4/ 12th, 2010 | Author: Ken |
To bee, or not to bee, that is the question.
「タイトルの綴りが間違っているぞ、beeではなくbeだよ。文学の知識なしだね、ホームズ」。
「初歩だよ、ワトスン君、ぼくが引退して何をやっているか知っているだろう。実用養蜂便覧、付・女王蜂の分封に関する緒観察を読んでほしいものさ、だからBeeでいいんだよ」。
おもしろい男に会った。蓬髪巨体、さる大学の教授様なのだが英文学の研究と仰せられる。シェイクスピアかブロンテかと訪ねると、庶民の歴史なんだと…。思わず膝を乗り出しましたね。得てしてこの手の顔に童心をかいま見るのでルイス・キャロルかも知れん。何しろ笑顔がチシャ猫的である。じゃ、あの探偵は?と問うと破顔一笑、ウィスキーをグッと飲み干し、したり顔で宣う。最近さる会合で「なぜホームズはライヘンバッハの滝に落ちたのか…アルプスをめぐる想像力」と講演をしてきた。いるんだ時々、こういうオジさんが。ベーカーストリート・イレギュラーズがそのまま大人になった男だ。嬉しくなってきますね。
ぼくは隠れシャーロッキアンなのだが研究倶楽部にも入っていないし、ロンドンも上ッ面しか知らない。でもガス灯と霧にむせぶ19世紀の倫敦を想像するだけで楽しくなる。文学者でジャーナリストのW・コベットは倫敦を「グレイト・ウェン(オデキの親玉)」と言ったとか。その闇のなかでで世界初の諮問探偵が活躍するなんて…。何しろシャーロック・ホームズが快刀乱麻の推理力で解決する話は何回読んでも尽きせぬ魅力がある。聖典(カノン)を克明に読み解き新発見と新説を論じていく。架空の人物でありながら、これほど実在感のある人もいませんね。まあ、何しろ英国民謡の「埴生の宿」でも歌われているのだから。
〜 There’s no place like home 〜 だが、これが間違い。正しくは 〜 There’s no police like Holmes 〜 だ。