12/ 6th, 2009 | Author: Ken |
シュレディンガーの猫はお元気ですか。
「量子力学のからくり」「原子爆弾」山田克哉著/ブルーバックス
「量子力学が解ったって? 解っていない証拠だ!」と、あのノーベル物理学者ファインマンさんは言った。ホント、量子力学って
イメージが作れないんですね。スリット実験なんか、そうか!と思いながらそんな馬鹿な!そうなるんだと納得するしかないんで
すね。観察することにより収斂する? やかんのお湯が沸くのも観察していたら遅くなる? シュレディンガーの猫も生きていて死
んでいる? その重ね合わせの幽霊波ってなんだ? この本は量子力学の歴史と量子の不思議な振る舞いを実に分かりやすく解説し
てくれている。たくさんの入門書を読んでみたがこれが一番分かりやすい。その量子力学から生まれたのが原子爆弾だ。いま世界
に2万6千発以上があり、臨戦態勢にあるとは!愚行の愚行だ。もし核戦争が起ったら、それは個人の死でなく人類の滅亡だ。
しかし、原子爆弾がどのようにしてつくられたか? その構造は? 以外と説明してくれる本を見たことがない。
この本は歴史のエピソードも添えて、原理、開発、実験と図解入りで見せてくれる。
量子力学は難しい。でも、いまパソコンを打っているのもブログも量子力学を基に作られているのだから…。
12/ 4th, 2009 | Author: Ken |
何でも十傑プラス10 … 冒険小説
バッハは(小川)ではないメール(大洋)だ。とヴェートーヴェンが言った…。E.A.ポーは「ユリイカ」「ハンスプファール無類の冒険」「アッシャー家の崩壊」「早過ぎた埋葬」「モルグ街の事件」「メエルシュトレエムに呑まれて」「大烏」とSF、推理・探偵、恐怖、怪異、冒険、あの素晴らしい詩。全てポーに行き着く。メール(海)なのである。だから別格として別の機会に。
冒険小説といっても幅が広い。探検、サヴァイヴァル、ミステリー、刑事・探偵、戦争、スパイ、山岳、海洋など様々なジャンルがある。さて、悩んだ末、面白い順番で選ぶしかないだろう。と言うものの難しいことこの上ない。そこでプラス10として選んでみた。
1.「高い砦」デズモンド・バグリー:ハイジャックされアンデス高地に不時着した人々が、独裁政府軍に襲われた。高山病に苦しみながら石弓を作り…。「爆走大陸」原題ジャガノート。舞台はアフリカ、政変、ジャガノート(山車)のような巨大トレーラーで脱出を図るが…。
2.「北壁の死闘」ボブ・ラングレー:アイガー北壁、神々のトラバースで凍りついた遺体を発見。ナチ騎士十字章と美女の写真が…。
3.「女王陛下のユリシーズ号」アリステア・マクリーン:対ソ支援のコンボイがムルマンスクへ…。護衛艦ユリシーズの死闘。
4.「A-10奪還チーム出動せよ」S.L.トンプソン:冷戦下、東西ドイツに暗躍するスパイチーム。頼りになる相棒は5000ccV8搭載500馬力のフォード・フェアモント。とにかく手に汗握るカーチェイス。
5.「深夜プラス1」ギャビン・ライアル:プロフェッショナルとはこういう男たちなのだ!
6.「ジャッカルの日」F.フォーサイス:読み出したら止めれない。気がつけば朝だった。
7.「戦争の犬たち」F.フォーサイス:キャット・シャノンいい名だ。さあ、戦いの犬を解き放て…シェイクスピア。映画「ワイルドギース」も傭兵ものとしてなかなかでした。…… 傭兵たちの挽歌。
8.「シャドー81」ルシアン・ネイハム:戦闘機がジャンボジェットをハイジャック。この奇想天外がいい。
9.「飛べフェニックス」エルストン・トレヴァー:砂漠に不時着した双胴機を改造して脱出しようと…。その設計者が実は…。映画も実に面白い。アルドリッチは職人だね。飛行シーンはポール・マンツ空軍、彼はこの撮影で還らぬ人となった。
10.「ロビンソン漂流記」ダニエル・デフォー:1719年刊行。サヴァイヴァルものの嚆矢。ということはスウィフトの「ガリバー旅行記」の方が冒険に次ぐ冒険だね。平賀源内もそんなの書いていたっけ?
11.「白鯨」ハーマン・メルヴィル:これを冒険小説に入れるかどうかは別として、海洋冒険としては頗る面白い。白鯨とは何か?悪の象徴か?
12.「血の収穫」ダシール・ハメット:ハードボイルド、映画「用心棒」の基と言われる。そうなると「マルタの鷹」も。
13.「バスカヴィル家の犬」コナン・ドイル:今さら言うこともなしS・ホームズの最高作。ワトソン君、君なら二十傑をどう推理するかね?
14.「さらば愛しき人よ」R・チャンドラー:これもハードボイルドだけれど。映画ではロバート・ミッチャムのが一番だね。けだるいテナーをバックにネオンの点滅が映る窓。「最近疲れを憶える、歳のせいか?この気候のせいか?」泣かせるね。この中年男がいいんだ。シャーロット・ランプリングの何かを含んだ眼、悪女ぶり。そしてジョー・ディマジオの連続ヒットなんかが絡んでね。
15.「鷲は舞い降りた」ジャック・ヒギンス:チャーチル暗殺の指令を受けて鷲は飛び立つ。デブリンは「私が最後の冒険者だからだ」とシュタイナに答える。葉巻をくわえた男の暗殺に成功するが…。
16.「野獣死すべし」大藪春彦:ソ連軍のバラライカに追われて引上げ者としての過去。彼の自叙伝?映画では仲代達矢でしょう。松田優作のも見た。これは酷い!戦場カメラマンのPTSD、その大演説。堪え難いほど陳腐。何で音楽がアルビノーニのアダージョなんだ。
17.「海底2万マイル」ジュール・ベルヌ:SFの分類?海洋冒険大活劇。子供心に映画も興奮したね。ネモ船長は複雑な過去と心の持ち主、パイプオルガンでバッハのトッカータとフーガなんて。
18.「黄土の奔流」生島次郎:金に匹敵すると言われる豚毛を求めて揚子江を遡り重慶へ…。
19.「砂のクロニクル」船戸与一:クルドの武装ゲリラ、ホメイニの革命防衛隊、片足の日本人。彼女の死、そして、いま生を終る。
20.「アラスカ前線」ハンス・オットー・マイスナー:日本人特殊部隊がアラスカで…。変な日本の戦艦の名前、何か風船爆弾を思い出すね。まあ、最後はハッピーなんだが。
番外「敵中横断三百里」山中峯太郎:椛島勝一の挿絵がいいんだ。昔、映画も見たよ。「海底軍艦」押川春浪:電光艇と桜木大佐の活躍や如何に?「インディジョーンズ」「トム・ソーヤー」「針の眼」「アイガーサンクション」「ストーンシティ」「人外魔境」ほかにもいっぱい!いっぱい!思い出したら書き直します。
12/ 2nd, 2009 | Author: Ken |
第三の男 The Third Man
“第三の男”あのチターのメロディーが……。荒廃した「維納(こう書きたいね)」ウィーンを舞台に米英仏ソの四カ国による恊働管理下。
廃墟、荒んだ人間、東欧諸国やハンガリーからの難民、心まで荒廃したブラックマーケットに暗躍する悪人。
建物に巨大な風船売りの影が伸びる、足元にじゃれつく猫、一瞬の光のなかにハリー・ライムの不適な顔、モノクロの光と影がこれほど効果的に捉えられた映像はちょっとない。それもそのはずカメラはあの「意志の勝利」や「民族の祭典」を撮ったレニ・リューヘンシュタールの恋人だったハンス・シュニーバーガーだ。またアリダ・ヴァリの顔のショットでは決して白い歯を見せない。いつも影なのだ。それが神秘的な美しさをより引き出している(お歯黒もその美の強調?)。そしてプラーター公園の大観覧車。
ハリーがうそぶく「ボルジア家30年の圧政はルネサンスを生んだ。スイス500年の平和は何を生んだ?鳩時計さ」(これは英国19世紀の画家ホイッスラーの言葉だそうだ)。地下水道の追跡、マンホールから指だけがもがく…。中央墓地、哀愁のチターが流れる、アリダ・ヴァリは待ち受ける男に一瞥もくれずに歩き去る…。アントン・カラスのチターが枯葉とともに … 忘れがたいシーンである。
名画中の名画だろう。グレアム・グリーンの原作では「彼女の手は彼の腕に通された」とあるが。映画の方がはるかに深い印象を残す。グリーンも「結果は彼リードの見事な勝ちだ」と認めている。1949年制作、監督キャロル・リード、音楽アントン・カラス。
※ダッフルコートにベレ。トレヴァー・ハワード(モントゴメリー将軍もこんな格好していた)も忘れ難い。
12/ 1st, 2009 | Author: Ken |
何でも十傑……戦争映画編
1.「西部前線異常なし」レマルク原作、監督 ルイス・マイルストン。1930年アメリカ製映画。鉄条網に突撃してくる敵を機関銃がなぎ倒すシーンは凄絶だ。そして休暇、学校、前線復帰、静かな塹壕、蝶に手を伸ばす。……..その日、西部前線異常なし。
2.「人間の条件」五味川純平原作、小林正樹監督。全6部の総上映時間は9時間31分。戦争における人間性とは。かっては日本でもこんな映画が作れたのだ。TV版は加藤剛主演。戦争を越えた世代が少なくなっていくいま、もう戦争映画は作れないだろう。
3.「人間魚雷回天」松林宗恵監督。…「僕たちは何て時代に生まれたんだ」「Es ist Gut これでいいんだ」その言葉を残して出撃。
4.「二十四の瞳」監督木下恵介。海の色も、山の姿も、昨日につづく今日であった…。出征兵士を送る打ち振る旗の列、軍歌。白木の箱の帰還。戦争シーンはないが重い戦争の影が覆っている。「この写真だけは見えるんや」そして仰げば尊し…木下監督は歌が好きだ。歌が時代の大きなうねりの中の人間を描いている。同監督の「陸軍」この最後の約10分に凝縮されている。遠くに進軍喇叭が…母が駆け出す…歓声と人の波…〜軍靴の響き地を圧し血潮溢れて出ゆくぞ〜…息子を探す…顔を見つめる…兵士が去って行く…手を合わす。武運長久を願ったのか? 否、子の母である。これが敗色濃い時代に陸軍省からの声で作られた映画とは!田中絹代の表情の移り変わりだけでの表現、言葉はいらない
5.「Uボート」監督W・ペターゼン。駆逐艦に制圧され、息を潜めながらソナー音と爆雷、閉所恐怖症には耐えられない。
6.「フルメタルジャケット」監督S・キューブリック。フルメタルジャケット・軍用被甲弾、それは真摯だ。弾は相手を選ばない。MICKY MOUSE MICKY MOUSE MICKY MOUSE
7.「僕の村は戦場だった」監督タルコフスキー。1枚の写真、最後まで敵を睨みつけているイワンの顔があった。詩情、映像美。タルコフスキーだ。
8.「独立機関銃隊未だ射撃中」監督谷口千吉。ソ満国境、トーチカで迎え撃つ兵。佐藤允の農民出身兵、その遺書、たどたどしい平仮名で「とったんは、いま…」。生き残った兵が花に手を伸ばす…。うろ覚えだが、本来は日本兵の屍を越えてソ連軍が「自由のために」「ウラー」などと叫びながら軍靴が踏越えて行くはずだったのだが、さすがにそれはカットしたそうだ。そんなことを読んだ記憶がある。
9.「アタック」監督R・アルドリッチ。ジャッ・クパランスが「神よ!お願いです。1分間だけ生かしてください!」の絶叫。
10.「地獄の黙示録」原作コンラッド「闇の奥」、監督F・コッポラ。前半100点、後半0点。チョッパーの襲撃、鳴り響くワルキューレ、この音楽を使った映画は日映の記録フィルム「落下傘部隊メナド・クーパン降下」のシーンが初めてだと思う。連合軍コンボイとUボートの死闘を記録した「大西洋の戦い」にも使われていた。それにしてもコッポラは何を言いたかったんだろうね。・・・「恐怖だ、恐怖だ」。
プラス1.「かくも長き不在」監督アンリ・コルビ、脚本マルグリット・デユラス。パリで小さなカフェを営む中年の女、かってドイツ軍に連れ去られた夫にそっくりな浮浪者に出会う。彼は記憶喪失者だ。「何も…本当に何も…覚えていないの?」「ノン」。
「誰も…たったひとりだけでも…?」「ノン」。アリダ・ヴァリが哀しくも美しい。…ソフィア・ローレンの「ひまわり」も。
戦争映画にしても小説でも負けた側の眼から見みたものに名作が多い。1万メートル以上の高空から爆弾を落としても罪の意識はあまり感じられないだろう。誰もが戦場に行けば、その悲惨さや残酷さは実感できるだろうがそうもいかない。報道写真や映画で多くの人たちが見ることにより少しでも感じることができれば…。
「ヒロシマ」「原爆の子」「ひめゆりの塔」「沖縄健児隊(鉄血勤王隊)」「火垂の墓」もう一度見たいとは思うのだが辛くて見れない。「橋」ドイツの小さな町、少年たちが橋を守ろうと。「野火」レイテの山を彷徨する兵、猿の肉だ…。「太平洋の地獄」監督ジョン・ブアマン。三船敏郎とリー・マービンが太平洋の島で。
「眼下の敵」監督D・パウエル。爆雷の炸裂とはこんなに凄いものか!実写は違う。ヘッジホグは積んでいなかったのか?。
「独立愚連隊」監督岡本喜八。戦争西部劇、佐藤允の怪演。
ワースト:「パールハーバー」長い、退屈、見れるのはCGのみ。「プライベート・ライアン」星条旗パタパタそれだけ。「硫黄島からの手紙」あの時代あんなチンタラした兵隊いたのかしら、人間を描きたかったんだろうけど、俺でもぶん殴りたいね。これでイーストウッドのファンだったのだが半減した。まだ「硫黄島の星条旗」の方がマシ。原作はいいのにね。原作は彼らの生涯を追っていくんだ。
…これだったらJ・ウェインの「硫黄島の砂」の方が断然上!あの有名な星条旗を立てる写真、本物が登場している。英雄となったその日から人生が変わった…。菊島到の「硫黄島」とその映画、ノンフィクションならR.F.ニューカムの「硫黄島」も考えさせられる。
11/ 30th, 2009 | Author: Ken |
Kayoko and Dante
お久しぶりです。ソプラノで明るい声が響く。声楽家の多田佳世子さんだ。写真を撮ってほしいんですけど。OK! OK! ほんと20年ぶりだ。昔彼女の「魔笛」「カルメン」やリサイタルに行ったことがある。1991年イタリア・プッセートにおいてヴェルディ国際声楽コンタール第3位入賞。それ以後国際的に活躍している。今回ご主人のダンテ・マッツオーラ氏と帰って来たというわけだ。ダンテは国際的なオペラ指揮者でありピアニストでもある。友人のカメラマンのスタジオで撮影。明るく大らか、イタリア人になっちゃったね…。そう、表情はモデラート・カンタービレでね!
ダンテはなかなかの親日家で居酒屋なんかが大好きだそうだ。今回は時間がないので、また来たときに「ご飯食べに行こ!」と約束する。CDを頂いた。あくまでも甘く、せつなく、恋の哀愁と喜びと、力強い歌声。さすが!歌曲はとんと知らない私が、聞き惚れてしまった。
11/ 29th, 2009 | Author: Ken |
何でも十傑…….怪獣・怪物・モンスター。
1.「キングコング」1933年公開。以後、怪獣映画の基となる独創性に乾杯だ。おどろおどろしいスカル島、異様な壁、恐竜との戦い、見せ物興行「世界八番目の奇跡」、大都市の破壊、美女と野獣、哀れみを誘うその死…。リメイク版はオリジナルを越えられないの例え通り、どうってこと無かった。最新のリメイク版はあえて30年代に設定したが、退屈このうえなし!CGより「おどろおどろしさ」こそ活動写真だ。私が小学1年生のとき生まれて初めて見た洋画である。松明、銅鑼、ジャングルをかき分けコングが現れるときのあの怖かったこと。怪獣映画の金字塔。
2.「ゴジラ」1954年公開。背景に核兵器への批判がある。ラジオドラマにもなった?オキシジェン・デストロイヤーで退治。「ゴジラの逆襲」までは許されるが、それ以後は堕落の一途。アメリカ版の予告編は素晴らしかった(それで劇場に足を運んだ)が、ありゃトカゲだ。最悪だ。
3.「トリフィド」ジョン・ウィンダム原作。流星を見た人類が視力を失った…食肉植物トリフィドが徘徊する。数少ない見える人が…。映画は?×。
4.「影が行く」ジョン・W・キャンベルJr.。この悪趣味な怪物を見ろ!遊星からの物体Xとして2回映画になった。両方ともなかなか面白かった。
5.「エイリアン」リドリー・スコット監督。1979年公開。この不気味さ、H.R.ギーガーの才能に参った(早速ネクロノミコンの画集を買った)。変態をしていく奇怪さ、全部を見せないもどかしさ…。いつのまにやらプレデターとジョイントしてB級になってしまったが。あの宇宙船の名がノストローモ号、これはJ・コンラッドの小説から取ったのかしら。
6.「ひる」ロバート・シェクリイ原作。ある日妙な生物が…殺そうとしてエネルギーを加えるほど成長する。ああ、最後が怖い。
7.「フランケンシュタインの怪物」メアリー・シェリー原作。いつのまにか博士の名が怪物になってしまった。まあボリス・カーロフでしょう。
8「ドラキュラ」ブラム・ストーカー原作。もうおなじみすぎて…。ベラ・ルゴシ、クリストファー・リー、どっちがいい?
9.「ウィンク」小松左京。人間の情報受信の大半は目だ。エイリアンは目となって…。蛇口をひねると、血管を引きずった眼球がドロドロと…。
10.「覚・さとり」夜の深山で一人でたき火をしていると現れたりする。こちらの思っていること全てを見透かし、こちらが口に出すよりも早くそれらを喋る。心を読む山爺という妖怪。未来が見える男「夜は千の眼を持つ」というE.G.ロビンソンの映画があった。
水木しげるの妖怪に百目というのもいたね。12世紀ビンゲンのヒルデガルドのヴィジョン「光り輝くもの」にも体中眼の絵があった。
番外特別:「人間」昔N.Yの動物園に何も入っていない檻があった。中に鏡が張ってあって「最も危険な動物」との標識が掲げてあったそうな。
核爆弾、生物兵器、毒ガス、アウシュヴィッツ、ヒロシマ・ナガサキ、ドレスデン、ジュウケイ・ナンキン…。平然と行う神経はモンスターを越えている。
11/ 28th, 2009 | Author: Ken |
創造性はどこから来るのか。
●「アスペルガー症候群の天才たち」マイケル・フィッツジェラルド著/石坂好樹・花島綾子・太田多紀 訳/清和書店
天才と呼ばれる歴史的な人物を心理病跡学から論じ興味深く読ませる。哲学者ウィトゲンシュタイン、数学者でアリスのルイス・キャロル、数学者ラマヌジャン、詩人W.B.イェイツ …彼らはHFA/ASP高機能自閉症およびアスペルガー症候群だった。天才が創造性を高めるのに自閉症であることがどのような影響を与えているかを、事例を基にして、自閉症の対人関係の偏り、他人を慮る情緒の欠如、対人障害を持ちながら、常人ではなし得ない果てしない努力や極度の集中力と持続など。天才の「自閉的知性」を探求していく。
●「なぜ彼らは天才的能力を示すのか」サヴァン症候群の驚異。D.A.トレッツファート/高橋健次 訳/草思社
知能は劣っているのに驚異的な才能を発揮するサヴァン。電光石火計算、カレンダー計算、カメラ的視覚写実、立体把握、一度聞いたらすぐ演奏できるCD的能力、コンピュータ的記憶、素数で遊ぶ…。しかし彼らは新しい数学の定理は発見できないし、音楽にも新しい啓示はもたらさない。人間の創造力は脳のどこにあるのか? ジェリーみたいな1300ccほどの脳、タンパク質と脂質と水でできた脳。どこにその秘密があるのか? 天才アマデゥス・モーツアルト。彼はアレグリのミゼーレを一度聞いただけで全曲の総譜を書き、新しいシンフォニーを一瞬で作曲したといわれる。われわれ凡人に神は「アマデゥス」を与えてくれなかったんだ。せめてサリエリの10分の1ほど、いや楽器をさわれるほどの才能でも授かりたかったものだ。
11/ 27th, 2009 | Author: Ken |
風雅の技法 … 洗練。
「嵯峨野名月記」辻邦生。琳派の能書家・本阿弥光悦、絵師・俵屋宗達、開版者・角倉素庵が作り上げた「嵯峨本」。
美を求め、美に掛けた男たちを描く。華麗に語られ歌われる優美と典雅の世界…。ちょうど隣の神戸市立博物館で東洋美術展が開かれていた。早速行ってみると嵯峨本(私は見たことがない)はないが、光悦と宗達の「鹿下絵和歌巻」を見ることができた。優美な宗達の絵に美しい光悦の書。
現代風に言うとレイアウト、タイポグラフィー、押さえた色彩がデザインされているのだ。その空間処理の見事さ。洗練の極地とはこういうことか!と分からぬまま感心した次第だ。これが戦国の荒々しい時代を生きた男たちの作とは…。ゆえに理想の美を作ろうとしたのではないだろうか。
11/ 27th, 2009 | Author: Ken |
ロン・カーター
久しぶりにロン・カーターを聞いた。場所は銀座のバー・サンボア。山口武(g)ロン・カーター(b)ルイス・ナッシュ(dr)のトリオだ。ロン・カーターを初めてライブで聞いたのが、1964年のマイルス・デヴィス・クインテットだった。ダイナミックで研ぎすまされた演奏にモダンジャズの到達点を感じた。
マイルスも後に「最高のバンドだった。いま見てもゾッとするね。だが止めてよかった」と述べている。進化し続ける人だ。
「My Funny Valentine」「Four and More」「Mils in Berlin」「Mils in Tokyo」(Live Version)にたまらないスリルを感じたものだ。トニー・ウィリアムズの超高速ドラミングに、そしてロン・カーター。彼も70歳を越えたが相変わらず細身の長身、哲学者のような風貌でシャイな人だ。今夜は特別に彼のソロ「柳よ泣いておくれ」。数杯のハイボールで酔ったせいか一際胸に響いた。サインも頂いた。握手もした。写真も撮った。素敵な一夜だった。
11/ 24th, 2009 | Author: Ken |
何でも十傑……時代劇。
1.「切腹」小林正樹。滝口康彦原作「異聞浪人記」より。原作を読み返し、映画はもう何回見ただろうか。凄絶、緊張、丁々発止の
やり取り、映像美、ダイナミズム、陽の移り、以外な展開。こんな素晴らしい重量級映画があるのだ。所詮武士道とは上辺だけを
飾るもの…。山本常朝や新渡戸稲造ならどう批評するのだろうか?
2.「七人の侍」黒澤明。映画史上、世界映画歴史の三本指でしょう。戦乱につぐ戦乱のタイトル…から「また負け戦だったな」まで、
息もつけない面白さ。「追い打ちをかけ、村の辻で挟み撃ちじゃ、勝負はこの一撃で決まる!」…この映画、疎かにには見んぞ。
3.「用心棒」黒澤明。馬の目の宿、野良犬が手首をくわえて…これだけで不気味さと期待と。「荒野の用心棒」「ラストマンスタン
ディング」と真似したくなるのも分かる。もとはハメットの「血の収穫」だというが、どうして。仲代のタータンのマフラー、
そして拳銃。ゾクゾクしてくる。
4.「隠し砦の三悪人」黒澤明。三船敏郎が馬上で刀を振りかざし追跡するシーン、映画館で観客が声にならないウォーという声をあ
げた。
5.「斬る」三隅研次。太陽のショット、刀身を流れる水滴、白い胸に流れる一筋の血「情けを知れ!」、この様式美、梅枝の三弦の
構え…。
6.「椿三十郎」黒澤明。仲代の室戸半兵衛。この凄み。最後の決闘で噴水のように迸る血潮。リメイク版は15分以上は耐えられなか
った。止せばいいのに。恥を曝しただけだ。
7.「大菩薩峠」岡本喜八。外国では「カルマ」。机竜之助の音無しの構え。三船敏郎の島田虎之介の豪剣。この殺人鬼は…。業か。
8.「柳生一族の陰謀」深作 欣二。おのおの方これは夢でござりまするぞ。夢じゃ、夢じゃ、夢でござりまするぞ〜っ!成田 三樹夫
の烏丸少将が怪演。ほんとうに面白い映画におじゃりまする。
9.「旗本退屈男」市川右太衛門の大きな顔。「この眉間に冴ゆる三日月形は天下御免の向こう傷、直参旗本早乙女主水之介、人呼ん
で旗本退屈男。ふぱっ!諸刃流青眼崩し破邪の一刀、一指し舞うて仕る。ぷはっ!」ド派手な着物を次から次へと、楽し過ぎる。
10.「座頭市物語」三隅研次。押さえた演出の中に座頭市の居合いが一閃、天地茂の平手神酒と市の心の会話。…大利根無情だね。
しまった!「忍びの者」を入れるのを忘れておった。…百地三太夫と藤林長門守とは…。「剣鬼」居合い術の斑平、御庭番を斬る。
番外.「ラストサムライ」何で西南戦争に忍者が出るんじゃ!「ショーグン」……。「ベルリン忠臣蔵」きわもの。一見の価値あり。
「レッドサン」三船、ブロンソン、ドロンが競演。なかなかのものでした。