないか。
そういえば日本はバイオ燃料の先進国だった。太平洋戦争末期、飛行機燃料のため松の木から松脂を集め、松根油を採り、薩摩芋からアルコールを作り、自動車は木炭だった。またヨモギを小学生に採らしたのは、それを床下に撒いてオシッコを掛け硝酸を作り、黒色火薬を作ろうとしたのじゃないか?「貧すりゃ鈍する」の例え通り、竹槍というバイオ武器まで持たしたのだから…。
じゃ、ぼくは? 矛盾の塊である。正直に言って分からない。ただ慎ましく生きたいと思う…歳だしね。
●「地球生命圏 – ガイアの科学」ジェームズ・ラヴロック 工作舍:例え話としては素晴らしい。
●「核の冬」カール・セーガン:まるで白亜紀末期のような世界。核こそ環境破壊、個人の死ではない、種としての人類の滅亡である。
●「不都合な真実」アル・ゴア ランダムハウス講談社:未来に破滅があるかもしれない。だからいま未然に防ぐために努力するのだ。
●「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」「リサイクル幻想」武田 邦彦:この人の本、何かオカシイですね。「トンデモ」までとは言わないが、学者の偏見? それとも本を沢山売るために?
●「昭和二十年」首都防空戦と新兵器の開発 鳥居民 草思社:日本人はこうだったのだ。膨大な資料を基にした労作。
3/ 22nd, 2010 | Author: Ken |
名探偵登場…何でも十傑。
探偵稼業もやり辛くなったものだ。携帯電話、GPS、監視カメラ、司法解剖、ガスクロマトグラフィー、DNA鑑定、毒物の組成を調べるためにSPring8まで使うのだから。密室殺人、凶器、トリック、そして大団円という図式が成立しなくなった。だから探偵が輝いていたのは19世紀後半から20世紀前半なのである。いかに読者に挑むか作者たちが技巧と知恵を絞った時代である。推理、ミスディレクション、倒叙、安楽椅子探偵….。これら珠玉の作品を愉しむのはこの上ない悦楽である。とても十傑を選べといっても無理なので、あくまで私の印象に残る作品の紹介である。E・クインや江戸川乱歩の選んだのとほとんど同じになってしまった。
⚫️「盗まれた手紙」エドガー・アラン・ポー:史上初の探偵C・オーギュスト・デュパンの登場(1841年・モルグ街の殺人)。
⚫️「唇のねじれた男」コナン・ドイル:あのシャーロック・ホームズがアヘン窟にいた。….商売は三日やったら止められない。
⚫️「ダブリン事件」バロネロ・オルツイ:安楽椅子探偵、隅の老人。名前も何も分からない謎の老人が推理力で…。
⚫️「13号独房の問題」ジャック・フィットル:オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン、思考機械の登場。フィットルは1912年タイタニック号遭難事故で死亡。
⚫️「赤い絹の肩かけ」モーリス・ルブラン:あの紳士にして強盗、詐欺師、冒険家、アルセーヌ・リュパンが活躍。
⚫️「オスカー・ブロズキー事件」R・オースチン・フリーマン:当時最新の法医学や鑑識技術を取り入れ、一見不可能に見える事件を科学的に解明。ソーンダイク博士の頭脳が冴える。
⚫️「ギルバート・マレル卿の絵」ヴィクター・L・ホワイトチャーチ:走行中の列車から目指す一両だけをどうすれば抜きだせるのか?
⚫️「堕天使の物語」パーシヴァル・ワイルド:カードゲームのトリック、その労力たるや…。奇術師ロベール・ウーダンによるいかさまの話からと言うが果たして。
⚫️「茶の葉」エドガー・ジェプスン&ロバート・ユーステス:トルコ風呂殺人、凶器は何だ?…この手はいっぱい模作を生んだ。おかげで今ならすぐ思いつく。凶器は….の槍で殺したというのを読んだことがある。
⚫️「密室の行者」ロナルド・A・ノックス:密室殺人、食料が豊富な部屋にいて、なぜ餓死なんだ?
⚫️「二壜のソース」ロード・ダンセイニ:死体を隠せ!なぜ薪割りなんかしているんだ。
現代ではアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」会話を聞いていた給仕のヘンリーの推理が冴える。「ユニオンクラブ」微睡んでいた意地悪爺さんグリズウォルドがやおら目を覚まし…。大好きだ。 他にもエルキュール・ポワロ、ブラウン神父、ドルリー・レーン、アンクル・アブナー、マックス・カラドス、ミス・マープルなどなど、いかに個性的探偵を創作するかと多彩である。わが国にも明智小五郎、金田一耕助、三河町の半七、神津恭介と…。
3/ 19th, 2010 | Author: Ken |
砂漠の魔王だ!
この凄い絵を見てくれ!「砂漠の魔王」だ。いまは昔「少年」「少年クラブ」「譚海」「冒険王」などの少年雑誌に心をときめかした。
漫画や工作模型がいっぱい付録にがついていてね。その中でも冒険王の「砂漠の魔王」には仰天した。そのカッコ良さなんてもう!
当時の漫画の概念と全然違うんだ。冒険、探検、怪奇、神秘、神話、怪獣、新兵器、奇想天外、荒唐無稽、縦横無尽、リアリズム、エキゾチシズム、極彩色、新鮮、苛烈…。敗戦の廃墟のなかから忽然と魔王が現れたのだ。
腹を空かせた少年にとって空想の世界こそ輝いていたからね。描いたのは福島鉄次先生だ。いまならアメリカン・コミック影響だと言えるのだが、まだ劇画という言葉も生まれていなかった時代に、こんな凄いデッサン力を持った人がいたのだ。ため息が出ますね。
それから小松崎茂の西部の少年シリーズ、山川惣治の少年王者と続いて行く。ああ、リンゴ箱に一杯こんな本を貯めていたのにどこかへ消えてしまった。本当に惜しい事をしたものだ….。今見ても昂りますね。